2026年の見通し:日本中小型株式 - 大型株主導の一極集中相場から、中小型成長株への再評価が高まる局面に
2025年の株式相場の振り返り
2025年は、上期にかけて前年から続く中小型成長株の巻き返しが継続しました。しかし、夏以降はグローバル市場を大きく揺るがした第二次トランプ政権による追加関税が、日本でも従前の発表より引き下げられた水準で合意したことに加えて、石破首相の辞任表明以降は新政権への経済政策期待が高まりました。さらに積極財政を掲げ、金融政策でも緩和的な姿勢を示す高市早苗政権の発足を受け、市場は大幅な上昇局面へと転じました。一方、中小型成長株は物色の圏外に置かれる展開となりました。
今年は、期待していた中小型成長株の飛躍は道半ばにとどまりました。しかし、来年は大型株主導での生成AI、半導体、防衛関連といったテーマへの一極集中から、サナエノミクスの政策実行や東証改革、企業変革等も背景に、日本株市場全体で投資のすそ野が広がることに期待しています。その中で、中小型成長株への再評価が高まる展開を想定しています。
2026年株式相場の見通し
高市政権の掲げるサナエノミクスは中小型株にとって追い風になると考えています。現在の最重要政策となる物価高対策は、2年連続で春闘において大幅な賃上げが実現したにもかかわらず、インフレによって目減りしてきた実質賃金の改善を促し、内需回復を後押しすることとなるでしょう。グローバル企業を多く含む大型株と比較して、中小型株は国内売上比率が高いため、内需回復の恩恵をより享受できると考えています。
また、産業政策強化と防衛力強化について、例えば防衛関連であれば、宇宙、サイバー、電磁波領域など、具体的かつ詳細な重点投資項目が打ち出されており、今後は重工関連の大企業だけでなく、日本に多数存在する、特定のニッチ分野において世界的な技術力を有し、高い成長を遂げる中小型企業への注目が一段と高まることが期待されます。
東証改革についても、これまではプライム・スタンダード市場に上場する企業の資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた取り組みが進展し、国内外の投資家の注目を集めてきましたが、次のステップとしてグロース市場の活性化に向けた取り組みが開始されています。今年に入り、東証が中心となって投資家と中小型企業の対話イベントなどが全国各地で開催されており、私も複数回参加する機会を得ました。投資家として話を重ねる中で、中小型企業においてもIR活動やガバナンスへの意識が高まっていることを実感しています。2030年にはグロース市場の上場維持基準の厳格化も見込まれており、日本株式投資において中長期的に最も重要なテーマの一つであるコーポレートガバナンス改革についても、今後は中小型株、特に成長株に波及することが期待されます。
2026年の投資の着目点
引き続き、内需関連の成長株に投資妙味があると考えています。一例として、カテゴリー内で独自の強みを持ち、SNSマーケティングやポイントアプリ等のデジタルツールの活用や、M&Aを通じて高成長を続けるリテール企業等に着目しています。注目する分野として、ニッチな領域での技術力や実績を有し、政府の防衛予算拡大を取り込み、実際に高い受注と利益成長を達成している防衛関連銘柄や、生成AIの規模拡大と技術革新を支える高成長なスペシャリスト企業等に加え、新規株式公開(IPO)において、世界を魅了するジャパン・ブランドを有する企業に注目しています。
2025年後半は、米国の関税政策への懸念が後退し、日本では新政権への期待が高まるなど、トップダウンの思惑を背景に、特定テーマへの一極集中による大幅な上昇相場となる中で、中小型成長株は失速する展開となりました。しかし、今後は政策の実行や東証改革の中小型株への波及等を確認しながら、ボトムアップによる投資のすそ野の広がりを想定しています。2026年は、個別銘柄選択の復権と中小型成長株への再評価に期待できると考えています。
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