欧州バンクローン市場、月次アップデート 2021年12月
2021年11月の欧州バンクローン市場は、相対的に高く安定したインカムがプラスに寄与し、月間トータル・リターンは+0.15%となりました1
Credit Suisse Western European Leveraged Loan Index(以下「CS WELLI」または「指数」)の2021年11月のトータル・リターンは+0.15%となり、内訳は価格変動が▲0.18%、金利収入が+0.33%となりました1。年初来では+4.20%となりました1。
今月は、欧州での新型コロナウイルスの感染者数の増加が注目されました。欧州の数カ国では、緩やかな外出規制が再導入され、日常の経済活動でも予防接種証明書(ワクチン・パスポート)が必要となりました。オーストリアでは、レストランや不要不急の店舗が休業となり、限られた理由のみでの移動が可能となる20日間の都市封鎖が導入されました。他の欧州諸国の首脳も、ワクチン接種の義務化に関心を示しました。
月末にかけては、新型コロナウイルスの変異株であるオミクロン株(以下、オミクロン株)の感染拡大が懸念されました。当初の分析では、オミクロン株の重症度は低いとされているものの、感染力が強いことが示されています。しかしながら、オミクロン株に関するデータはまだ少なく、現行のワクチンが有効であるかどうかも不明なため、金融市場はリスクを避ける展開となりました。さらに、ユーロ圏のインフレ率が前年同期比4.9%とユーロ導入以来の最高となり、欧州中央銀行(ECB)に超低金利政策の見直しを求める圧力となりました。ストックス欧州600指数は2.6%の下落となりました2 。
11 月の欧州バンクローン市場のパフォーマンスは底堅く推移しました。
新規発行額は、前年同期の2倍以上となる79億ユーロとなり、好調を維持しました。また、年初来の新規発行額は1,110億ユーロとなり、過去最高となりました。
新規発行の平均スプレッドはEuribor+407bps (フロアは+0%)となり、10月から約10bp低下したものの、最低水準となった2021年1-3月期との比較ではスプレッドは約35bp拡大しました。また、月末にかけてのオミクロン・ショックにより、新規発行のスプレッドは拡大しました。
今後の新規発行も引き続き好調が予想されています。一方で、バンクローンのアレンジャーは、年明けの市場がより有利になると予想しているため、12月の新規発行は限られたものになるでしょう。
CLO市場も同様に堅調となりました。11月の新規発行額は43億ユーロとなり、前年同月比、2倍以上の発行額となりました。年初来でのCLO新規発行額は354億ユーロとなり、過去最高となった2007年全体での発行額を10%上回りました。
11月のCLO(AAA格)のスプレッドはわずかに拡大したものの、EURIBOR+100bpを下回る水準で取引されています。オミクロン・ショックの影響で、CLOの新規発行ペースも減少すると考えられます。
月末のCS WELLI の額面価格合計(市場規模)は約3,710億ユーロとなり、年初来で16%増加しました1 。
リターン
11月のCS WELLIのセクター別リターンは、住宅が+0.32%と最も高いリターンとなり林産品/容器+0.30%、サービスが+0.29%となりました1 。 一方、最も低いリターンとなったのは、ゲーム/レジャーの▲0.43%で、主としてオミクロン・ショックで旅行(レジャーに含まれる)が困難となったことが同セクターにマイナスの影響を与えました1 。
格付け別では、11月は「B」格が+0.21%と最も高く、「BB」格が+0.06%、「CCC」格が▲0.56%となりました1 。
11月末におけるCS WELLI構成銘柄の平均価格は、前月末比0.15ユーロ下落して98.61ユーロでした1。CS WELLIの3年ディスカウント・マージンは4.13%となり、前月末比6bp拡大しました1。11月のクレディ・スイス欧州ハイ・イールド債券(Credit Suisse Western European High Yield)指数は▲0.43%のリターンとなり、スプレッド・トゥ・ワーストは4.03%でした3。
ファンダメンタルズ
11月のユーロ圏のコア・インフレ率(速報値)は前年同期比0.58%上昇し2.6%(年率換算)となり、全体のインフレ率も0.83%上昇して前年同期比4.9% (年率換算)となりました。両指標とも予想値を上回りました。サービス業のインフレ率は2.7%、非エネルギー資本財のインフレ率は2.4%に上昇しました。コア・インフレ以外では、エネルギー関連のインフレ率は約4ポイント上昇し、27%超となりました。
ドイツ、オーストリア、オランダ等、ユーロ圏の数カ国で新型コロナウイルスの感染者数や入院者数が急増しています。オミクロン株の感染拡大も懸念されています。ただし、オミクロン株の感染力が不明であるため、現段階では完全な都市封鎖ではなく、限定的な地域で経済活動の制限が行われる可能性があります。
11月のユーロ圏総合PMI(確定値) は55.4となり、速報値から0.5ポイント下方修正されました。今回の確定値では、新型コロナウイルスの感染拡大懸念がマイナスの影響を与え、サービス業における下方修正幅がマイナス0.6ポイントと比較的大きくなっています。一方、10月の総合PMIと比較すると、サービス業は前年同期比1.4ポイント上昇し、総合指数は1.1ポイント上昇しました。これは、ユーロ圏における景気回復の騰勢が維持されていること、供給サイドの納期が改善していることを示しています。11月のユーロ圏総合PMI(確定値)には11月25日までのデータが反映されており、オミクロン・ショックによる影響は含まれていません。12月のユーロ圏総合PMIでは、ドイツでのワクチン未接種者を対象とする規制や、その他の国々での規制の影響を反映した数値が発表される予定です。
ECBは、現在のインフレ圧力を一過性のものと見なしていることを再度表明するとともに、12月の定例理事会で、さらなる量的金融緩和に踏み込むことはないと思われます。
11月末現在、S&P欧州レバレッジド・ローン指数における過去12か月のデフォルト率(額面ベース)は0.75%でした4。過去平均は年3.21%です4。
脚注
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1
Credit Suisse Western European Leveraged Loan Index (CS WELLI)、ユーロ建てヘッジ付き、2021年11月30日現在。過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。指数に直接投資することはできません。
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2
ストックス欧州600指数およびS&P500指数は、2021年11月30日現在。
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3
Credit Suisse Western European High Yield Indexはユーロ建て、2021年11月30日現在。
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4
S&P European Leveraged Loan Index。過去の平均デフォルト率は、2007年6月1日から2021年11月30日までを対象に集計しています。
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