欧州バンクローン市場、月次アップデート 2022年12月
2022年11月の欧州バンクローン市場は、相対的に高く安定したインカムがプラスに寄与したとともに、価格変動がプラスとなったことから、月間トータル・リターンは+1.92%となりました1
Credit Suisse Western European Leveraged Loan Index(以下「CS WELLI」または「指数」)の2022年11月のトータル・リターンは+1.92%となり、内訳は価格変動が+1.41%、金利収入が+0.51%でした。年初来のリターンは-3.61%となりました1。
11 月は、(1)欧米のインフレ率にピークアウトの兆しが見られたこと、(2)2022年7ー9月期の企業業績が予想を上回ったこと、(3)中央銀行による金融引き締めの緩和期待が高まったこと、などを背景にリスク資産価格は総じて堅調に推移しました。
欧州では、11月末現在、ストックス欧州600指数に組み入れられている上場企業のうち、59%の企業の業績がアナリストのコンセンサス予想を上回りました。エネルギーセクターを除いて同指数の2022年7ー9月期の増益率は+13.4%と堅調な数字が見込まれます5。更に、11月のユーロ圏のインフレ率は10.0%となって10月の10.6%からやや低下し、米国の10月の米消費者物価指数(CPI)も9月の 8.2%から 7.7%に低下しました。
欧州バンクローン発行体の業績も市場予想を上回るものととなり、11月のCS WELLI平均価格は1.38ユーロ上昇して91.58ユーロとなりました1。特に食品セクターは、投入価格が今夏の高値から大きく下落し、また、価格転嫁によって生産者の収益性が改善したことなどを受け、11月に+3.78%と大幅な上昇となりました1。
11月の欧州バンクローン市場における新規発行は小規模なものとなりました。ここ半年間の新規発行額の平均は1カ月あたり18億ユーロとなり、過去の平均発行額の水準から約7〜8割減少しました。11月も同様で、新規発行額は12億ユーロと、2021年11月に記録した80億ユーロを大幅に下回る水準となりました。なお、新規発行は買収や借り換えに関連する小規模なものに限定されています。
CLOの新規発行は引き続き活発で、11月は8件で30億ユーロ(2021年11月との比較では約5割減)の新規CLOの発行となりました。発行市場での供給が少なく、CLOからの需要は高格付のローン価格を下支えしました。新規発行CLO(AAA格)のスプレッドはEURIBOR+210〜220bp程度の高水準を維持していますが、バンクローン価格の上昇には追随できていません。結果的には、CLOマネジャーは今後のリファイナンスを期待しながら新規発行に意欲的でしたが、CLO裁定取引が成立するのは依然として困難な状況です。
11月末のCS WELLI の額面価格合計(市場規模)は約4,110億ユーロとなり、年初来で6.2%増加しました1。
リターン
11月のCS WELLIのセクター別リターンでは、食品・製薬が+3.78%と最も高いパフォ-マンスとなり、続いて化学の+3.15%、林産品/パッケージングの+2.73%となりました。11月にマイナスリターンとなったセクターはありませんでした1。
格付け別では、11月は「B」格が+2.33%と最も高く、「BB」格が+1.64%、「CCC」格が最も低い+1.45%となりました1。
11月末におけるCS WELLI構成銘柄の平均価格は前月末比1.38ユーロ上昇し、91.58ユーロとなりました1。CS WELLIの3年ディスカウント・マージンは6.43%で、前月末比0.60%縮小しました1。
11月のクレディ・スイス欧州ハイ・イールド債券(Credit Suisse Western European High Yield)指数は+3.33%のリターン(年初来では-11.35%)となり、スプレッド・トゥ・ワーストは5.53%となりました3。
ファンダメンタルズ
ユーロ圏の10月の失業率は6.5%となって9月の6.6%から0.1%低下し、歴史的な低水準となりました。経済成長が鈍化しているにもかかわらず、労働市場が堅調であることが示されました。2022年上半期のユーロ圏GDP成長率(平均値)はオミクロン後のサービス業の再開によって2.9%となりましたが、2022年7−9月期は経済再開効果の低下やエネルギー問題によって、0.8%の増加にとどまりました。また、10−12月期も弱含むとなると見られており、2023年前半の失業率は7.0%まで上昇する可能性があります。
11月のユーロ圏の消費者物価指数(速報値)は10.0%と予想値の10.4%を下回り、過去最高となった10月の10.6%から低下しました。インフレ率は1年以上ぶりに前月比で鈍化したことになります。この結果、12月中旬に開催される欧州中央銀行(ECB)理事会では、金融引き締め政策の緩和に向けて一定の支持が見られると思われますが、ユーロ圏のインフレ率は2023年末まで高水準で推移してECBの目標値である2%を大幅に上回ると予想されています。コアCPIは過去最高の5.0%で安定的に推移しました。
ECBは今年12月および来年2月に0.5%、3月に0.25%の利上げを行い、最終的な政策金利を2.75%程度まで引き上げると予想されています。インフレ圧力がさらに高まれば、同行はさらに引き上げる可能性があります。
11月の独IFO経済研究所の調査結果は予想を上回りました。業況指数は84.3(予想値は83.5)、現況指数は94.1(同92.5)、期待指数は75.6(同75.0)となりました。欧州委員会が発表したユーロ圏消費者信頼感指数(速報値)も-23.9(予想値は-26.0)と、5カ月ぶりの高水準となりました。
ユーロ圏総合購買担当者景気指数(PMI、10月改定値) は47.3となり、速報値からわずかに上昇しました。一方、製造業PMIは46.4、サービス部門PMIは48.6となり、域内の成長モメンタムが依然としてマイナスであることを示しています。
11月末現在、モーニングスター欧州レバレッジドローン指数における過去12カ月のデフォルト率(額面ベース)は0.43%でした4。過去平均は年3.03%となりました4。
脚注
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1
Credit Suisse Western European Leveraged Loan Index (CS WELLI)、ユーロ建てヘッジ付き、2022年11月30日現在。過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。指数に直接投資することはできません。
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2
ストックス欧州600指数およびS&P500指数は、2022年11月30日現在。
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3
Credit Suisse Western European High Yield Indexはユーロ建て、2022年11月30日現在。
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4
Morningstar European Leveraged Loan Index。過去の平均デフォルト率は、2007年6月1日から2022年11月30日までを対象に集計しています。
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5
リフィニティブ社「ストックス欧州600社 業績予想」(2022年11月29日時点)を参照。
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