欧州バンクローン市場、月次アップデート 2022年3月
2022年2月の欧州バンクローン市場は、相対的に高く安定したインカムがプラスに寄与しましたが、月間トータル・リターンは▲0.90%となりました1
Credit Suisse Western European Leveraged Loan Index(以下「CS WELLI」または「指数」)の2022年2月のトータル・リターンは▲0.90%となり、内訳は価格変動が▲1.20%、金利収入が+0.29%となりました1。
2月末にかけ、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が開始されたことにより、当月の金融市場は全体的に軟調な展開となりました。2月のCS WELLIは1.26ユーロ下落して97.43ユーロとなりましたが、指数を構成するバンクローンの発行体で直接ロシアで収益を上げている企業は限定的です。
欧州連合(EU)や米国などは、ウクライナに侵攻したロシアに対し、貿易取引を厳しく制限する経済制裁に踏み切りました。一方、ロシアは世界有数のエネルギー生産国であることから、原油価格(WTI)は1バレル(約159リットル)あたり約110ドルまで上昇(年初来で約45%の上昇)しました。加えて、商品価格の全般的な上昇も予想され、世界の経済成長率が低下することも懸念されています。欧州中央銀行(ECB)は、ウクライナ紛争により、ユーロ圏の経済成長率が2022年度に0.3%~0.4%減少する可能性があると予想しています。
2月のCS WELLIのリターンは▲0.90% 1 となり、クレディ・スイス欧州ハイ・イールド債券(Credit Suisse Western European High Yield)指数(▲3.0%)、S&P500指数(▲3.0%)、ストックス欧州600指数(▲3.4%)2、3 を上回りました。セクターのリターンについては、次ページをご参照ください。
かかる状況下、2月の欧州バンクローン市場での新規発行額は大幅に減少し、1月の112億ユーロを60%下回る43億ユーロとなりました。2月下旬にかけウクライナ紛争が激化したことに伴ってバンクローンのスプレッドが拡大したため、月初からの3週間にローン発行が集中しました。いくつかのローン発行が延期され、足元のバンクローン市場は様子見となっています。今後数週間は、新規発行は低調と思われます。
2月の新規CLO発行は46億ユーロと比較的堅調となり、前年同月比約21%増加しました(発行が月初に集中したのはバンクローン市場と同様)。CLO(AAA格)のスプレッドは、ウクライナ紛争以前はEURIBOR+95bp前後の水準でしたが、足元ではEURIBOR+105bps〜110bps程度に拡大し、資金調達コストが上昇しています。
CLOのスプレッドは拡大していますが、新たなCLOのウェアハウスには魅力的なアービトラージ機会が見られ、旺盛な需要がバンクローン市場全体の安定に寄与すると思われます。
月末のCS WELLI の額面価格合計(市場規模)は約3,920億ユーロとなり、前年同月比21%増加しました1 。
リターン
2月のCS WELLIのセクター別リターンは、急騰する原油価格を背景に、エネルギーが+1.18% 1 と最も高いリターンとなり、また、ただ一つのプラスリターンのセクターとなりました。最も低いリターンとなったのは、耐久消費財の▲1.87%、林産品/容器の▲1.81%、食品/タバコの▲1.43%でした 1 。
格付け別では、2月は「CCC」格が+0.10%と最も高く、「BB」格が▲0.80%、「B」格が▲1.04%となりました 1 。
2月末におけるCS WELLI構成銘柄の平均価格は、前月末比1.26ユーロ下落し、97.43ユーロでした 1 。CS WELLIの3年ディスカウント・マージンは4.59%で、前月末比0.46%下落しました 1 。2月のクレディ・スイス欧州ハイ・イールド債券(Credit Suisse Western European High Yield)指数は▲2.92%のリターンとなり、スプレッド・トゥ・ワーストは4.84%でした 3 。
ファンダメンタルズ
EU(及び英国)はロシアの企業、個人、各業種に対する経済制裁を導入しました。ロシアの金融機関は国際銀行間通信協会(SWIFT)から排除されたものの、ロシアとEU間でエネルギー代金の決済を行う上では、致命的な問題にはならないと見られています。しかし、経済制裁に対する報復措置として、ロシアは欧州への輸出を減らすよう企業に圧力をかける可能性があります。ロシアから欧州全域へのエネルギー供給が全面的に停止されると、短期的には欧州の経済成長率が鈍化する可能性があります。
2月のユーロ圏総合購買担当者景気指数(PMI)の確定値は、55.5とやや下方修正されました。イタリアとスペインの総合PMIは、サービス業がオミクロン株による落ち込みから急速に回復していることを示しています。この回復ペースが額面通りであれば、2022年4ー6月期には、さらなる景気回復が示されると見られています。その一方で、ウクライナ紛争によりエネルギー供給が寸断されると、PMIは下落する可能性があると思われます(今回発表のPMIの参照期間は、2月24日のロシアのウクライナ侵攻の開始以前)。
ユーロ圏のインフレは上昇を続けています。2月のインフレ率は5.8%に達しましたが、ウクライナ紛争は物価をさらに押し上げると思われ、ECBは金融政策を調整するタイミングやインフレ抑制と経済成長のバランスのとり方などについて、難しい舵取りを迫られると思われます。
1月のユーロ圏の失業率は12月の7.0%から6.8%に低下し、市場のコンセンサス予想を下回る史上最低となりました。
2月末現在、S&P欧州レバレッジド・ローン指数における過去12カ月のデフォルト率(額面ベース)は0.82%でした 4 。過去平均は年3.16%です 4 。
脚注
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1
Credit Suisse Western European Leveraged Loan Index (CS WELLI)、ユーロ建てヘッジ付き、2022年2月28日現在。過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。指数に直接投資することはできません。
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2
ストックス欧州600指数およびS&P500指数は、2022年2月28日現在。
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3
Credit Suisse Western European High Yield Indexはユーロ建て、2022年2月28日現在。
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4
S&P European Leveraged Loan Index。過去の平均デフォルト率は、2007年6月1日から2022年2月28日までを対象に集計しています。
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