欧州バンクローン市場、月次アップデート 2023年10月
2023年9月の欧州バンクローン市場は、相対的に高く安定したインカムがプラスに寄与するとともに、価格変動もプラスリターンとなり、月間トータル・リターンは+0.98%となりました
Credit Suisse Western European Leveraged Loan Index(以下「CS WELLI」または「指数」)の2023年9月のトータル・リターンは+0.98%となり、内訳は価格変動が+0.31%、金利収入が+0.67%でした1 。
9月のバンクローン市場は引き続き堅調に推移しました。9月末のCS WELLIの年初来トータルリターンは+10.4%となり、バンクローンの平均価格は年初の91.56から96.82ユーロに上昇しました。
バンクローン市場は、欧州経済がいわゆるゴルディロックス環境となっているなかで、二桁のリターンを上げることはそれほど困難なことではありません。欧州経済の成長は低水準ながらプラス(ユーロ圏の2023年および2024年のGDP成長率(予想値)は、それぞれ+0.8%/+1.3%)であり、それによって低いデフォルト率(直近12カ月で1.27%と、過去の平均値である約2.9%を大幅に下回る)と高い金利水準(欧州中央銀行(ECB)の政策金利(中銀預金金利)は9月に史上最高の4.0%まで引き上げ)がもたらされ、それによって足元のCS WELLIのクーポンレートは8.22%と非常に魅力的なものとなっているのです。
9月のバンクローン新規発行額は、休暇シーズンで低調となった8月から大きく増加して53億ユーロとなり、2022年の年初来で最高となりました。
9月に新規発行が急拡大した理由の一つは、バンクローン市場のスプレッドの縮小です。9月に新規発行された16件のバンクローンの平均利回りは8.94%となり(平均スプレッドはEURIBOR+429bp 、平均のオリジナル・イシュー・ディスカウント(OID)は98.51)、平均利回りは、発行体に有利とみなされていた7月23日時点の利回り(9.49%)と比べて55bp低下しています。
また、9月のCLO市場の新規発行額も32億ユーロと活発となり、6月から8月にかけて16~18億ユーロとなった月次発行額の約2倍に達しました。バンクローンのスプレッドがタイト化して、新規CLOノート(AAA格)のスプレッドはEURIBOR+170bpの水準に留まっているため、CLOマネジャーによる裁定取引が難しくなっていますが、取り組みは可能な水準です。
リターン:2023年9月
9月のCS WELLIのセクター別リターンでは、食品・製薬が+5.70%と最も高いパフォ-マンスとなり、続いて不動産の+1.54%、耐久消費財の+1.39%となりました。マイナスリターンとなったセクターはありませんでした1 。
9月のCS WELLIの格付別リターンでは、 「B」 格が+1.16%と最も高く、「BB」格が+0.58%、 「CCC」格が最も低い+0.51%となりました1。
9月末におけるCS WELLI構成銘柄の平均価格は前月末比約0.92ユーロ上昇し、96.82ユーロとなりました1。CS WELLIの3年ディスカウント・マージンは5.00%となり、前月末比0.10%縮小しました1。
9月のクレディ・スイス欧州ハイ・イールド債券(Credit Suisse Western European High Yield)指数は+0.07%のリターンとなり、スプレッド・トゥ・ワーストは4.58%、イールド・トゥ・ワーストは8.01%となりました2。
ファンダメンタルズ
9月のユーロ圏消費者物価指数(速報値)は前年同月比4.3%の上昇と、過去2年間で最低となりました。これは、2021年10月以来で最も遅い価格上昇ペースとなり、8月の5.2%から0.9%低下しました。ECBなどが注目するコアインフレ率(食品・エネルギー・アルコール・たばこを除く)は、8月の5.3%から4.5%に低下し、2020年8月以来で最大の低下となりました
9月にECBは政策金利(中銀預金金利)を過去最高となる4.00%まで引き上げました。直近のECBのコメントからは、景気の減速、物価上昇圧力の低下、ベース効果等の影響により、インフレ率は2025年に同行目標の2%に低下するとの期待が見て取れます。また、市場では、利上げはすでにピークに達し、最初の利下げが2024年中に行われる可能性が高いことを織り込んでいます。
欧州連合(EU)による9月のユーロ圏消費者信頼感指数(速報値)は1.8ポイント低下し、-17.8となりました。同指数の低下は、本調査の回答者が家計や自国の経済状況についてより悲観的になっていることを示唆しています。
8月のユーロ圏失業率は6.4%と7月の6.5%から低下し、過去最低を記録しました。ユーロ圏ではドイツが最低(3.1%)を維持している一方で、ギリシャ(12.3%)、スペイン(12.8%)、イタリア(8.1%)、フランス(7.2%)の失業率は依然として高水準となっています。
欧州委員会による2023年及び2024年のユーロ圏GDP(予想値)は、5月の予想値から0.3%下方修正され、それぞれ+0.8%(2023年)と+1.3%(2024年)となりました。下方修正となった主な背景は、消費者物価上昇、銀行融資の減速、(低下しつつあるものの)まだ高いエネルギー価格などによって需要が低迷し、2023年前半に経済活動が抑制されたことです。
9月末現在、モーニングスター欧州レバレッジドローン指数における過去12カ月のデフォルト率(額面ベース)は1.27%でした3。過去平均は年2.91%となりました3 。
脚注
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1
Credit Suisse Western European Leveraged Loan Index (CS WELLI)、ユーロ建てヘッジ付き、2023年9月30日現在。過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。指数に直接投資することはできません。
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2
Credit Suisse Western European High Yield Indexはユーロ建て、2023年9月30日現在。
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3
Morningstar European Leveraged Loan Index。過去の平均デフォルト率は、2007年6月1日から2023年9月30日までを対象に集計しています。
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