欧州バンクローン市場、月次アップデート 2024年4月
2024年3月の欧州バンクローン市場は、相対的に高く安定したインカムがプラスに寄与し、月間トータル・リターンは+0.19%となりました
Credit Suisse Western European Leveraged Loan Index(以下「CS WELLI」または「指数」)の2024年3月のトータル・リターンは+0.19%となり、内訳は価格変動が-0.46%、金利収入が+0.65%でした1 。
3月の世界株式市場は、多くの市場で上昇しました。ストックス欧州600指数(+7.6%)、米S&P500指数(+10.6%)、日経平均株価(+22%)など、複数の主要株価指数が過去最高値を更新しました。特に、10%以上上昇した米S&P500指数は、10年以上ぶりに四半期連続で2桁の上昇を記録しました。
3月の株式市場の良好なパフォーマンスは、世界の経済指標が予想以上に堅調で、景気のソフトランディング期待が広がったためです。特に米国の経済成長は底堅く、2023年10-12月期のGDP成長率は年率+3.4%となりました。一方、同期間のユーロ圏のGDP成長率(予想)は-0.1%となりましたが、安定的に推移しました。また、ユーロ圏購買担当者景気指数(PMI)は一貫して上昇基調にあり、3月の総合PMI(速報値)は49.9と、9カ月ぶりの水準となりました。これらの経済指標は、2024年後半にかけて経済が底堅く推移することを示唆しています。
株式市場のパフォーマンスが良好だった一方で、債券市場は粘着性のインフレと強い景気を背景に、下落基調で推移しました。多くの投資家は、利下げ回数の減少や利下げ開始の後ずれを予想し始めています。また、2024年1-3月期に北海ブレント原油価格は13.6%上昇して1バレルあたり87.48ドルとなりました。投資家のインフレ予想にかなり変化が生じたことで、年初の予想と比較すると利下げ回数の減少や利下げ開始の後ずれといった見通しが広がりました。
復活祭(イースター)休暇により、月末にかけて新規発行が停止したことで、3月の欧州バンクローン市場の新規発行額は、2月の104億ユーロから、49億ユーロへと大きく減少しました。しかしながら、2024年1-3月期の新規発行累計額は230億ユーロと堅調に推移しており、2021年4-6月期以来で最も活発な四半期となりました。市場環境を踏まえてタイムリーに実施されるリファイナンス案件が新規発行額の半分以上となりました。
3月末時点での指数構成銘柄の平均価格は96.76ユーロとなり、2月末から約0.38ユーロ下落しました。平均価格が下落した背景は、フランスの大手通信会社アルティスが、資産売却のみならず、パーを下回る価格での債務交換や買い戻しなどによって、債務レバレッジの数値を4倍まで大きく削減する新計画を発表したことで、TMTセクターが値下がりしたことが挙げられます。
3月にローン担保証券(CLO)の価格が急騰したため、多くの銀行は通年のCLO新規発行額見通しを年初の約250億ユーロから約300億ユーロに上方修正しました。今年の発行額は既に109億ユーロ(前年同期は67億ユーロ)に達しており、2019年の298億ユーロに近いペースで発行されています。足元でCLOノート(AAA格)はEURIBOR+147bp〜150bp前後で発行されており、昨年末の170bp前後のスプレッドから縮小しました。しかしながら、ほとんどの市場参加者は、スプレッドは縮小しているものの、その絶対水準に加えて、5年平均スプレッドや欧州投資適格債との比較などから、まだ十分に魅力があると見ているようです。
リターン:2024年3月
3月のCS WELLIのセクター別リターンでは、食品・製薬が+1.21%と最も高いパフォ-マンスとなり、続いて金融の+0.85%、ゲーム/レジャーの+0.83%となりました。マイナスリターンとなったセクターは2セクターのみとなり、メディア・通信が-1.94%、不動産が-0.22%となりました1 。
3月のCS WELLIの格付別リターンでは、 「CCC」 格が+0.44%と最も高く、 「BB」 格が+0.39%、「B」格が最も低い+0.04%となりました1。
3月末におけるCS WELLI構成銘柄の平均価格は、前月末比で約0.38ユーロ下落し、96.76ユーロとなりました1。CS WELLIの3年ディスカウント・マージンは4.95%となり、前月末比で0.12%拡大しました1。
3月のクレディ・スイス欧州ハイ・イールド債券(Credit Suisse Western European High Yield)指数は+0.23%のリターンとなり、スプレッド・トゥ・ワーストは3.99%、イールド・トゥ・ワーストは7.16%となりました3。
ファンダメンタルズ
欧州の経済指標は、3月の景況感が緩やかに改善したことを示唆しています。欧州委員会ユーロ圏景況感指数は95.4から96.3に上昇し、予想値の96.2をわずかに上回りました。また、2024年1-3月期のユーロ圏GDP成長率は、2023年10-12月期の+0%から上昇して+0.2%程度と予想されています。
3月のユーロ圏総合消費者物価指数(速報値)は前年同期比2.4%となって前月の2.6%から低下し、また、予想値の2.5%を下回りました。欧州中央銀行(ECB)の目標である2%に近づいたことで、今後利下げに転じる可能性が高まりました。
総合インフレ率は低下したものの、ECBの利下げの開始は、サービス価格の高止まりによる賃金上昇の鈍化を待つため、6月まで後ずれすると思われます。コア・インフレ率(除く、変動の大きい食品とエネルギー)は+2.9%とまだ若干高めではあるものの、2月の+3.1%から0.2%低下し、予想を下回りました。
3月のユーロ圏総合PMIは0.7ポイント上昇して49.9となり、景気判断の節目となる50に近づきました。これは主にサービス業が好調であったことや、製造業の生産の数値が若干上昇したことによります。しかしながら、製造業全体では引き続き悪化し、紅海紛争の影響によるサプライチェーンの混乱で納期が遅延したこともあり、製造業PMIは0.8ポイント低下して45.7となりました。
3月末現在、モーニングスター欧州レバレッジドローン指数における過去12カ月のデフォルト率(額面ベース)は1.65%でした4。過去平均は年率2.86%となりました4 。
脚注
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1.
Credit Suisse Western European Leveraged Loan Index (CS WELLI)、ユーロ建てヘッジ付き、2024年3月31日現在。過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。指数に直接投資することはできません。
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2.
ブルームバーグより、2024年3月31日現在。
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3.
Credit Suisse Western European High Yield Indexはユーロ建て、2024年3月31日現在。
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4.
Morningstar European Leveraged Loan Index。過去の平均デフォルト率は、2007年6月1日から2024年3月31日までを対象に集計しています。
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