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欧州バンクローン市場、月次アップデート 2024年2月

欧州バンクローン市場、月次アップデート 2024年2月
2024年1月の欧州バンクローン市場は、相対的に高く安定したインカムがプラスに寄与したとともに、価格変動もプラススリターンとなり、月間トータル・リターンは+1.32%となりました

Credit Suisse Western European Leveraged Loan Index(以下「CS WELLI」または「指数」)の2024年1月のトータル・リターンは+1.32%となり、内訳は価格変動が+0.56%、金利収入が+0.77%でした1

1月の欧州バンクローン市場は好調なスタートとなり、ローンの平均価格は2023年末の96.62ユーロから97.23ユーロに上昇しました。CLOからのバンクローン需要が旺盛だったことや、マクロ経済動向が押し並べて堅調であったことなどが主な要因となりました。

2023年通年のユーロ圏GDP成長率は0.5%となり、また2024年通年では1%前後の見通しとなっています。1月のユーロ圏のインフレ率は2.8%に低下し(コアインフレ率は3.3%)、欧州中央銀行(ECB)が目標とする2%をやや上回る程度まで落ち着いてきています。そのため、ほとんどの市場参加者は、早ければ本年の3月または4月に(今夏までにはより確実に)利下げが実施されると予想していますが、利下げは今後の経済成長とリスク資産価格にプラスの影響を与えると思われます。

CS WELLI:2023年-2024年の平均価格推移

流通市場におけるローン価格が上昇したため、より縮小したスプレッド水準でのリファイナンスやリプライシングが若干見られました。そのため、堅調に推移した一部のB格ローンのディスカウント・マージンは、オリジナル・イシュー・ディスカウント(OID)も含めて、EURIBOR+475-500bpからEURIBOR+400-450まで縮小しました。当月の新規発行額は約60億ユーロとなり、その大半はリプライシングに関連したものでした。一方、新規発行の供給は低調なM&Aの活動によって抑制されており、M&Aは少なくとも2024年4-6月期まで低水準で推移すると思われます。こういった良好な需給環境がローン価格を下支してローン価格の上昇とスプレッドのタイト化につながり、発行体は低水準のディスカウント・マージンでのリファイナンスができるようになっています。

CLOノートのスプレッド水準が低下して裁定取引が下支えされ、1月のCLO市場は活況となりました。1月の新規発行額は、前年同月比約40%増加して14億ユーロとなりました。現在いくつかのCLOの新規発行が予定されており、今後数週間はCLOからの底堅いローン需要が期待されます。

足元ではCLOノート(AAA格)がEURIBOR+150bp付近で取引されていますが、この水準は2022年6月以来、欧州で最もタイトなスプレッドの水準であり、2023年末と比べると約20bp縮小しています。こういった状況を踏まえて、2022年や2023年にCLOを発行したマネジャーは、より低いスプレッドでCLOのリファイナンスやリプライシングを行い始めました。

経済や市場環境が全般的に良好であることから、市場では2024年のバンクローン市場のデフォルト率の予想値を従前の4%から3%前後まで1%程度下方に修正し始めましたが、スプレッドの縮小で発行体が負債を借り換えやすくなるとの見通しが反映されています。

 

リターン:2024年1月

1月のCS WELLIのセクター別リターンでは、食品・製薬が+2.46%と最も高いパフォ-マンスとなり、続いて不動産の+2.17%、小売の+1.89%となりました。今月は、耐久消費財のみ-1.44%のマイナスリターンとなりました1

1月のCS WELLIの格付別リターンでは、 「CCC」 格が+5.57%と最も高く、 「B」格が+1.59%、 「BB」格が最も低い+0.40%となりました1

1月末におけるCS WELLI構成銘柄の平均価格は、前月末比で約0.61ユーロ上昇し、97.23ユーロとなりました1。CS WELLIの3年ディスカウント・マージンは4.80%となり、前月末比で0.24%縮小しました1

1月のクレディ・スイス欧州ハイ・イールド債券(Credit Suisse Western European High Yield)指数は+0.59%のリターンとなり、スプレッド・トゥ・ワーストは4.25%、イールド・トゥ・ワーストは7.02%となりました2

 

ファンダメンタルズ

欧州中央銀行(ECB)は、1月の定例理事会で中銀預金金利を4%で据え置きました。市場予想通りの結果となりましたが、政策理事会の発表は市場が予想したよりもハト派的な表現となりました。4月の利下げについて質問されたラガルド総裁は、「政策理事会がインフレ見通しに十分な確信を持つためには、ディスインフレのプロセスが続く必要がある」と述べ4、早期利下げ(3月または4月)の可能性を残しました。インフレ率に関しては、今回の発表では「域内での物価圧力は依然として高いものの、鈍化し始めている」と記載され、12月の定例理事会での表現から若干変更されました。また、ラガルド総裁は、「12月のインフレ率は予想よりも低下しており、ディスインフレが進んでいる」と述べました 4

ユーロ圏の2023年10-12月期の実質GDP成長率(速報値)は、前期比横ばい(前期比0%増、前年同期比+0.1%)となり、2023年7-9月期の前期比-0.1%(前年同期比0%)からわずかに上昇しました。そのため、市場予想通りにユーロ圏はテクニカル・リセッションを回避しました。 2023年10-12月期のGDP成長率がゼロであったことは、2023年通年のGDP成長率が+0.5%であったものの、今後数四半期の経済成長は依然として厳しいことを示唆しています。堅調な労働市場や実質賃金の伸びによる個人消費の下支えがGDP成長率にプラス寄与する面はありますが、一方で紅海での緊張が長期化した場合は、混乱で生産が停滞して経済成長にマイナスの影響を与える可能性があります。

1月のユーロ圏総合購買担当者景気指数(PMI、速報値)は、予想値(48.0)とほぼ一致する47.9となって12月より0.3上昇しました。今月の総合PMIの上昇(および過去数カ月間におけるより広範な上昇)は、46.6となった製造業PMIの数値の改善によるものです。興味深いことに、ドイツとフランスの総合PMIは低下しましたが、両国以外の総合PMIが景況感の分かれ目となる50を全て上回ったため、過去5カ月で初めてユーロ圏総合PMIが前月比で上昇しました。

1月のインフレ速報値では、ユーロ圏コアインフレ率が前年同月比0.15%低下し3.3%となりましたが、市場予想を上回りました。ユーロ圏消費者物価指数も前年同月比0.18%低下し2.8%となりましたが、こちらも市場予想を上回りました。

1月末現在、モーニングスター欧州レバレッジドローン指数における過去12カ月のデフォルト率(額面ベース)は1.86%でした3。過去平均は年率2.88%となりました3

指数のトータルリターン(%)


 

脚注

  • 1.

    Credit Suisse Western European Leveraged Loan Index (CS WELLI)、ユーロ建てヘッジ付き、2024年1月31日現在。過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。指数に直接投資することはできません

  • 2.

    Credit Suisse Western European High Yield Indexはユーロ建て、2024年1月31日現在。

  • 3.

    Morningstar European Leveraged Loan Index。過去の平均デフォルト率は、2007年6月1日から2024年1月31日までを対象に集計しています。

  • 4.

    2024年1月25日に行われた、欧州中央銀行(ECB)の記者会見を参照。

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