欧州バンクローン市場、月次アップデート 2024年1月
2023年12月の欧州バンクローン市場は、相対的に高く安定したインカムがプラスに寄与したとともに、価格変動もプラススリターンとなり、月間トータル・リターンは+1.19%となりました
Credit Suisse Western European Leveraged Loan Index(以下「CS WELLI」または「指数」)の2023年12月のトータル・リターンは+1.19%となり、内訳は価格変動が+0.51%、金利収入が+0.68%でした1 。12月末時点のCS WELLIの年初来トータルリターンは+12.46%となり、ローンの平均価格は年初の91.56ユーロから、96.62ユーロに上昇しました。
12月は、大方の予想を上回る好調なパフォーマンスとなりました。2023年の年初来のリターンで見ると、欧州バンクローン市場は+12.5%、ストックス欧州600指数は+12.6%、米S&P500指数は+24.4%で、それぞれ大きなプラスリターンとなりました。
2023年を振り返ると、年初は欧州のガス供給への危機感が高まりましたが、暖冬となったことでエネルギー需要が減少し、結果的にはそれほど大きな打撃になりませんでした。インフレが高止まりしていることを背景に、欧州中央銀行(ECB)は年間を通じて金融引き締め政策を維持しました。ロシア-ウクライナ紛争は一進一退となりました。天然ガス価格は2023年年央までにピークの半値以下となり、また、供給網が改善して、食料品価格も低下しました。企業は価格転嫁を通じて利益率が大きく下支えされ、企業業績は堅調に推移しました。
高止まりするインフレを抑制するため、ECBは10会合連続で利上げを行い、政策金利を史上最高となる4.0%に引き上げました。その結果、インフレ率は2022年12月時点の9.2%から、2023年12月時点で2.9%まで低下しました。これを踏まえて市場関係者は、2024年中に50bpから150bpの利下げが実施され、早ければ2024年春に最初の利下げが実施されると予想しています。2024年には金利が低下するとの期待から、年末の数カ月にかけてほぼ全てのリスク資産価格が上昇しました。
2023年の欧州バンクローン市場の新規発行額は、昨年を約7%下回る約325億ユーロとなりました。昨年比で減少した主な要因は、高金利の環境下で世界的にバイアウトが大きく減少したためです。2023年のバイアウト案件のローン新規発行額は61億ユーロとなり、2022年比で約64%減少しました。デフォルト率は1.41%と限定的で、また、昨年と同水準のCLOが堅調に発行(262億ユーロ)されたことでCLOからの旺盛なバンクローン需要が継続し、市場は底堅く推移しました。
バンクローンの新規発行は、過去水準を下回って推移すると思われます。大きなM&A(合併・買収)やLBO(レバレッジド・バイアウト)の動きはあまり見られない状況が続くと思われますが、企業価値の見直しも見られ、2024年後半には再び活発化する可能性があります。想定される経済動向や堅調なCLOからの需要を踏まえると、バンクローンは2024年も良好なリスク調整後のリターンが期待されます。
リターン:2023年12月
12月のCS WELLIのセクター別リターンでは、不動産が+2.32%と最も高いパフォ-マンスとなり、続いてメディア・通信の+1.72%、食品・製薬の+1.65%となりました。今月は全てのセクターがプラスリターンとなり、最も低いパフォ-マンスとなったのは、エネルギーの+0.35%でした1 。
年初来のセクター別リターンでは、不動産が+18.87%と最も高いパフォ-マンスとなり、続いて食品・製薬の+17.95%、食品/タバコの+15.14%となりました。12月同様、年初来で全てのセクターがプラスリターンとなり、最も低いパフォ-マンスとなったのは、化学の+10.00%でした1 。
12月のCS WELLIの格付別リターンでは、 「B」 格が+1.35%と最も高く、「BB」格が+1.13%、 「CCC」格が最も低い-1.08%となりました1。2023年全体の格付別リターンでは、12月同様、 「B」 格が+13.38%と最も高く、「BB」格が+9.07%、 「CCC」格が最も低い+7.96%となりました1。
12月末におけるCS WELLI構成銘柄の平均価格は、前月末比で約0.55ユーロ、年初来で約5.06ユーロ上昇し、96.62ユーロとなりました1。CS WELLIの3年ディスカウント・マージンは5.05%となり、前月末比で0.21%縮小、年初来で1.56%縮小しました1。
12月のクレディ・スイス欧州ハイ・イールド債券(Credit Suisse Western European High Yield)指数は+2.86%のリターンとなり、スプレッド・トゥ・ワーストは4.36%、イールド・トゥ・ワーストは6.97%となりました2。
ファンダメンタルズ
12月のユーロ圏消費者物価指数(速報値)は前年同月比で0.5%上昇の2.9%となり、予想値の3.0%をわずかに下回りました。この上昇は、食料品や電力に対する政府補助金が一部廃止されたことに伴うものと思われます。価格変動の大きい食品とエネルギーを除いたコアインフレ率は、3.6%から3.4%に低下し、物価上昇圧力が依然として低下傾向にあることを示唆しています。
欧州中央銀行(ECB)は、12月の定例理事会で全ての政策金利を据え置き、中銀預金金利も4.0%を維持しました。また、ECBは早期の利下げ観測を後退させ、インフレ率の低下が見込まれるにもかかわらず、金利は過去最高の水準にとどまるだろうと強調しました。ラガルドECB総裁は、物価上昇圧力が和らいでいることを認めつつも、域内のインフレ(主として賃金の上昇)は依然として残っていると伝えました。
最新のECB経済予測によれば、2023年の平均実質GDP成長率は+0.6%(前回予想:+0.7%)、2024年は+0.8%(前回予想:+1.0%)となっています。2025年の同予想は+1.5%に据え置かれています。同時に、2024年と2025年のユーロ圏消費者物価指数上昇率の平均値は、それぞれ+2.7%(前回予想:+3.2%)、+2.1%(変更なし)と予想されています。
ユーロ圏消費者信頼感指数は1.5ポイント上昇し、-15.1となりました。マイナス幅は2023年2月以降で最小となりましたが、同指数は依然として長期平均を約3ポイント下回っています。
12月末現在、モーニングスター欧州レバレッジドローン指数における過去12カ月のデフォルト率(額面ベース)は1.41%でした3。過去平均は年率2.88%となりました3 。
脚注
-
1.
Credit Suisse Western European Leveraged Loan Index (CS WELLI)、ユーロ建てヘッジ付き、2023年12月31日現在。過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。指数に直接投資することはできません。
-
2.
Credit Suisse Western European High Yield Indexはユーロ建て、2023年12月31日現在。
-
3.
Morningstar European Leveraged Loan Index。過去の平均デフォルト率は、2007年6月1日から2023年12月31日までを対象に集計しています。
ご利用上のご注意
当資料は情報提供を目的として、インベスコ・アセット・マネジメント株式会社(以下、「当社」)が当社グループの運用プロフェッショナルが日本語で作成したものあるいは、英文で作成した資料を抄訳し、要旨の追加などを含む編集を行ったものであり、法令に基づく開示書類でも金融商品取引契約の締結の勧誘資料でもありません。抄訳には正確を期していますが、必ずしも完全性を当社が保証するものではありません。また、抄訳において、原資料の趣旨を必ずしもすべて反映した内容になっていない場合があります。また、当資料は信頼できる情報に基づいて作成されたものですが、その情報の確実性あるいは完結性を表明するものではありません。当資料に記載されている内容は既に変更されている場合があり、また、予告なく変更される場合があります。当資料には将来の市場の見通し等に関する記述が含まれている場合がありますが、それらは資料作成時における作成者の見解であり、将来の動向や成果を保証するものではありません。また、当資料に示す見解は、インベスコの他の運用チームの見解と異なる場合があります。過去のパフォーマンスや動向は将来の収益や成果を保証するものではありません。当社の事前の承認なく、当資料の一部または全部を使用、複製、転用、配布等することを禁じます。
G2024-01-006
そのほかの投資関連情報はこちらをご覧ください。https://www.invesco.com/jp/ja/institutional/insights.html