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欧州バンクローン市場、月次アップデート 2024年3月

欧州バンクローン市場、月次アップデート 2024年3月
2024年2月の欧州バンクローン市場は、相対的に高く安定したインカムがプラスに寄与し、月間トータル・リターンは+0.51%となりました

Credit Suisse Western European Leveraged Loan Index(以下「CS WELLI」または「指数」)の2024年2月のトータル・リターンは+0.51%となり、内訳は価格変動が-0.15%、金利収入が+0.67%でした1

好調な経済指標と企業業績に支えられ、2月の欧州バンクローン市場は概ね堅調に推移しました。米国ではS&P500種指数を構成する企業の90%以上が決算を発表しましたが、うち4分の3程度は事前予想を上回りました。欧州では、2月のユーロ圏総合購買担当者景気指数(PMI)が改善して景気回復の可能性を示唆しました。一方で、1月の欧州のインフレ関連指標が予想値を上回り、ユーロ圏のインフレ率は2.6%と前月からわずかな低下にとどまったため、欧州中央銀行(ECB)の利下げ開始時期の予想が後ずれしました。変動金利ローンは金利上昇の恩恵を受けましたが、固定利付債市場は概ね下落し、ブルームバーグ・グローバル総合インデックスは2月に1.3%下落しました2

各国・地域の総合インフレ率推移

欧州バンクローン市場は予想以上に新規発行が見られ、2月の新規発行総額は120億ユーロとなりました。これは、2022年1月以来で月間最高の新規発行額となり、1月の75億ユーロから大幅に増加しました。M&Aが低調であるにもかかわらず、アドオンやリファイナンスなどの案件の他、バイアウトの案件もいくつか見られました。この結果、年初来の新規発行額は200億ユーロ近くとなり、前年同期比の約3倍となりました。

CLO市場は安定しつつあります。トップ・ティアのマネジャーのCLOノート(AAA格)は、年初にスプレッドが大幅に縮小した後、足元ではEURIBOR+150bp付近で取引されています。新規発行額は12件/50億2,000万ユーロとなり、前年同月の14件/52億1,000万ユーロをわずかに下回ったものの、安定して推移しています。セルサイドのアナリストは、今後活発な新規発行が見込まれることや、裁定が働きやすい環境であることを踏まえて、CLOの通年発行予想額を引き上げました。

 

リターン:2024年2月

2月のCS WELLIのセクター別リターンでは、小売が+1.06%と最も高いパフォ-マンスとなり、続いてメディア・通信の+0.75%、食品/タバコの+0.64%となりました。また、今月は耐久消費財のみが-2.95%のマイナスリターンとなりました1

2月のCS WELLIの格付別リターンでは、 「CCC」 格が+2.65%と最も高く、 「BB」 格が+0.52%、「B」格が最も低い+0.46%となりました1

2月末におけるCS WELLI構成銘柄の平均価格は、前月末比で約0.09ユーロ下落し、97.14ユーロとなりました1。CS WELLIの3年ディスカウント・マージンは4.83%となり、前月末比で0.03%拡大しました1

2月のクレディ・スイス欧州ハイ・イールド債券(Credit Suisse Western European High Yield)指数は+0.38%のリターンとなり、スプレッド・トゥ・ワーストは3.82%、イールド・トゥ・ワーストは7.07%となりました3

 

ファンダメンタルズ

2月のユーロ圏総合PMIは1ポイント上昇して48.9となりました。サービス業PMIは1.6ポイント上昇して7カ月ぶりの高水準となる50となり、景気減速の停止を示唆しました。一方で、製造業PMIは、ドイツが不振であったことから、0.5ポイント低下して46.6となりました。なお、紅海における紛争の影響によるサプライチェーンの混乱は緩和したように思われます。

2月のユーロ圏総合消費者物価指数(速報値)は2.6%となり、1月の2.8%から低下したものの、市場予想の2.5%を上回りました。コア・インフレ率も3.1%に低下し、2年ぶりの低水準となりましたが、市場予想の3.0%を上回りました。総合インフレ率が低下した主因は、食品のインフレ率が前年同期比で4.0%となり、前月の数値から1.6%低下したことです。一方でエネルギーのインフレ率は、ユーロ圏全域で燃料価格が上昇したため、前年同期比で-3.7%となり、前月の数値から2.4 %上昇しました。

欧州中央銀行(ECB)は1月の定例理事会で、政策金利である中銀預金金利を4%に据え置きました。現時点の市場予想では、次回の3月6日および7日に開催される定例理事会でも政策金利の変更はないと見られています。インフレが高止まりする場合、4月の定例理事会でも利下げが見送られ、年後半にずれ込む可能性があります。しかしながら、PMIが示唆するように経済成長は低位で推移しており、総合インフレ率もECBの目標である2%に収束しつつあるため、中期的には本格的な利下げプロセスに入る可能性があります。

2月末現在、モーニングスター欧州レバレッジドローン指数における過去12カ月のデフォルト率(額面ベース)は1.86%でした4。過去平均は年率2.87%となりました4

指数のトータルリターン(%)


 

脚注

  • 1.

    Credit Suisse Western European Leveraged Loan Index (CS WELLI)、ユーロ建てヘッジ付き、2024年2月29日現在。過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。指数に直接投資することはできません。

  • 2.

    ブルームバーグより、2024年2月29日現在。

  • 3.

    Credit Suisse Western European High Yield Indexはユーロ建て、2024年2月29日現在。

  • 4.

    Morningstar European Leveraged Loan Index。過去の平均デフォルト率は、2007年6月1日から2024年1月31日までを対象に集計しています。

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