欧州バンクローン市場、月次アップデート 2024年11月
.jpg)
2024年10月の欧州バンクローン市場は、相対的に高く安定したインカムがプラスに寄与し、月間トータル・リターンは+0.78%となりました。
Credit Suisse Western European Leveraged Loan Index(以下「CS WELLI」または「指数」)の2024年10月のトータル・リターンは+0.78%となり、内訳は価格変動が+0.10%1、金利収入が+0.68%となりました。
10月の世界の金融市場は複雑な様相を呈しました。米大統領選の投票日が近づくにつれ、特に米国の次期大統領選出後の米中貿易への影響もあり、政治情勢が金融市場における主な注目点となりました。また、中東での紛争拡大が世界経済の不安定要因となり、原油価格も変動しました。今月、ユーロ・ストックス50指数は約3.5%下落し、S&P500種指数は1.0%下落しました。
かかる環境下、10月のバンクローン市場は底堅く推移し、月間トータル・リターンは+0.78%となりました。これは主に金利収入(+0.68%)が牽引したもので、CS WELLI構成銘柄の平均価格は前月から0.18ユーロ上昇して97.34ユーロとなりました。また、10月の新規発行は先月と同様に活発でした。新規発行額は83億ユーロ(前年同月比18%増)となり、2024年の月次平均発行額(年初来の新規発行累計額は680億ユーロ)と同水準でした。今月の発行額のうち、M&A関連の案件が約70%となり、年初来平均の約37%を上回ったことは注目に値します。2025年も利下げが想定されますが、それによってM&Aやバンクローンの新規発行が下支えされ、年内の新規発行が続くと思われます。
欧州CLO市場では、年初来で409億ユーロ(97案件)の新規CLOが発行され、これまでの年間最高額である2021年の386億ユーロを上回りました。また、2024年は、新規発行を行ったCLOマネジャー数が年初来で過去最高の55社となり、さらに増加する見込みです。
欧州CLOは、2021年と比べて年間を通じてより安定して新規発行されました。また、CLOの資金調達コストも安定しています。欧州の銀行や新規投資家からの需要を背景に、6月以降、CLOノート(AAA格)はEURIBOR+130bp前後の水準で推移しています。CLOの新規発行が活発であり、バンクローン需要は引き続き堅調と思われます。

リターン:2024年10月
10月のCS WELLIのセクター別リターンでは、耐久消費財+1.86%と最も高いパフォ-マンスとなり、続いて不動産の+1.39%、メディア・通信の+1.37%となりました1。今月はマイナスリターンになったセクターはありませんでした1。
10月のCS WELLIの格付別リターンでは、「CCC」格が+3.83%と最も高く、 「B」 格が+0.70%、 「BB」 格が最も低い+0.54%となりました1。
10月末におけるCS WELLI構成銘柄の平均価格は、前月末比で0.18ユーロ上昇し、97.34ユーロとなりました1。CS WELLIの3年ディスカウント・マージンは4.68%となり、前月末比で0.11%縮小しました1。
ファンダメンタルズ
10月は欧州株と中国株の影響で世界的に株価が下落しました。中国株は、追加的景気刺激策への期待が弱まったことによる反落と見られています。米国株も、テクノロジー株が月後半に軟調に推移するなかでやや下落しましたが、長期金利の上昇や一部企業の2024年7-9月決算内容などが背景と思われます。
10月のユーロ圏総合購買担当者景気指数(PMI)速報値によると、フランスとドイツの数字が弱く、引き続きユーロ圏経済が低調であることを示しています。欧州中央銀行(ECB)の利下げは欧州資産の下支えとなるものの、センチメントは依然として弱いものとなっています。
- 10月のユーロ圏総合購買担当者景気指数(PMI)速報値はやや改善しました。総合PMIは49.7で、7カ月ぶりの低水準であった9月の49.6を上回りました。サービス業PMIは51.2と8カ月ぶりの低水準となり、9月の51.4から若干低下しました。製造業PMIは45.9となり、9月の45.0を上回りました。
- 2024年7-9月期のユーロ圏GDP成長率は前期比+0.4%となり、市場予想(+0.2%)および9月時点でのECBの予想(+0.2%)を上回りました。
- ECBは10月の定例理事会で、予想通り、2会合連続で0.25%の利下げを行い、中銀預金金利を3.25%としました。
10月のユーロ圏消費者物価指数(速報値)は市場予想(1.9%)を上回る2.0%となり、9月の1.7%から上昇しました。コアインフレ率は2.7%となり、前月と同水準でした。食品インフレ率は2.4%から2.9%に上昇しました。
10月末現在、モーニングスター欧州レバレッジドローン指数における過去12カ月のデフォルト率(額面ベース)は0.78%でした3。過去平均は年率2.80%となりました3。
投資機会
ECBの利下げによる資金調達コストの低下がクレジット市場を下支えすると思われます。CLOによるバンクローン需要は引き続き堅調です。また、中期的にはM&Aの増加が見込まれ、LBOローンの組成を牽引すると思われます。全体的には、良好な需給環境を背景にして、バンクローンは低ボラティリティかつ高いリスク調整後のリターン(図3)を提供するアセットクラスとして、引き続き選好されています。


G2024-11-010
そのほかの投資関連情報はこちらをご覧ください。https://www.invesco.com/jp/ja/institutional/insights.html