欧州バンクローン市場、月次アップデート 2025年12月
2025年11月の欧州バンクローン市場は、安定した推移となり、月間トータル・リターンはインカムを中心に+0.50%となりました。
S&P UBS Western European Leveraged Loan Index (以下「S&P UBS WELLI」または「指数」)の2025年11月のトータル・リターンは+0.50%となり、内訳は価格変動が+0.01%1、金利収入が+0.49%となりました。なお、年初来のトータル・リターンは+3.61%1となっています。
ユーロ圏全体の安定したマクロ経済環境を背景に、11月のバンクローン市場では市場心理が概ね堅調に推移しました。一方で、12月上旬に予定されている米連邦公開市場委員会(FOMC)における利下げ期待や、AIバブルへの懸念の高まりなどを巡るグローバル要因により、月末にかけて金融市場ではボラティリティの上昇が見られました。
欧州バンクローン市場は月中旬まで堅調に推移し、指数構成銘柄の平均価格は前月比0.16ユーロ上昇して96.38ユーロとなりました。しかし、月末には前月比ほぼ横ばいの96.26ユーロへと下落しました1。月末にかけてやや減速したものの、指数の月間トータルリターンは5月以来の高水準を記録しました。良好な需給環境やリプライシングの影響により、月末時点ではバンクローンの53%が額面以上の価格で取引されています2。
欧州バンクローンの新規発行額は、英国の秋季予算発表と米国の感謝祭休暇を控え、急減しました。11月の発行額は51億ユーロと、11月としては2022年以降で最低の発行額となりました。機関投資家向けバンクローンの発行額は41億ユーロに落ち込み、10月の85億ユーロから半減しました。また、LBOやその他のM&A関連取引による新規資金は、10月の47億ユーロから11月は23億ユーロに減少しました。こうした大幅な減速にもかかわらず、2025年初来の新規発行累計額は1,200億ユーロに達し、2024年通年の新規発行累計額を12%上回り、年前半のバンクローン市場がかなり堅調であったことが裏付けられています2。
CLOの新規発行は、11月も堅調に推移しました。投資家の旺盛な需要に支えられ、CLOノート(AAA格)のクーポンは、引き続きEURIBOR+128bp~133bp前後のスプレッドで推移しました2。 CLOマネジャーは、ローンスプレッドの縮小やCCC格比率の上昇といった課題に直面する一方、バンクローン供給の減速を受け、ポートフォリオの最適化を目的としたリセットやリファイナンスの動きが年末にかけて加速しています。
11月の欧州バンクローン市場は、マクロ経済が安定していることと、バンクローンの新規発行が制約されたことや世界的な不確実性に対しテクニカルな優位性があったこととの間で、均衡が取れていたことが顕著になりました。低調な新規発行市場とは対照的に、良好なリターンと正常債権に対する需要は底堅く推移しています。また、CLOの新規発行は当市場に引き続き流動性を供給しました。
リターン:2025年11月
- 11月のS&P UBS WELLIのセクター別リターンでは、不動産が+1.22%と最も高いパフォ-マンスとなり、続いて耐久消費財の+0.95%、航空宇宙・防衛の+0.87%となりました1。また、マイナスリターンとなったセクターで最も低いパフォ-マンスとなったのは化学の▲1.10%、食品・製薬の▲0.58%、林産品の▲0.01%となりました1。
- 11月のS&P UBS WELLIの格付別リターンでは、 「B」格が+0.62%と最も高く、 「BB」格が+0.20%、「CCC」格が最も低い▲0.55%となりました1。
- 11月末におけるS&P UBS WELLI 構成銘柄の平均価格は、前月末比で約0.27ユーロ上昇し、96.27ユーロとなりました1。同指数の3年ディスカウント・マージンは4.85%となり、前月末比で0.01%縮小しました1。
ファンダメンタルズ
- リスク資産は乱高下、米連邦準備制度理事会(FRB)の追加利下げが焦点に:
12月のFRBの追加利下げ確率が68%から24%、さらに83%へと大きく変動したことで、月初に売り圧力が強まった一方、その後の反騰したことにより、世界の金融市場ではボラティリティの高まりが生じました。月を通してみると、S&P500種指数は小幅高(+0.2%)で月末を迎えました。 - テクノロジー・セクターとAIバブルに対する懸念がバリュエーションの調整圧力に:
AIバブルの懸念が高まる中、世界のテクノロジー株は軟調な展開となりました。マグニフィセント7指数は1.1%下落、ナスダック総合指数は1.4%下落、欧州ストックステクノロジー指数は4.1%の大幅下落となりました4。 好調な決算だったにもかかわらず、エヌビディアは12.6%の大幅下落、一方、アルファベットはGemini AIの発表で13.9%の急騰となり、競争環境が激化しています5。 - 欧州は、良否が混在する経済データの中で、回復力を見せている:
ユーロ圏総合総合購買担当者景気指数(PMI)は52.4に低下し(予想は52.5)、経済成長が緩やかであることを示唆しています。フランスのPMIは2.2ポイント上昇し、49.9と改善しています。周辺国のPMIも54.4と好調に推移しているものの、ドイツのPMIは1.8ポイント低下し52.1と、減速が見られます。英国のPMIはサービス業の減速により50.5に低下し、経済活動の鈍化を示唆しています。 - ユーロ域内のインフレが安定的に推移したことは、欧州中央銀行(ECB)にとってサプライズ:
10月のユーロ圏消費者物価総合指数は前年同月比2.1%の上昇となった一方で、コアインフレ率は同2.4%の上昇となり、ECB予想(総合2.0%上昇/コア2.2%上昇)をわずかに上回りました。 - 英国の秋季予算発表が市場を落ち着かせる:
同予算案発表前、英国債市場は乱高下したにもかかわらず、秋季予算案は債券市場の懸念を和らげました。結果、英10年国債利回りは低下し(予算案発表当日は0.07%低下)し、歳入計画と財政余力が予想を上回る好材料となりました。 - 11月末現在、モーニングスター欧州レバレッジドローン指数における過去12カ月のデフォルト率(額面ベース)は1.08%でした6。過去平均は年率2.66%となりました6。
投資機会
GDPやインフレが安定的に推移すると予想されていることは、クレジット市場のサポート材料となります。欧州バンクローンは比較的高いリスク調整後リターンを提供してきており、今後もその傾向が継続すると思われます(図2)。
G2025-12-017
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