欧州バンクローン市場、月次アップデート 2025年7月
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2025年6月の欧州バンクローン市場は、相対的に高く安定したインカムがプラスに寄与した一方、月間トータル・リターンは+0.24%となりました。
S&P UBS Western European Leveraged Loan Index (以下「S&P UBS WELLI」または「指数」)の2025年6月のトータル・リターンは+0.24%となり、内訳は価格変動が▲0.31%1、金利収入が+0.55%となりました。なお、年初来のトータル・リターンは+2.38%1となっています。
6月は、欧州のリスク資産は概ね堅調に推移しました。中東における地政学リスクが後退してきた中、欧州の安定した金融政策と、再生可能エネルギーや防衛支出に対する積極的な財政支出の双方が好感され、各市場の上昇要因となりました。例えば、ストックス欧州600指数は年初来で7%近い上昇となりました。
欧州バンクローン市場もについても、CLO発行に伴う旺盛な需要を背景に、他の市場同様、堅調さが維持されています2。
6月のバンクローン新規発行市場は特に活発となり、20件を超える取引が行われ、その大半がリプライシング案件でした。B格のバンクローンは、一般的にほぼ額面近辺で発行され、前月はEURIBOR+370bp程度でリプライシングされていましたが、当月はEURIBOR+350bp程度へ縮小した水準でのリプライシング案件が目立ちました。流通市場も堅調さが維持され、指数構成銘柄の平均価格は、前月比ほぼ同水準で月末を迎えました1。
5月および6月のCLO市場では、スプレッドが縮小するとともに発行額が増加したことを背景に、取引件数が大きく増加しました。
新規発行のCLOノート(AAA格)のクーポンは、平均でEURIBOR+130~135bpまで低下しました。6月は欧州全体で12件の新規CLOが発行されました。年初来での新規発行額は、69件、300億ユーロに達し、58件、240億ユーロであった前年同期と比べると、大幅に上回っています2。
2025年後半に入っても、良好な経済環境と証券化商品に対する投資家の底堅い需要を背景に、バンクローン市場は今後も堅調なペースで拡大することが見込まれています。
欧州バンクローン市場の短期的な見通しについては、慎重ながらも楽観的な見方をしています。 また、魅力的なスプレッド環境を背景に、一定の新規発行パイプラインが続くと予想されますが、その内訳はリプライシングのほか、小規模な増額取引が中心となる見込みです。
プライベート・エクイティのスポンサー動向については、株式のバリュエーションには改善が見られるものの、関税政策を巡る方向性がはっきりするまで、または、良いエグジット機会が到来するまで、様子見の姿勢を維持する可能性が高いと考えられます。

リターン:2025年6月
- 6月のS&P UBS WELLIのセクター別リターンでは、航空宇宙・防衛が+0.98%と最も高いパフォ-マンスとなり、続いて不動産の+0.86%、金融の+0.56%となりました1。プラススリターンとなったセクターで最も低いパフォ-マンスとなったのは、耐久消費財の+0.01%となりました1。また、マイナスリターンとなったセクターで最も低いパフォ-マンスとなったのはメディア・通信が▲0.27%、続いてヘルスケアの▲0.01%となりました1 。
- 6月のS&P UBS WELLIの格付別リターンでは、「B」格が+0.29%と最も高く、 「BB」格が+0.23%、「CCC」格が最も低い▲1.32%となりました1。
- 6月末におけるS&P UBS WELLI 構成銘柄の平均価格は、前月末比で0.01ユーロ上昇し、97.24ユーロとなりました1。同指数の3年ディスカウント・マージンは4.63%となり、前月末比で0.05%拡大しました1。
ファンダメンタルズ
- 6月のユーロ圏総合購買担当者景気指数(PMI)は50.6となり、同域の年間経済成長率が約1%上昇することを示唆しています。2025年4-6月期の平均値は50.4となり、2025年1-3月期と同水準となりました。PMIが50を超えると経済成長の拡大を示すため、地政学的リスクや貿易・関税の不透明感が高まっているにもかかわらず、ユーロ圏経済には回復力があることが示されています。6月は、主としてサービス部門(前月比0.8ポイント上昇し50.5)が牽引したことにより、総合指数が上昇しました。ただ、不透明なマクロ情勢から影響を受けやすい製造セクターでは、新たな鈍化傾向が示されました(生産指数は前月比0.7ポイント下落し50.8)。
- 6月のユーロ圏消費者物価指数(CPI)の伸び率は5月の1.9%から2.0%に上昇しました。コア指数は2.3%と横ばいとなり、インフレが落ち着いていることを示唆しています。総合指数の主たる上昇要因はエネルギー・インフレによるもので、食品インフレは3.2%から3.1%にやや低下しました。
- 欧州中央銀行(ECB)は、今月、予想通り政策金利を2%に引き下げました。しかしながら、これまで定例理事会ごとに政策金利を決定するとしていた方針とは異なり、ECBは予想外に7月の利下げを見送りする可能性を示唆しました。
- 米国による90日間の相互関税の猶予期間が終了する7月9日が迫る中、欧州連合(EU)は米国との合意を目指しています。7月初旬、欧州委員会の委員長のフォン・デア・ライエン委員長は、EUが7月9日までに米国との「原則的な合意」を締結する方針だと述べています。
- 6月末現在、モーニングスター欧州レバレッジドローン指数における過去12カ月のデフォルト率(額面ベース)は0.71%でした3。過去平均は年率2.71%となりました3。
投資機会
ユーロ圏経済の安定(おそらく緩やかな成長)と資金調達コストの低下はクレジット市場にプラスの影響を与えます。バンクローンは高いリスク調整後リターンを提供してきており、今後もその傾向が継続すると思われます(図2) 。


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