欧州バンクローン市場、月次アップデート 2026年1月
2025年12月の欧州バンクローン市場は、安定した推移となり、月間トータル・リターンはインカムを中心に+0.37%、年間では+4.00%となりました。
S&P UBS Western European Leveraged Loan Index (以下「S&P UBS WELLI」または「指数」)の2025年12月のトータル・リターンは+0.37%となり、内訳は価格変動が▲0.20%1、金利収入が+0.57%となりました。なお、2025年通期のトータル・リターンは+4.00%1となりました。
上述の通り、2025年の欧州バンクローン市場は4.00%のプラスリターンとなりました。しかし、信用格付間のパフォーマンス二極化が進み、B1格のバンクローン価格が小幅に上昇した一方で、B3格以下のバンクローン価格が大幅に下落し、指数構成銘柄の平均価格は前年末比1.53ユーロ低下して年末を迎えました。デフォルト率は1.44%(ディストレストな債務再編を含めたデフォルト率は3~4%)と、3年連続で低位な推移が続き、事前の市場予想を下回りました。また、シニア担保付ローンの再編や債権回収が進んだことを受け、実質的な損失率は1~1.5%と低水準に留まりした。
2025年の欧州バンクローン市場を振り返ると、年初はテクニカル要因が市場を支えたこと、AAA格のスプレッドが縮小したこと、取引価格が額面を上回って推移したことなどを受け、好調なスタートとなりました。しかし、その後、米国が4月に導入を発表した相互関税がグローバルな貿易に打撃を与えるとの見方から、金融市場ではボラティリティが高まりました。一方、欧州に対する影響は比較的軽微との見方から、世界の投資家はサプライズの多い米国を避け、他地域へ投資分散を図る動きが広がり、欧州への資金流入が加速しました。ローンの新規発行は6月に活況さが戻り、1日あたりの発行額が欧州バンクローン市場で過去最大となる日も同月記録しました。なお、新規発行はリプライシング取引が中心であり、短期的な満期集中リスクも軽減されました。
年後半に入ると、Altice、Colisee、Cerba、First Brandsといった企業でクレジットイベントが発生し、これらを保有する欧州バンクローンのマネジャーは、増加するディストレスな債権への対応を余儀なくされ、信用力の低い銘柄のスプレッド急拡大が見られました。これにより、ポートフォリオの整理や時価評価テストの厳格化が進みました。こうした課題がありながらも、欧州バンクローン市場は構造的な優位性やテクニカル面の底堅さに支えられ、問題を抱える銘柄についても、ディストレス投資家からの安定した需要を維持しました。
2025年を通じ、CLOの新規発行は堅調に推移しました。CLO組成額は新規発行が587億ユーロ、リセットが600億ユーロなどと、合わせて過去最高の1,220億ユーロとなり、前年比60%超の増加となりました2。2025年のバンクローン発行総額は、2024年の2,034億ユーロに対し、2,526億ユーロとなり、その3分の2はリファイナンスとリプライシングとなりました2。また、政策金利の低下とリプライシングが大幅に増加したことを受け2、クーポンは年初の8.1%から、12月には5.9%に低下しました。加えて、格下げが13四半期連続で続いたにもかかわらず、リセットと清算によりCLO市場が落ち着きを見せたため2、CCC格へのエクスポージャーは概ね5.4%前後で安定的に推移しました2。
経済成長の加速や資金調達コストの低下、良好なテクニカル要因などが相まって、2026年のバンクローン市場にはさらなる成長を続けるでしょう。また、CLO発行が堅調に推移すると予想される中、バンクローンに対するマクロ経済環境は極めて優位になっており、デフォルト率が低下することで、バンクローンに対するさらなる需要が期待されます。
リターン:2025年12月
- 12月のS&P UBS WELLIのセクター別リターンでは、食品/タバコが+0.86%と最も高いパフォ-マンスとなり、続いて非耐久消費財の+0.82%、情報技術の+0.81%となりました1。また、マイナスリターンとなったセクターで最も低いパフォ-マンスとなったのは林産品/パッケージングの▲1.39%、続いて化学の▲0.82%、食品・製薬の▲0.36%となりました1 。
- 12月のS&P UBS WELLIの格付別リターンでは、 「B」格が+0.62%と最も高く、 「BB」格が+0.54%、「CCC」格が最も低い▲0.51%となりました1。
- 12月末におけるS&P UBS WELLI 構成銘柄の平均価格は、前月末比で約0.11ユーロ下落し、96.16ユーロとなりました1。同指数の3年ディスカウント・マージンは4.74%となり、前月末比で0.11%縮小しました1。
ファンダメンタルズ
ユーロ圏の成長指標は、12月の総合購買担当者景気指数(PMI)がやや落ち着きを見せ、消費動向が弱含んだにもかかわらず、引き続き堅調な内容となっています。2025年7-9月期のユーロ圏GDPは小幅に上方修正され、投資のモメンタムが2026年初に向けた堅固な基盤を提供し続けています。域内のインフレは横ばいに抑制されており、欧州中央銀行(ECB)は金融政策を適切に調整しています。ECBが経済成長の見通しを上方修正していることなどを背景に、金融市場を支える環境はさらに改善・強化されています。ドイツでは製造業の軟調さが短期的な逆風となっているものの、サービス業と雇用の堅調さがこれを相殺しています。英国経済は予想外に堅調な推移が見られます。
マクロ経済の主なハイライト
- ユーロ圏GDP:2025年7-9月期のGDP成長率が前期比0.2%増から0.3%増に上方修正され、ユーロ圏経済が引き続き拡大していることが確認されました。個人消費は減速したものの、投資が堅調に推移し、経済が中期的に成長することへの信頼感が高まりました。
- インフレ:ヘッドライン・インフレ率は前年比+2.1%で横ばいとなり、速報値をわずかに下回りました。コアインフレ率は前年比+2.4%と安定的に推移しました。これは、インフレがECBのターゲット付近で推移し、2026年に入ると低下基調になることを示しています。
- PMI:
− ユーロ圏:12月のユーロ圏総合PMIは0.9ポイント低下し51.9となったものの、依然として拡大基調を維持しています。雇用は0.4ポイント改善し50.6、物価関連指標は小幅に上昇し、需要の底堅さを示唆しています。
− フランス:総合PMIは50.1、製造業は4.7ポイント上昇し49.7となりました。
− ドイツ:総合PMIは51.5(前月比0.9ポイント下落)。製造業は49.4(1.5ポイント下落)となりましたが、サービス業は堅調を維持、雇用は改善を示しました。
− 周辺国:総合PMI は53.4に軟化したものの、新規受注と雇用は引き続き堅調です。
− 英国:総合PMIは予想を上回る52.1(前月比0.9ポイント増)となりました。
サービスと製造業の両セクターで増加し、秋季予算案発表後の景況感が改善しました。
物価上昇圧力は急騰しました。 - ECBの金融政策:
− 政策金利は2%で据え置かれると見られます。ラガルド総裁は同行の政策が「適切な水準」にあり、「あらゆる選択肢」が検討対象であると表明しています。
− 域内の経済成長率見通しを上方修正しました。2025年は+1.4%、2026年は+1.2%、2027年は+1.4%となっています。
−サービス部門のインフレ率の低下ペースは鈍化するものの、中期的に総合インフレ率は2%近辺で安定的に推移すると予想されます。また、コアインフレ率は2025年の2.4%から2027年までに1.9%へ低下すると見られます。
今後の見通し:堅調な投資が継続し、サービス業が引き続き回復、ECBの成長見通しが上方修正されていることなどを背景に、ユーロ圏と英国は2026年1-3月期まで堅調な経済成長を維持する見込みです。一方、インフレが安定し、経済成長が緩やかになれば、より積極的な政策が必要となります。各国の競争圧力が高まることで、ドイツの製造業が軟調となることには引き続き注視すべきです。
- 12月末現在、モーニングスター欧州レバレッジドローン指数における過去12カ月のデフォルト率(額面ベース)は1.44%でした3。過去平均は年率2.66%となりました3。
投資機会
GDPやインフレが安定的に推移すると予想されていることは、クレジット市場のサポート材料となります。欧州バンクローンは比較的高いリスク調整後リターンを提供してきており、今後もその傾向が継続すると思われます(図2)。
G2026-01-005
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