ファンダメンタルズが再び焦点に
要旨
米国市場の焦点は再びファンダメンタルズへ
選挙がもたらす影響はおおむね金融市場に織り込まれ、それに代わって経済・企業のファンダメンタルズが金融市場の動きをけん引する構図がより明確となってきました。直近では、コロナウイルス・ワクチンについての報道を足がかりに、株高、長期金利高の動きが強まりました。
米国の政策に関して懸念される3つのリスク
米国金融市場では、当面、ワクチン関連のニュースや主要経済指標、企業業績が株価や長期金利を左右する展開が予想されます。ただし、政策面でのリスクとして、①財政出動の規模が抑制されるリスク、➁対中政策が米国企業に悪影響をもたらすリスク、➂立法措置を伴わない形で企業への規制が強化されるリスク―には注意が必要です。これらのリスクが存在していることを踏まえると、米国の株価は、当面、ある程度の振れを伴いつつ、より緩やかに上昇すると見込まれます。
米国市場の焦点は再びファンダメンタルズへ
金融市場のテーマが米国大統領選挙から経済・企業のファンダメンタルズ(基礎的諸条件)に移りつつあります。11月3日に実施された米国大統領・議会選挙では、「バイデン大統領+共和党の上院での多数派維持」の組み合わせが濃厚となったことで、大規模な財政出動への期待が大きく低下しました。それでも、①暴動など選挙に伴う混乱、②巨大テック企業や製薬企業への規制強化、③増税―の全てが回避される見通しとなったことで、米国の主要株価指数は選挙後に上昇基調を続けています。こうした中、選挙がもたらす影響はおおむね金融市場に織り込まれ、それに代わって経済・企業のファンダメンタルズが金融市場の動きをけん引する構図がより明確となってきました。
米国の製薬大手であるファイザーが開発中のコロナウイルス・ワクチンの治験において90%以上の人の感染を防ぐことができたと公表したことをきっかけに、11月9日のS&P500種指数は1.2%上昇しました。この展開は、ファンダメンタルズの変化が金融市場の動きを主導しつつあることを象徴していると言えます。同日の米国の国債市場では米10年国債利回りが前営業日の0.820%から0.924%というコロナ禍以降で最も高い水準に上昇しており、債券から株式への資金シフトが進行したとみられます。
コロナ危機以降の米国景気は順調な回復過程をたどってきており、ファンダメンタルズは直近では予想を上回るペースで改善しています。米国のGDPの7割程度を占める民間消費をみると、コロナ禍で失業保険に週当たり600ドルを上乗せする措置が7月末で打ち切られたにもかかわらず、8月と9月の伸びは前月比でプラスを記録しました。米国の民間消費は、雇用が改善する中、財消費がけん引する形でコロナ危機以前の水準に近づいており、9月の実質水準は1-2月の平均水準の97.3%にまで回復しました(図表1)。他方、製造業の業況も着実に回復しており、10月のISM製造業指数は市場における事前予想を上回る59.3ポイントと、2018年9月以来の高水準となりました(図表2)。
米国の政策に関して懸念される3つのリスク
米国金融市場では、当面、ワクチン関連のニュースや主要経済指標、企業業績が株価や長期金利を左右する展開が予想されます。株価については、金融市場ではかなり強気の予想もみられるようになりました。株価が今後も速いペースで上昇するためには、債券市場から株式市場への資金シフトが起きることが条件の一つになると考えられますが、政策の動きが足を引っ張り、投資家のリスク資産への選好が強まらない可能性があることには注意が必要です。具体的には、バイデン政権の成立を前提にする場合、政策面では以下の3つのリスクが懸念されます。第1に、上院で多数派を維持するとみられる共和党の反対により、財政出動が不可能になるか、実施できたとしも非常に小規模になる可能性があります。第2に、バイデン政権が中国での人権や知的財産権に対して厳しい態度で臨む結果、中国ビジネスを営む米国企業の活動に悪影響が及ぶリスクがあります。米国の対中国政策は、バイデン氏はかつて上院で外交委員長を務めたほどの外交通であることから、中国への懸念を強める米議会の指導部と組み、より組織的なアプローチで中国に対抗するのではないでしょうか。その場合、中国との経済的な対立関係が、これまでとは違う形で強まる懸念が生じます。第3に、バイデン政権が、立法措置を伴わない形で企業への規制を強化するリスクがあります。共和党が上院で多数派である限り、立法措置を伴う規制強化策を議会で通過させることは容易ではありません。こうした環境下で、バイデン政権は大統領権限で規制を強化し、企業活動を制約する案を検討する可能性があります。
これらのリスクが存在していることを踏まえると、米国の株価がこれまで通りのペースでの上昇を維持するとは考えにくく、今後はある程度の振れを伴いつつ、より緩やかに上昇する可能性が高いと見込まれます。
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