戦術的資産配分:2023年7月号
マクロレジームのフレームワークは回復期へ移行。
新興国株式、バリュー株、中小型株、クレジットへの
エクスポージャーを増やすことで、ベンチマーク対比で
リスクをオーバーウェイト。
要約
- リスク選好度の改善が短期的な成長期待の改善を示唆しており、IISの世界経済のマクロレジーム(市場局面)のフレームワークは回復期に戻りました。昨年第4四半期の動きと同様、これが新たなサイクルの始まりとなる可能性は低いものの、それでもポートフォリオ・リスクを戦術的に高める投資機会を提供しています。
- グローバル戦術的配分モデル1において、ポートフォリオのリスクをオーバーウェイトし、債券に対して株式をアンダーウェイトからオーバーウェイトに変更し、新興国市場、バリュー株、小型株、シクリカル・セクターを選好します。低格付けクレジットをオーバーウェイト、デュレーションを中立、米ドルをアンダーウェイトとします。
マクロ・アップデート
低成長、世界的な金融引き締めの継続、1970年代以来の水準となる米国の大幅な逆イールドカーブなどが示された四半期を経て、米国のマクロ・データは住宅、製造、消費など様々な経済セクターで深くかつ広範に改善し、コンセンサスに対してポジティブ・サプライズとなりました。インフレデータは依然として高水準ながら、市場のコンセンサスとほぼ一致しています。最近のレポートで述べたように、過去の金融引き締めのラグ効果が経済に浸透するにはまだ時間がかかることを示す歴史的根拠があります。とはいえ、雇用成長、需要、物価上昇圧力を鈍化させるためには、経済がより高い政策実質金利を必要としていることはますます明白になっています。米国インフレ連動国債(TIPS)の2年物実質利回りは現在約3%に達しており、これは2006年以来の水準となっています2。
こうした動きに反応して、金融市場のリスク選好度は先月から一貫して大幅に改善しました。これは、債券に対する株式のアウトパフォーム、先進国市場に対する新興国市場のほぼ横ばいのパフォーマンス、ハイ・イールド債から新興国市場、高格付けクレジットまで、ほとんどの債券セクターのクレジット・スプレッドの縮小が証明しています。このような市場センチメントの反転の大きさは、歴史的に成長期待の改善とそれに続く経済データの改善を示唆してきました。IISの調査によれば、今後数四半期に景気後退に陥る可能性は急速に低下しています。実際、IISのマクロ的な見方は、世界経済とその主要地域が回復基調に移行しており、その特徴は、成長率が依然として低く、長期的なトレンドを下回っているものの、短期的には改善が見込まれることです(図表1および図表2をご参照)。
世界経済とその主要地域は、長期的なトレンドを下回る低成長を続けていますが、短期的には改善が見込まれます。
米国のマクロ・データは、住宅、製造、消費など様々な経済セクターで深くかつ広範に改善し、コンセンサスに対してポジティブ・サプライズとなりました。
金融市場のリスク選好度は先月から一貫して大幅に改善しています。これは、債券に対する株式がアウトパフォーム、先進国市場に対する新興国市場のパフォーマンスが横ばい、ハイ・イールドから新興国市場、優良クレジットまで、ほとんどの債券セクターでクレジット・スプレッドが縮小していることからも明らかとなっています。
こうした動きは、昨年12月と2023年初頭に経験した市場のダイナミクスを彷彿とさせるものです。シクリカル市場の顕著な反発は、差し迫った景気後退リスクという概念を覆すものでした。
こうした動きは、昨年12月と2023年初頭に経験した市場のダイナミクスを彷彿とさせるものです。シクリカル市場の顕著な反発は、差し迫った景気後退リスクという概念を覆すものでした。失業率が過去最低を記録したことを考えれば、この回復局面は新たな景気サイクルの開始を意味するものではなく、目先の成長期待に対する新たなポジティブな再評価であると考えられます。この再評価は、戦術的な観点から、特に年初来アンダーパフォームに陥っているシクリカル市場、それも少数の銘柄に集中した先導株に牽引されている環境において、有意義な機会を生み出す可能性があります。IISは、このようなシクリカル市場の反発は今後数カ月間続く可能性があり、ポートフォリオのエクスポージャーについてポジショニングを見直す必要があると考えています。
インフレデータは依然として高水準ではあるものの、市場のコンセンサスとほぼ一致しています。
投資ポジショニング
マクロレジーム(市場局面)のフレームワークが後退期から回復期に移行する中、グローバル戦術的配分モデルのリスクを増加させ、ベンチマーク対比のリスク・オーバーウェイトのスタンスに移行しました。債券に対して株式をアンダーウェイトからオーバーウェイトに変更し、エマージング市場、シクリカル・セクター、バリュー株、中小型株を選好しました。低格付けセクターを通じたクレジット・リスクを高め、デュレーションは中立を維持します。米ドルへのエクスポージャーを縮小し、外貨のオーバーウェイト・スタンスに移行しました(図表4、5、6、7をご参照)。
株式では、営業レバレッジが高く、成長期待の回復に対する感応度が高いバリュー株や中小型株などのシクリカル・ファクターをオーバーウェイトする一方、低ボラティリティ、クオリティ、大型株などのディフェンシブ・ファクターをアンダーウェイトします。
成長率がトレンドを下回るものの、改善傾向を示す環境では、ボラティリティは引き続き抑制され、クレジット市場は安定した利回りとトータル・リターンを提供すると予想されます。
為替市場では、景気回復局面では通常、米国以外の資産への強いリフレの流れが伴うため、米ドルのエクスポージャーを減らしています。
詳細:
- 株式では、バリュー株や中小型株など、営業レバレッジが高く、成長期待の反発に対する感応度が高いシクリカル・ファクターをオーバーウェイトする一方、低ボラティリティ、クオリティ、大型株などのディフェンシブ・ファクターをアンダーウェイトします。市場サイクルの変曲点では、直近の勝者と敗者の間で反転効果が発生する傾向があるため、モメンタムをアンダーウェイトします。このスタイル/ファクター・ローテーションは、短期的なバリュエーションの観点からは好都合なタイミングです。というのも、年初来の株式パフォーマンスは、一握りの超大型優良銘柄によって牽引されてきた一方、シクリカル銘柄は幅広い市場インデックスに大きく劣後してきたからです。同様に、ヘルスケア、生活必需品、公益事業、テクノロジーよりも、金融、資本財・サービス、素材、エネルギーなどのシクリカル・セクターへのエクスポージャーを選好します。地域的には、リスク選好度の改善と米ドル安期待に支えられ、新興国市場をオーバーウェイトしています。欧州と日本の成長モメンタムが弱まっているため、米国株と先進国株(米国を除く)の中立スタンスを維持します。
- 債券では、最近の信用スプレッドの縮小にもかかわらず、ハイ・イールド債、バンクローン、新興国市場ハード・カレンシー債を通じ、クレジット・リスク3をオーバーウェイトしています。成長率はトレンドを下回っているものの改善傾向にあることから、ボラティリティは引き続き抑制され、クレジット市場は安定した利回りとトータル・リターンを提供すると予想します。その結果、投資適格債と国債へのエクスポージャーを減らし、デュレーションを中立に維持します。インフレの減速が続く中、ブレークイーブン・インフレ期待はさらに小幅に縮小すると予想するため、インフレ連動債よりも一般債を選好します(図表3をご参照)。
- 為替市場では、景気回復局面では通常、リフレーションによる米国以外の資産への力強い資金フローを伴うため、米ドルのエクスポージャーを減らしています。利回り格差は依然として外国通貨に対する米ドルを支えていますが、安全資産への資金流入が弱まる局面では、割高なバリュエーションが逆風となります。先進国では、ユーロ、英ポンド、ノルウェークローネ、スウェーデンクローナを、スイスフラン、日本円、豪ドル、カナダドルに対して選好します。新興国市場では、韓国ウォン、台湾ドル、中国人民元などの低利回り通貨に対し、コロンビア・ペソやブラジル・レアルなどの魅力的なバリュエーションを持つ高利回り通貨を選好します。
この再評価は、特に年初来アンダーパフォームに陥っているシクリカル市場において、12銘柄に集中するリーダーシップに牽引された環境下で、戦術的観点から有意義な機会を創出する可能性があります。私たちは、このシクリカルなリバウンドは今後数カ月間続く可能性があり、ポートフォリオのエクスポージャーについてポジショニングを見直す必要があると考えています。
このスタイル/ファクター・ローテーションは、短期的なバリュエーションの観点からは好都合なタイミングと言えます。というのも、年初来の株式パフォーマンスは、一握りの超大型優良株によって牽引されている一方、シクリカル株は市場全般のインデックスに大きく劣後しているからです。
Footnotes
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1.
ベンチマークはMSCI All Country World Index 60%とBloomberg Global Aggregate Index (Hedged) 40%で構成。
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2.
実質利回りは、インフレ連動国債(TIPS)市場のテクニカル・ギャップと流動性ギャップにより、2008年の市場混乱時にも一時的に高水準に達した。
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3
クレジット・リスクは、DTS(デュレーション×スプレッド)で計測。
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