戦術的資産配分:2024年3月号
リスク資産、シクリカル、クレジットなどをオーバーウェイト。
クレジット・スプレッドの縮小と堅調な企業収益は、景気回復の継続を示唆する
インベスコ・ソリューション(以下、「ソリューション」)のマクロ・プロセスは、資産クラス(株式、クレジット、国債、オルタナティブ)、地域、ファクター、リスク・プレミア間の相対的なバリューとリターンの機会獲得を目指し、平均して6カ月から3年の時間軸で戦術的な資産配分の決定を行います。
要約
- 企業収益の上方修正とクレジット・スプレッドの縮小に支えられ、市場センチメントと成長期待は改善しました。
- グローバル戦術的配分モデル1では、引き続きポートフォリオのリスクをオーバーウェイトし、債券よりも株式、バリュー株、中小型株を選好しています。米国以外の先進国株式については中立に変更します。低格付けクレジットをオーバーウェイト、デュレーションを中立、米ドルをアンダーウェイトとします。インフレ連動債へのエクスポージャーを引き上げています。
マクロ・アップデート
1月の不安定なスタートから一転、2月の市場はリスク選好の動きが顕著になりました。グローバル株式は債券をアウトパフォームし、新興国市場は米国株式と肩を並べ、他の先進国市場をアウトパフォームしました。クレジット市場はソブリン債をアウトパフォームし、クレジット・スプレッドは今回のサイクルの最低水準まで縮小しました。リスク選好度の新たな高まりは、総じて好調な決算シーズンに支えられましたが、引き続き米国、日本、中国を除く新興国市場が収益予想の上方修正で先導した一方で、ユーロ圏、英国、中国は期待に反する動きとなりました。世界的な収益モメンタムは一様ではありませんが、循環的な谷の初期の兆候を示しながらも安定しています。同様の状況は先行経済指標でも明らかであり、欧州のシクリカル指標の回復を楽観視していた時期がありましたが、現段階では小休止が必要であることを示唆しています。ソリューションの世界経済のマクロ・レジーム(市場局面)は、世界経済とその主要地域の回復期を引き続き示唆しており、成長率は長期トレンドを下回りながらも、市場センチメントは改善しています(図表1~2をご参照)。このようなマクロ・レジーム認識と整合的な循環的な価格調整が資産クラス間では見られますが、年初来の株式スタイル/ファクター間の相対パフォーマンスは、クオリティや超大型株のテクノロジー企業で強いモメンタムの影響を受けて、回復期において好調が期待されるバリュー株や中小型株といった、よりリスクが高くシクリカルな銘柄群の顕著なアンダーパフォーマンスが見られます(図表3をご参照)。ソリューションでは、最近の経済データ、収益、信用状況の回復力が、中期的には、株式セクター、スタイル、ファクター全体で、よりシクリカルな価格調整につながる可能性があると考えています。従って、ソリューションのマクロ・レジームのフレームワークに基づけば、グロース株の最近のアウトパフォーマンスにはある程度の平均回帰が予想されます。一方、最近の経済の力強さによって、過去1年間のディスインフレ傾向には一服感が見られます。ソリューションのインフレ・モメンタム指標は、コモディティ価格に牽引され、欧州と米国の物価圧力がわずかに上昇していることを示しており、近い将来の利下げ期待が剥落される可能性があります(図表4をご参照)。全体として、ソリューションのルールに基づくプロセスは、現段階では市場の回復シナリオを引き続き示唆しています。このシナリオに沿ったポートフォリオのポジショニングを維持しながら、必要に応じて軌道修正するための情報が入ってくるのを待ちたいと思います。
投資ポジショニング
グローバル戦術的配分モデルでは、ベンチマーク対比のリスクをオーバーウェイトするスタンスを維持し、債券に対して株式をオーバーウェイトし、新興国市場、シクリカル・セクター、バリュー株、中小型株を選好します。米国株式と米国以外の先進国株式のアクティブ・エクスポージャーを中立化しましたが、米ドルについては引き続きアンダーウェイトとします。債券では、低格付けセクターを通じたクレジット・リスク2を高めに維持し、デュレーションは中立を維持します。一方で、一般債に対してインフレ連動債のエクスポージャーを高めにします(図表5~8をご参照)。
詳細:
- 株式では、年初来、中小型株、バリュー株のパフォーマンスが顕著に低下していますが、クオリティ、低ボラティリティ、モメンタムに対して、これらのファクター特性を引き続きオーバーウェイトしています。最近の経済データとリスク資産間(クロスアセット)の相対パフォーマンスは、依然として底堅い成長、リスク選好度の改善、成長期待を示しています。このようなマクロ的背景は、歴史的に、バリュー株や中小型株など、営業レバレッジが高く、成長期待の反発に対する感応度が高いシクリカル・ファクターに有利となっています。同様に、ヘルスケア、生活必需品、公益事業、テクノロジー株よりも、金融、資本財・サービス、素材、エネルギーなどのシクリカル・セクターへのエクスポージャーを選好します。地域的には、リスク選好度の改善と米ドル安期待に支えられ、引き続き新興国市場のオーバーウェイトを維持します。しかし、過去3カ月間の米国株に対する米国以外の先進国株のオーバーウェイト・エクスポージャーは、これまでのシクリカルなばらつきの兆候が緩和したため、中立としました。
- 債券では、債券では、ハイ・イールド債、バンクローン、新興国ハード・カレンシー債を通じ、クレジット・リスク2のオーバーウェイトを維持しています。クレジットのスプレッドは一段と縮小し、ほとんどのセクターで歴史的な低水準で推移しています。しかし、ボラティリティは引き続き抑制され、クレジット市場は安定したマクロ環境のもとで安定した利回りを提供すると予想されます。クレジット資産については、キャピタルゲインよりも国債に対するインカムの優位性に限定されます。ソブリン債については、インフレ・モメンタムに再び明るい兆しが見え始めたことから、米国と欧州の一般債よりもインフレ連動債(TIPS)へのエクスポージャーを高めました。
- 為替では、景気回復局面では通常、リフレーションによる米国以外の資産への力強いフローを伴うため、米ドルをアンダーウェイトとします。先進国市場では、ユーロ、英ポンド、ノルウェークローネ、スウェーデンクローネ、シンガポールドルを、スイスフラン、日本円、豪ドル、カナダドルに対して選好します。新興国市場では、韓国ウォン、チリペソ、タイバーツ、中国人民元などのような低利回りでバリュエーションが割高な通貨に対して、コロンビアペソ、ブラジルレアル、南アフリカランド、インドネシアルピアなど、魅力的なバリュエーションをもつ高利回り通貨を選好しますが、米ドル安シナリオではこれらの通貨が好調に推移すると予想されます。
Footnotes
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1.
ベンチマークはMSCI All Country World Index 60%とBloomberg Global Aggregate Index (Hedged) 40%で構成。
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2.
クレジット・リスクは、DTS(デュレーション×スプレッド)で計測。
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