マーケット・アップデート

米国バンクローン市場、月次アップデート 2022年4月

US Loan Market Snapshot

3月は、地政学リスクとインフレに注目が集まる中、バンクロ-ン市場は相対的に底堅く推移

地政学リスクでバンクローンの新規発行は減速するも、米国金利の先高観から需要は継続

 
3月は地政学リスクとインフレに注目が集まる中、バンクロ-ン市場は相対的に底堅く推移

 3月のバンクローン市場は小幅のプラスリターンとなりました。2月下旬から始まった不安定市場環境は3月も継続し、ウクライナ紛争とインフレのヘッドラインに振り回される展開となりましたが、バンクローン市場は月半ばには落ち着きを取り戻し、月間では+0.05%とプラスのリターンとなりました1。 ロシアのウクライナ侵攻開始から3週間でローン価格は2.21%下落したものの、他のリスク資産に比べると小幅なドローダウンでした1。3月15日以降、ローン価格は1.28%上昇して下落の多くを取り戻し、年初来では-0.10%のリターンとなりました 1 

バンクローンの3月のパフォーマンスは、引き続きハイ・イールド債と投資適格社債をアウトパフォーム

 3月のバンクローン市場は、ハイ・イールド債券や投資適格社債を大きくアウトパフォームしました。

金利上昇とマクロ経済の不確実性によって長いデュレーションを持つ資産への圧力が続き、ハイ・イールド債券および投資適格社債の3月のリターンは-0.93%、-2.64%、年初来では-4.51%、-7.74%のリターンとなりました2。ローンではBB格(+0.20%)が、B格(+0.06%)やCCC格(-0.90%)を上回り、3月後半の反発局面では低格付けが劣後しました1

ローンの平均価格は15ベーシスポイント(bps)下落し、97.65ドルとなりました3。 現在の平均価格水準では、シニア担保ローンはフォワードLIBORカーブを考慮すると7.04%の利回りを提供しています3

 

ファンダメンタルズ

インフレは依然高止まりしており、消費者心理に影響を与え始めていますが、データは依然として経済が良好に推移していることを示しています。これには安定したPMI、堅調な労働市場や個人消費が含まれます。

12ヶ月累計の額面デフォルト率は0.19%となり、過去最低のデフォルト率である0.15%をわずかに上回りました4 。80ドル以下で取引されるローンの割合は、市場全体のボラティリティが高止まりしたにもかかわらず、1.55%とわずかな上昇にとどまりました4

 

市場の需給環境

バンクローンへの需要は減速したものの引き続き強く、一方で新規供給は地政学的リスクが資本市場の活動を阻害したため、低調となりました。

CLO発行については、2月の堅調なペースから減速しました。3月の新規発行額は27件で133億ドルとなり、借り換え/条件改定案件を除くと117億ドルでした3。これにより、年初来の発行総額は101件で503億ドル(前年比53%減)で、借り換え/条件改定案件を除くと312億ドルとなりました3

個人投資家向けローン・ミューチュアル・ファンドとETFからは3月に22億ドルの資金流入がありました。16ヶ月連続の資金流入となり、同期間における資金流入額は656億ドルに達しました3。年初来での資金流入額は187億ドルとなりました3

3月のローン新規発行はボラティリティが高まる中で非常に低調となりました。3月の新規発行額は216億ドル(20ヶ月ぶりの低水準)で、借り換え案件(13億ドル)を除いた新規発行額は203億ドルでした。3月中の総発行量の99%はSOFRベースでの発行でした3。年初来の発行総額は1,205億ドル、ネットでは842億ドルで、それぞれ前年比で60%減、10%増となりました。

相対価値/市場機会

金利上昇局面におけるバンクローン

 ウクライナ紛争がもたらした主な影響はインフレ圧力の高まりと短期金利の急上昇の二つですが、後者はFRBがより積極的にインフレに対抗するという思惑が強まったためです。例えばLIBOR3ヶ月物は利上げ期待の高まりで3月に0.50%から0.96%に上昇しました。バンクローンは変動金利であるため、投資家は金利上昇から恩恵を得ることができます。さらにローンの発行体は、投入コストの上昇と債務返済コストの上昇を十分吸収できる状況で、インフレ率や金利の上昇時期を迎えます。下の図表1に示すように、ローンの発行体は概してパンデミック前の水準を上回る利益率を獲得しており、インタレスト・カバレッジ・レシオは支払利息の増加や利益の減少に対して十分なバッファ-があります。マクロ面での不確実性が続いているにもかかわらず、不良債権化するローンの割合が非常に低いのは、市場全体におけるローン発行体の強固な財務内容が主な背景です。

図表1:利益水準とインタレスト・カバレッジ・レシオは健全な水準
        
図表2:短いデュレーションと高いインカム収入を提供するバンクローン        
相対利回り
  1. S&P/LSTAレバレッジド・ローン指数。2022年3月31日現在。
  2. S&P/LSTAレバレッジド・ローン指数ならびにブルームバーグ2022年3月31日現在。投資適格社債はBAML投資適格社債指数、ハイ・イールド債券はBAML米国ハイ・イールド債券指数。
  3. JPモルガン。2022年3月31日現在。
  4. S&P LCD。2022年3月31日現在。
 

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