マーケット・アップデート

米国バンクローン市場、月次アップデート 2022年7月

US Loan Market Snapshot
6月は、利上げによる影響が引き続き懸念され、バンクロ-ン市場はやや下落
利上げが継続するなかで、バンクローンの相対価値に魅力
 
6月は、利上げによる影響が引き続き懸念され、バンクロ-ン市場はやや下落

 6月のバンクローン市場は-2.16%のリターン(年初来で-4.55%)となりました1 。インフレ、金融引き締め、成長懸念などが市場でのリスクオフのセンチメントを助長しました。ローン価格の下落は全体的に見られ、業種によるばらつきは限定的でした。すべてのセクターがマイナスリターンとなり、最もパフォーマンスの高いセクターと最も低いセクターの差はわずか270ベーシス・ポイントでした1 。不確実性の高まりから当資産クラスへの需要が低下したことで、企業が新規発行を手控え、新規発行額は減少しました。

バンクローンの6月のパフォーマンスは、ハイ・イールド債と投資適格社債をアウトパフォーム

 ハイ・イールド債と投資適格債は6月にそれぞれ-6.81%と-2.35%のリターンとなり、バンクローンをアンダーパフォームしました。年初来では、バンクローンはハイ・イールド債の-14.04%、投資適格債の-13.93%を大きく上回っています2 。バンクローンの中では、6月のトータルリターンでBB格(-1.77%)がB格(-2.30%)とCCC格(-3.49%)を上回りました。格付別のリターン格差は5月より若干縮小したものの、引き続き高格付が上回りました。ローン市場の平均価格は231ベーシスポイント(bps)下落し、92.45となりました3 。現在のバンクローンの平均価格は、市場で織り込まれているフォワードLIBORカーブを前提とすると、9.70%の利回り水準となります。

 

図表1:インプライド・デフォルト率と過去の実際のデフォルト率の推移

ファンダメンタルズ

6月の経済指標は引き続き軟化し、シティ・サプライズ指数での予想を大幅に下回る結果となりました。個人消費と雇用については、当初は軟化の兆しを見せていたものの、金融環境が大幅に引き締められる中で底堅く推移しました。

2022年第2四半期のバンクローン市場での倒産(レブロン)により、12ヶ月累計のデフォルト率は0.28%とわずかに上昇しましたが、当面のデフォルト率は低位に留まると考えます。市場のボラティリティが高まる中で、80ドル以下で取引されるローンの割合は168bps増の3.65%になりました。

 

市場の需給環境

6月は個人投資家の資金流出が続く中、新規供給は限定的でした。CLOは引き続き組成されていますが、セカンダリー市場に大きな需給面での支援を与えるまでには至りませんでした。

CLOの新規発行については市場のボラティリティが高まる中で底堅く推移し、6月には31案件で133億ドル(借り換え/条件改定案件を除くと130億ドル)の発行となりました。これにより、年初来累計の発行総額は193案件で838億ドルとなり、借り換え/条件改定案件を除くと720億ドルとなりました3

個人投資家向けローン・ミューチュアル・ファンドとETFからは2ヶ月連続で資金流出となりました。6月には41億ドルの資金がこの資産クラスから流出し、年初来累計の資金流入額は165億ドルに減少しました3

6月のローン新規発行は低調となりました。5月の新規発行額は163億ドル(借り換え案件を除くと133億ドル、条件改定案件は4カ月連続なし)で、過去2年で最低となりました。6月の新規発行額のほぼ100%はSOFR(Secured Overnight Financing Rate)ベースのものでした3。年初来累計の新規発行額は1,810億ドル、借り換え/条件改定案件を除くと1,251億ドルと、それぞれ前年比63%減、34%減となりました3

 

相対価値/市場機会

金利上昇局面におけるバンクローン

 経済が減速の兆しを見せて、市場の需給環境が緩む中でローン価格は下落しましたが、過去のリスクオフの局面で観察されたエピソードは示唆に富んでいます。バンクローン市場は、不確実性が高まる時にはこれまで何度もデフォルトリスクを過度に織り込みました。前頁図表1に示すように、ローンはしばしば、最終的に実現するデフォルト率をはるかに超える水準のデフォルト率を織り込んだ利回りを投資家に提供します。このような混乱は、これまでこの資産クラスの長期投資家が優れたトータル・リターンを得る機会を生み出してきました。また、ローンは、今後上昇するLIBORをクーポンとして享受し、あわせて資本構造における優先といった防御性も提供し続けると思われます。

 

図表2:短いデュレーションと高いインカム収入を提供するバンクローン             
相対利回り
 
  1. S&P/LSTAレバレッジド・ローン指数。2022年6月30日現在
  2. S&P/LSTAレバレッジド・ローン指数ならびにブルームバーグ。2022年6月30日現在。
    投資適格社債はBAML投資適格社債指数、ハイ・イールド債券はBAML米国ハイ・イールド債券指数。
  3. JPモルガン。2022年6月30日現在。
  4. S&P LCD。2022年6月30日現在。
 

ご利用上のご注意

当資料は情報提供を目的として、インベスコ・アセット・マネジメント株式会社(以下、「当社」)が当社グループの運用プロフェッショナルが日本語で作成したものあるいは、英文で作成した資料を抄訳し、要旨の追加などを含む編集を行ったものであり、法令に基づく開示書類でも金融商品取引契約の締結の勧誘資料でもありません。抄訳には正確を期していますが、必ずしも完全性を当社が保証するものではありません。また、抄訳において、原資料の趣旨を必ずしもすべて反映した内容になっていない場合があります。また、当資料は信頼できる情報に基づいて作成されたものですが、その情報の確実性あるいは完結性を表明するものではありません。当資料に記載されている内容は既に変更されている場合があり、また、予告なく変更される場合があります。当資料には将来の市場の見通し等に関する記述が含まれている場合がありますが、それらは資料作成時における作成者の見解であり、将来の動向や成果を保証するものではありません。また、当資料に示す見解は、インベスコの他の運用チームの見解と異なる場合があります。過去のパフォーマンスや動向は将来の収益や成果を保証するものではありません。当社の事前の承認なく、当資料の一部または全部を使用、複製、転用、配布等することを禁じます。

G2022-07-005

そのほかの投資関連情報はこちらをご覧ください。https://www.invesco.com/jp/ja/institutional/insights.html