米国バンクローン市場、月次アップデート 2022年6月
5月は、利上げによる影響が懸念される中、バンクロ-ン市場もやや下落
利上げが継続するなかで、バンクローンの相対価値に魅力
5月は、利上げによる影響が懸念される中、バンクロ-ン市場もやや下落
5月のバンクローン市場は-2.56%のリターンとなりました 1 。 今年に入ってから株式市場や広範なクレジット市場に数々の懸念が広がる中で、バンクローン市場はこれまで底堅く推移してきましたが、5月は、金利上昇、インフレ動向、サプライチェーンの混乱、労働力不足、成長期待の後退などに対する投資家の不安からセンチメントが悪化して、ローン価格は低下しました。投資家は、これまでよりも景気リスクへの脆弱性を判断して発行体を選別するようになり、パフォーマンスのばらつきが大きくなりました。その後、バンクローン市場は5月25日に付けた市場の安値から部分的に回復して、ポジティブなトーンで5月末を迎えました。
バンクローンの5月のパフォーマンスは、ハイ・イールド債と投資適格社債をアンダーパフォーム
5月のバンクローンのリターンは、ハイ・イールド債券(0.27%)、投資適格社債(-0.55%)を下回りました。年初来では、ハイ・イールド債券の(-7.76%)、投資適格債の(-11.86%)に対し、2.45%とアウトパフォームしています 2 。バンクローンの中では、BB格(-1.77%)とB格(-2.85%)はともにCCC格(-3.87%)をアウトパフォームしました。ローン市場の平均価格は2.69ドル低下し、94.76ドルとなりました。現在のバンクローンの平均価格は、市場で織り込まれているフォワードLIBORカーブを前提とすると、8.46%の利回り水準となります 3 。
ファンダメンタルズ
5月の経済指標は軟調となり、シティ・サプライズ指数では広い範囲で予想を下回りました。しかし、消費と雇用の指標はよく持ちこたえており、経済のファンダメンタルズは、急速に軟化する指標が示唆するよりも良好です。
2022年最初のローン市場のデフォルト(注:タレン・エナジー)が発生し、12ヶ月累計の額面加重デフォルト率はわずかに上昇して0.21%となりました4 。80ドル未満で取引されるローンの割合は、市場が不安定な中、37bps上昇して1.97%となりましたが、低水準に留まっています。
市場の需給環境
5月は供給が抑えられたものの、リテールからの資金流出によりローンに対する需要が弱まり、セカンダリー市場での価格の下支え要因が減少しました。
CLO発行については、CLOの組成は4月のペースから減少し、5月には29案件で137億ドル(借り換え/条件改定案件を除くと135億ドル)の発行となりました3 。これにより、累計の発行総額は162案件で805億ドル(前年比53%減)となり、借り換え/条件改定案件を除くと591億ドルとなりました3 。
個人投資家向けローン・ミューチュアル・ファンドとETFからは18ヶ月ぶりに資金流出(-28億ドル)となり、年初来では217億ドルの資金流入となりました3 。
5月のローン新規発行は低調でした。5月のグロスの新規発行額は173億ドル(借り換え/条件改定案件を除くと117億ドル)で、過去22カ月で最低となりました3 。5月の新規発行額のほぼ100%は、SOFR(Secured Overnight Financing Rate)ベースのものでした3 。年初来のグロスの新規発行額は1,647億ドル、ネットの新規発行高は1,117億ドルと、それぞれ前年比61%減、26%減となりました3 。
相対価値/市場機会
金利上昇局面におけるバンクローン
ハイ・イールド債券の年初来のリターンはバンクローンをアンダーパフォームしているにもかかわらず、図表1に示すように、バンクローンの利回りは過去にないほど大きく上回っています。これは主にLIBORカーブの傾きを反映しており、連邦準備制度理事会(FRB)が金融引き締めを進める中で、当面はローン・クーポンの上昇が続くと予想されます。利回りの高さに加えて、発行体の資本構造におけるローンのシニア性は、経済成長の減速の可能性に対しても、価格のダウンサイドの抑制が期待されます。
- S&P/LSTAレバレッジド・ローン指数。2022年5月31日現在。
- S&P/LSTAレバレッジド・ローン指数ならびにブルームバーグ。2022年5月31日現在。
投資適格社債はBAML投資適格社債指数、ハイ・イールド債券はBAML米国ハイ・イールド債券指数。 - JPモルガン。2022年5月31日現在。
- S&P LCD。2022年5月31日現在。
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