米国バンクローン市場、月次アップデート 2023年4月
3月のバンクロ-ン市場は他のリスク資産が下落するも相対的に底堅く推移
バンクローンの相対価値に魅力
3月のバンクロ-ン市場は相対的に底堅く推移
3月のバンクローン市場は-0.03%のリターンとなり、年初来でのトータルリターンは+3.23%になりました1。銀行セクターで突然発生したストレスはリスク市場に衝撃を与え、投資家は経済見通しを見直すことになりました。規模の小さい銀行の信用危機を食い止めるために政府が迅速に対応したことで銀行破綻の影響は抑えられましたが、融資活動の低下懸念が台頭してリスクオフのセンチメントとなり、投資家は金利の見通しを下方に修正しました。資本市場の活動は混乱の中で停滞しましたが、ローン市場は秩序正しく機能し続けました。ローン市場は、3月13日から15日の3日間に-1.10%の下落があった以外は、リスク市場の変動が大きい中で値動きが相対的に小さく、月末までに月半ばまでの下げをおおよそ回復しました。月次リターンの内訳は、価格リターンが-0.77%、金利リターンが+0.74%となりました。
3月のローンのリターンは、ハイ・イールド債(+1.08%)、投資適格債(+2.95%)を下回りました2。年初来で、ハイ・イールド債の+3.68%、投資適格債の+3.61%をやや下回りました。格付別のリターンは、BB格(-0.03%)、B格(+0.12%)、CCC格(-1.97%)となりました。ローン市場の平均価格は75ベーシスポイント(bps)下落し、93.77となりました3。現在の平均価格を踏まえると、ローンはフォワードLIBORカーブを含めて9.98%のイールドとなります3。
ファンダメンタルズ
インフレ率が高止まりしていることから、追加的な金融引き締めとして米連邦準備制度理事会(FRB)は3月に0.25%の追加利上げを実施しました。しかし、銀行セクターの混乱で経済成長が減速するとの思惑から、インフレ期待は低下しました。
Diamond Sports Group、Loyalty Ventures、Catalina Marketingのデフォルトにより、3月の12ヵ月累計の額面デフォルト率は1.32%に上昇しました4。 一方、80ドル未満で取引されるローンの割合は、5.4%から6.3%に上昇しました4 。
市場の需給環境
リテールからの資金流出や景気後退懸念にもかかわらず、3月はCLOの堅調な新規発行とバンクローンの限定的な新規発行によって、ローン市場は需給面で支えられました。
金融市場が変動するなかで、3月のCLOの新規発行は堅調なものとなりました。CLO新規発行量は26案件で113億ドルとなり、年初来では78案件で339億ドルとなりました3。
個人投資家向けローン・ミューチュアル・ファンドとETFからは、11ヶ月連続で資金流出となりました。3月には44億ドルの資金がこの資産クラスから流出し、年初来での流出額は93億ドルになりました3。
3月のローンの新規発行は抑制され、発行総額は174億ドルに減少しました。借換案件は100億ドル、条件改定案件は30億ドルとなり、これらが大半を占めました。月半ば以降は組成が手控えられ、新規発行は停滞しました3 。
相対価値/市場機会
高い利回りを提供するバンクローン
信用収縮への懸念が成長率やインフレ率の見通しに影響を与えたため、今後の金利見通しが大きく低下しました。このような金利見通しの調整にもかかわらず、図1に示すように、ローン市場とハイ・イールド市場の信用度の違いを調整すると、図1に示すように、ローンの利回りはより魅力的です。さらに、利上げのピークとなる金利水準が低下し、また、利下げのペースが速まるといった期待が高まれば、金利支払い後のキャッシュフローの改善見通しを通じて、ローン市場の最も脆弱な発行体に対しても下支えとなります。流動性へのアクセスという点では、ローン市場における破綻銀行や統合銀行の直接的なエクスポージャーは非常に限定的です。一部の発行体は貸出枠を通じた流動性供給を地銀に依存していますが、3月に破綻した4行の貸出枠は市場における貸出枠総合計の2.5%未満です。
- Morningstar/LSTAレバレッジド・ローン指数。2023年3月31日現在。
- Morningstar/LSTAレバレッジド・ローン指数ならびにブルームバーグ。2023年3月31日現在。
投資適格社債はBAML投資適格社債指数、ハイ・イールド債券はBAML米国ハイ・イールド債券指数。 - JPモルガン。2023年3月31日現在。
- Pitchbook LCD。2023年3月31日現在。
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