マーケット・アップデート

米国バンクローン市場、月次アップデート 2023年12月

US Loan Market Snapshot
11月のバンクロ-ン市場は、利上げ打ち止めの思惑が広がる中で堅調に推移

バンクローンの相対価値に魅力
 
11月のバンクロ-ン市場は堅調に推移

 11月のバンクローン市場は月間で+1.19%のリターンとなり、年初来のリターンは+11.26%となりました1。インフレ率が鈍化する中で米連邦準備制度理事会(FRB)が政策金利の引き上げを終了したとの楽観が広がり、当月は債券とリスク資産が上昇しました。価格リターンが月間で+0.4%となる一方で、金利リターンは+0.80%となりました。堅調な市場環境は借換や条件改定(満期延長)の案件を促しましたが、買収案件は限定的でした。

 10年物米国債金利が4.93%から4.33%に低下し、11月のバンクローンのリターンは、ハイ・イールド債(+4.58%)と投資適格債(+5.97%)を下回りました2。年初来では、ハイ・イールド債の+9.46%、投資適格債の+4.12%を上回りました。格付別のリターンは、BB格(+1.14%)、B格(+1.35%)、CCC格(+0.38%)となりました。ローン市場の平均価格は40ベーシスポイント(bps)上昇し、94.52となりました3。現在の平均価格を踏まえると、ローンはフォワードカーブを含めて9.78%のイールドとなります3

 

ファンダメンタルズ

11月の経済データで最も注目されたのは、直近のインフレ動向が経済成長の減速を示唆したことです。また、足元での経済成長は、第3四半期のGDP成長率5.2%という目覚ましい数字に比べて鈍化が見られるものの、底堅さを示しています。

新たなデフォルトは1件(CBS Radio)発生し、11月の12ヵ月累計の額面デフォルト率は1.36%から1.48%に上昇しました4。また、80ドル未満で取引されるローンの割合は5.12%から5.34%にやや上昇しました4

 

市場の需給環境

需給面では、良好なマクロ・センチメント、限定的な新規発行、CLO新規発行の増加がプラス材料となりました。

11月のCLOの新規発行は46案件で194億ドル(うち借換案件は43億ドル)、年初来では295案件で1,264億ドル(うち借換案件は157億ドル)となりました3

個人投資家向けローン・ミューチュアル・ファンドとETFからは、9億ドルの資金流出となり、年初来での流出額は178億ドルとなりました3

11月のローンの新規発行は先月より12%低下して279億ドルとなりました。内訳は、借換案件(193億ドル)、買収案件(60億ドル)、条件改定案件(16億ドル)などとなり、借換/条件改定案件を除いた新規発行額は70億ドルでした。年初来累計の新規発行額は3,176億ドル、借換/条件改定案件を除くと757億ドルとなりました3

 

投資機会

 イスラエルとハマスの紛争が局地的なものにとどまっていることで、11月は地政学的な混乱への投資家の懸念は薄れました。エスカレートするリスクがありますが、今のところややゴルディロックス的なマクロ環境が続いています。力強いが減速しつつある経済、低下しているインフレ率を踏まえると、2024年には現在のピークから(急激ではなく)緩やかに利下げされることが見込まれます。金利の上昇によってローン投資家のクーポン収入が増える一方、堅調な経済成長が企業利益を支えています。ちなみに、11月のローンの金利リターンは+0.80%で、年率換算では+9.60%(ハイ・イールド債は年率+6.72%5)でした1。ローンにおける非常に高い水準のインカムは2023年の年初来トータル・リターンの原動力となり、その80%超を占めていますが、2024年も同様のリターンを生む追い風が吹く可能性が高まっています。

図表1:中央銀行は追加的な利上げの後、利下げ転換ではなく、しばらくは高い水準を維持することを示唆
図表2:短いデュレーションと高いインカム収入を提供するバンクローン
相対利回り
  • 1.

    クレディスイス・レバレッジド・ローン指数。2023年11月30日現在。

  • 2.

    クレディスイス・レバレッジド・ローン指数ならびにブルームバーグ。2023年11月30日現在。投資適格社債はBAML投資適格社債指数、ハイ・イールド債券はBAML米国ハイ・イールド債券指数。

  • 3.

    JPモルガン。2023年11月30日現在。

  • 4.

    Pitchbook LCD。2023年11月30日現在。

  • 5.

    ブルームバーグ。2023年11月30日現在。ハイ・イールド債券はBAML米国ハイ・イールド債券指数。

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