米国バンクローン市場、月次アップデート 2023年1月
12月のバンクロ-ン市場は、相対的に高めのインカムが寄与し、概ね底堅く推移
バンクローンの相対価値に魅力
12月のバンクロ-ン市場は概ね底堅く推移
12月のバンクローン市場は+0.44%のリターン(年初来で-0.60%)となりました1 。年間リターンがマイナスとなったのはローンでは稀(2008年と2015年のみ)ですが、年間でより深刻なダメージを受けた他のリスク資産クラスと比べると非常に対照的です。2022年は何か月もインフレ懸念に影響されましたが、年末にかけては2ヵ月連続でのインフレ下振れというサプライズで幕を閉じました。投資家は、中央銀行のタカ派的なコメントが続く中で、こうした好材料とのバランスを取るのに戸惑いました。月次リターンの内訳は、価格リターンが-0.28%、金利リターンが+0.73%でした。12月のクーポンからのリターンは年率8.76%となり、2022年1月の年率4.04%の倍以上となりました。
12月のローンのリターンは、ハイ・イールド債(-0.71%)、投資適格債(-0.34%)を上回りました2。年初来では、ハイ・イールド債の-11.09%、投資適格債の-15.71%を大幅に上回りました。ローンのBB格(+0.82%)は、B格(+0.38%)とCCC格(-0.86%)を上回りました。ローン市場の平均価格は26ベーシスポイント(bps)下落し、92.82となりました³。現在の平均価格を踏まえると、ローンはフォワードLIBORカーブを含めて10.83%のイールドとなります3。
ファンダメンタルズ
インフレ率は、物価上昇の様々な指標がピークを迎えたと見られ、再び予想を下回る結果となりました。しかし、米連邦準備制度理事会(FRB)は、政策金利がさらに上昇することを示唆しました。労働市場が堅調であることや、時期尚早な金融緩和によってこれまでのインフレ抑制の進展が阻害されることを避けるためです。
新たな債務不履行や倒産がなかったため、12月の12ヶ月累計の額面デフォルト率は0.73%から0.72%に低下しました。一方、80ドル以下で取引されるローンの割合は、12月に7.28%から7.36%に上昇しました4。
市場の需給環境
12月は、この季節に典型的ですが、需給環境は落ち着いた動きとなりました。
12月の CLO 新規発行量は、12案件で51 億ドル(借り換え/条件改定を除くと47億ドル)の発行となりました。これにより、年初来累計の発行総額は323案件で1,496億ドルとなり、借り換え/条件改定案件を除くと1,275億ドルとなりました3。
個人投資家向けローン・ミューチュアル・ファンドとETFからは、8ヶ月連続で資金流出となりました。12月には36億ドルの資金がこの資産クラスから流出し、年初来累計の資金流出額は114億ドルとなりました3。
12月のローン新規発行は165 億ドルと、年末にかけて低迷しました。累計の発行総額は2,525億ドル、純発行額は1,631億ドルで、それぞれ前年比70%、60%減となりました3。
相対価値/市場機会
高い利回りを提供するバンクローン
ローンは年初来、他のクレジット資産をアウトパフォームしていますが、この資産クラスは現在の価格水準でまだ魅力的な価値を提供しています。ローン価格は、経済や企業収益といったファンダメンタルズの大幅な悪化を織り込んでおり、実際、図1に示すように現在7.6%超のインプライド・デフォルト率を示唆しています。ローン価格がいつどこで底を打つかを予測することは不可能ですが、過去の市場混乱期には、最終的に実現したデフォルト率と比べると、市場は何度も過剰に調整してきました。フォワードLIBORカーブを含む3年償還前提の利回り10.83%は、ローン投資家のとるクレジット・リスクが十分に報われる水準と考えます。
歴史的に見ると、ローンが現在の92.82ドルに近い価格で取引された場合、フォワード12ヶ月リターンは平均9.5-10.5%でした。これはローンのリターン予測ではなく、市場の混乱期にローンに資金を投下した長期投資家が、これまで典型的に得てきたリターンを示しています。
- Morningstar/LSTAレバレッジド・ローン指数。2022年12月31日現在。
- Morningstar/LSTAレバレッジド・ローン指数ならびにブルームバーグ。2022年12月31日現在。
投資適格社債はBAML投資適格社債指数、ハイ・イールド債券はBAML米国ハイ・イールド債券指数。 - JPモルガン。2022年12月31日現在。
- Pitchbook LCD。2022年12月31日現在。
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