米国バンクローン市場、月次アップデート 2023年5月
4月のバンクロ-ン市場は概ね堅調に推移
バンクローンの相対価値に魅力
4月のバンクロ-ン市場は概ね堅調に推移
4月のバンクローン市場は+1.05%のリターンとなり、年初来でのトータルリターンは+4.31%になりました1。月次リターンの内訳は、価格リターンが+0.31%、金利リターンが+0.74%となりました。地銀に対する懸念が和らぎ、第1四半期の決算シーズンが好スタートを切ったことから、リスク市場全体のセンチメントは改善しました。ローン取引は堅調に推移して借り換えのために新規発行を行う発行体が増え、案件はおおむね好意的に受け止められました。M&AやLBOの動きが鈍い中で借り換えなどを除いた新規発行が依然として抑制されているため、リテールからの資金流出の継続やCLOの組成の減速が見られたものの、市場の需給環境に大きな変化は見られませんでした。
4月のローンのリターンは、ハイ・イールド債(+0.93%)、投資適格債(+0.79%)を下回りました2。年初来で、ハイ・イールド債の+4.65%、投資適格債の+4.42%をやや下回りました。格付別のリターンは、BB格(+0.86%)、B格(+1.15%)、CCC格(+1.48%)となりました。ローン市場の平均価格は26ベーシスポイント(bps)上昇し、94.03となりました3。現在の平均価格を踏まえると、ローンはフォワードLIBORカーブを含めて9.76%のイールドとなります3。
ファンダメンタルズ
第1四半期のGDPは年率1.1%と予想を下回りましたが、貿易と在庫を除いた需要は3.2%と良好でした。インフレ率は、FRBの目標値を大幅に上回る水準が継続しています。
National CineMediaのデフォルトがありましたが、4月の12ヵ月累計の額面デフォルト率は1.31%とほぼ横ばいでした4。また、80ドル未満で取引されるローンの割合も6.2%とほぼ横ばいとなりました4。
市場の需給環境
CLOの新規発行が減少し、リテールからの資金流出が続きましたが、ローンの新規発行が抑制されているため需給環境に大きな影響はありませんでした。
4月のCLOの新規発行は、市場のボラティリティが低下したにもかかわらず減速しました。CLOの新規発行量は12案件で51億ドルとなり、年初来では91案件で394億ドルとなりました3。
個人投資家向けローン・ミューチュアル・ファンドとETFからは、12ヵ月連続で資金流出となりました。4月には20億ドルの資金がこの資産クラスから流出し、年初来での流出額は130億ドルになりました3。
4月のローンの新規発行は190億ドルとなり、やや増加しました。借換案件は145億ドルで新規発行の大半を占め、借換/条件改定案件を除いた新規発行額は45億ドルでした。年初来累計の新規発行額は893億ドル、借換/条件改定案件を除くと185億ドルと、それぞれ前年比39%減、82%減となりました3。
相対価値/市場機会
高い利回りを提供するバンクローン
FRBが利上げサイクルの終わりに近づいているとの期待が高まる中、これがローンのリターンにどのような意味を持つのか考えるのは自然なことです。歴史的に見ると、図1に示すように、FRBが利上げを停止した後のローンのリターンは非常に良好でした。さらに、現在のフォワード・カーブは、2023年の残りの期間における金利の緩やかな低下を示唆していますが、その場合、ローンの変動金利のクーポンは当面の間、高い水準に保たれることになります。ローンの金利デュレーション(金利感応度)は非常に低いため、バンクローン価格は金利の変動からの影響を殆ど受けません。重要な留意点として、インフレ率が依然として高いことから、経済成長が鈍化すればFRBはすぐさま利下げに転じるだろうという見方には不確実性がありますが、結果的にローンは金融政策の動向に関わらず、相対的に高い利回りを維持すると思われます。
- Morningstar/LSTAレバレッジド・ローン指数。2023年4月30日現在。
- Morningstar/LSTAレバレッジド・ローン指数ならびにブルームバーグ。2023年4月30日現在。
投資適格社債はBAML投資適格社債指数、ハイ・イールド債券はBAML米国ハイ・イールド債券指数。 - JPモルガン。2023年4月30日現在。
- Pitchbook LCD。2023年4月30日現在。
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