マーケット・アップデート

米国バンクローン市場、月次アップデート 2024年2月

US Loan Market Snapshot
1月のバンクロ-ン市場は、低格付けのローンが相対的に堅調に推移

バンクローンの相対価値に魅力

 

1月のバンクロ-ン市場は、借換案件や条件改定案件が増加

 1月のバンクローン市場は月間で+0.78%のリターンとなりました1。良好な市場センチメント、低水準の新規発行、堅調なCLOからの需要といった状況を踏まえ、発行体が資本コストの引き下げや期日の延長を図ったことで、今月は借換案件や条件改定案件が増加しました。このような環境において、オーバー・パーのローンが軟調に推移する一方で、低価格のローンが堅調に推移しました。結果的には、月間の価格リターンは-0.10%となり、金利リターンは+0.90%となりました。

1月のバンクローンのリターンは、ハイ・イールド債(+0.02%)と投資適格債(+0.15%)を上回りました2。格付別のリターンは、BB格(+0.57%)、B格(+0.80%)、CCC格(+2.23%)となりました。ローン市場の平均価格は月末で95.51となりましたが、現在の平均価格を踏まえると、ローンはフォワードカーブを含めて9.04%のイールドとなります3

 

ファンダメンタルズ

インフレ率が低下を続けるなかで、雇用と消費が底堅く推移してリセッション懸念は後退しましたが、金融緩和のタイミングは依然不透明な状況です。

新たなデフォルトは1件(Careismatic Brands)発生し、12ヵ月累計の額面デフォルト率は1.53%から1.47%に低下しました4。また、80ドル未満で取引されるローンの割合は4.54%から3.80%に低下しました4

 

市場の需給環境

良好な需給環境がローン価格を下支えしました。CLOの堅調な新規発行やバンクローンの抑制された新規発行水準などが主な背景です。一方、借換案件と条件改定案件が急増したことで、パー近辺の価格帯のローンは軟調に推移しました。

1月(通常は動きが少ない月)のCLOの新規発行は40案件で169億ドル(うち借換案件とリセット案件は44億ドル)となりました3。CLOノートのスプレッドが縮小する中で借換案件/リセット案件の増加が2023年下半期に見られましたが、現在では幅広いビンテージのCLOがこういった取引を検討しています。

個人投資家向けローン・ミューチュアル・ファンドとETFからは、1億ドルの資金流入となりました3

1月のローンの新規発行は、ここ数か月の価格上昇を条件改定などの好機ととらえる発行体が増えて1,361億ドルとなりました。内訳は、借換案件(514億ドル)、条件改定案件(747億ドル)となり、借換/条件改定案件を除いた新規発行額は100億ドルでした3

 

投資機会

 月初には市場の40%以上のローンがオーバー・パーとなり、市場環境が良好なうちに条件改定を行おうとする案件が急増しましたが、月末にはオーバー・パーのローンは13%まで減少しました。図表1に示すように、オーバー・パーのローン比率が減少したことで、今後の条件改定案件は大きく減少すると思われます。バンクローン市場全体のSOFRに対するスプレッドは月間で3.98%1 程度で安定しており、条件改定案件の増加による影響は限定的でした。また、基準金利も安定していたことで、バンクローン指数のクーポンは9.33%程度で推移しました。強い経済指標やFRB高官のコメントが月末に出たことで3月のFRB利下げの可能性が低下しており、政策金利の引き下げはやや先になると思われます。基準金利の高止まり、企業業績を下支えする堅調な経済、そして図表2に示したハイ・イールド債券に対するローンのイールドの優位性といったことなどが、2024年におけるローン投資の支援材料になると思われます。

図表1:オーバー・パーのローン比率が減少
図表2:ローンのイールドはハイイールド債券を大きく超過
相対利回り
  • 1.

    クレディスイス・レバレッジド・ローン指数。2024年1月31日現在。

  • 2.

    クレディスイス・レバレッジド・ローン指数ならびにブルームバーグ。2024年1月31日現在。投資適格社債はBAML投資適格社債指数、ハイ・イールド債券はBAML米国ハイ・イールド債券指数。

  • 3.

    JPモルガン。2024年1月31日現在。

  • 4.

    Pitchbook LCD。2024年1月31日現在。

  • 5.

    ブルームバーグ。2024年1月2日現在。ハイ・イールド債券はBAML米国ハイ・イールド債券指数。

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