米国バンクローン市場、月次アップデート 2025年8月
.jpg)
7月のバンクロ-ン市場は、関税を巡る不透明感が後退して堅調に推移
7月のバンクローン市場動向
当月のバンクローン市場は月間で+0.82%、年初来で+3.81%のリターンとなりました¹。また、月間の価格リターンは+0.14%、金利リターンは+0.68%となりました¹。
当月は目立ったボラティリティはなく、良好なリスク環境が続きました。こうした環境下、新規発行額は月間で2,000億ドルを超え、今年1月に記録した単月の過去最高額を上回りました²。中旬には額面がパー(100)を上回るローンの割合が市場全体の59%へ拡大し、2月以降では最も高い水準となりましたが、月末時点では47%となっています。
当月のバンクローンのリターンは、ハイ・イールド債(+0.45%)と投資適格社債(+0.07%)を上回りました3。格付別のリターンは、BB格(+0.53%)、B格(+0.86%)、CCC格(+0.37%)となりました¹。ローン市場の平均価格は、月末時点で96.71となり、前月末(96.48)から上昇しました¹。
現在の平均価格を踏まえると、ローンはフォワードカーブを含めて8.08%のイールドとなります¹。
ファンダメンタルズ
- 債券および株式市場は、経済の不確実性が高まる中でも引き続き堅調に推移しています。個人消費は予想をやや下回っており、最近の雇用統計では採用ペースの鈍化が示されています。7月下旬、米連邦準備制度理事会(FRB)はフェデラルファンド金利を4.25%〜4.50%に据え置く決定を下しましたが、市場では9月に0.25%の利下げが予想されています。関税も引き続き注目されており、現在の推定関税率は10%台半ばで、トランプ大統領は7月末に60以上の貿易相手国に対して関税引き上げを正式に発表しました。特に、米国はEUに対して15%の基本関税を導入しました。
- 12ヵ月累計の額面デフォルト率は、前月の1.11%から変化なく横ばいとなりました4。なお、Oxea Groupのデフォルトは、12か月の計算対象から除外されました4。80ドル未満で取引されるローンの割合は、前月の3.06%から低下して2.83%となりました4。法廷外での債務再編や債務不履行を含めると、デフォルト率(発行体ベース)は小幅に上昇して4.56%となりました4。
市場の需給環境
- 7月は過半数のローンが額面以上で取引され、CLOの発行が急増したほか、ローンの返済も回復しました。新規供給は増加していますが、リプライシングやリファイナンスが中心であり、それらを除いた純増は引き続き抑制されています。需給の不均衡は続いており、借り手有利な状況が継続しています
- CLOの発行総額は、6月(72案件で441億ドル)から22%増加し、115案件で539億ドル(うち、リファイアンス案件とリセット案件が299億ドル)となりました2。
- 個人投資家向けローン・ミューチュアル・ファンドとETFは、7月に総額25億ドル(うち、前者から3.44億ドル、後者から210万ドル)の資金流入となりました2。3か月連続で資金流出が続いた後は、緩やかですが、3か月連続で流入超となっています。ローン・ミューチュアル・ファンドは、3月と4月に発生した資金流出の36%を回復しています2。
- 7月のローンの発行総額は2,024億ドルに達し、前月の662億ドルから大幅に増加し、2010年以降の7月の月間平均(396億ドル)と比べても非常に高い水準でした2。新規発行の内訳としては、リプライシング案件(1,505億ドル)、リファイナンス案件(376億ドル)が中心となり、買収案件(72億ドル)、配当リキャップ案件(52億ドル)、一般目的案件(17億ドル)が続きました2。
投資機会
4月は米国の相互関税の発表によって、当市場でもボラティリティが拡大しましたが、5月以降は回復基調が続いています。7月には次頁の図1で示している通り、過去最高の月間発行額を記録しました2。組成されたローンの大部分はリプライシングによるものでしたが、リファイナンス関連の発行も過去5か月で最高水準となりました2。M&A向け新規発行も、2024年比で年初来ベースで30%増加しています2。ただ、発行量は依然としてこの資産クラスに対する需要に追いついておらず、ローン市場では良好な需給環境が維持されています。


G2025-08-012
そのほかの投資関連情報はこちらをご覧ください。https://www.invesco.com/jp/ja/institutional/insights.html