マーケット・アップデート
米国バンクローン市場、月次アップデート 2025年5月
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4月のバンクロ-ン市場は、トランプ政権の関税政策でややマイナス・リターン
4月のバンクローン市場動向
4月のバンクローン市場は月間で-0.07%、年初来で+0.55%のリターンとなりました1。また、月間の価格リターンは-0.75%、金利リターンは+0.68%となりました1。
2025年4月2日、トランプ大統領が解放の日(Liberation Day)として米国が世界中に広範な関税を課すと発表したことを受け、世界の株式および債券市場は4月初旬に急落しました。その後、大統領がほとんどの新たな関税に対して90日間の猶予措置を導入したことで、月の後半にかけて徐々に回復しました。ローン市場もこのボラティリティの影響を受け、流通市場でのローン価格は下落し、新規発行も大幅に鈍化しました。
4月のバンクローンのリターンは、ハイ・イールド債(-0.04%)と投資適格社債(-0.03%)を下回りました2。格付別のリターンは、BB格(+0.09%)、B格(-0.01%)、CCC格(-0.70%)となりました1。ローン市場の平均価格は4月末で95.25となり、3月末(95.84)をやや下回りました1。現在の平均価格を踏まえると、ローンはフォワードカーブを含めて8.42%のイールドとなり、3月末の8.63%をやや下回りました1。
ファンダメンタルズ
- 2025年4月2日、トランプ大統領は、米国のほとんどの貿易相手国に対して広範な新関税を導入しました。大統領は、すべての貿易相手国に対して最低10%の関税を課すとともに、外国製自動車への25%の関税を含めて相互関税措置を発表しました。その後、2025年4月9日にトランプ政権は一部の関税を一時停止しましたが、最低10%の関税を維持し、中国に対しては最大145%の関税を課しました。さらに、政権は今後数か月以内に半導体や医薬品といった特定の産業に対する関税の導入も検討しています。一部の国は米国の関税一時停止の措置に対応したものの、世界での不確実性から市場のボラティリティは高止まりしており、米国の貿易相手国からの報復関税の可能性も残っています。
- 12ヵ月累計の額面デフォルト率は先月の0.82%から0.73%にやや低下しました。新たなデフォルトは2件で、また、以前に発生した2件(ConvergeOne、Xplornet Communications)のデフォルトが今回の計算期間から外れました3。80ドル未満で取引されるローンの割合は前月の3.21%から上昇して3.90%となりました。法廷外での債務再編や債務不履行を含めると、デフォルト率(発行体ベース)は上昇して4.38%となりました3。
市場の需給環境
- 4月の需給動向は、3月と同様に貸し手に有利な状況でした。これは市場が弱含んだこと以外に、ここ数か月続いていた供給不足から供給過剰に転じたことによります。
- 4月のCLOのグロスでの新規発行は3月(98案件で479億ドル)から47%減少し、56案件で254億ドル(うちリファイアンス案件とリセット案件が100億ドル)となりました4。
- 個人投資家向けローン・ミューチュアル・ファンドとETFからは、4月に103億ドル(うち、前者から46億ドル、後者から57億ドル)の資金流出となりました4。
- 4月のローンのグロスでの新規発行(62億ドル)は、解放の日以降に市場のボラティリティが上昇したことで先月(567億ドル)から89%減少し、2010年以降の4月の月間平均(388億ドル)も大きく下回りました。3月のネットでの新規発行額(189億ドル)に対して、4月は買収案件(44億ドル)やリファイナンス案件(18億ドル)などが見られました。
投資機会
リプライシング案件は4月にゼロとなり(図表1)、2025年初頭の記録的な水準から大幅に減少しました。現在、パー以上の価格となっているローンは全体の4%未満となっており(図表2)、数年来で最低水準となっています。リプライシングは今後も低水準にとどまると思われ、投資家にとって好材料と思われます。



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