米国バンクローン市場、月次アップデート 2025年10月
9月のバンクロ-ン市場は、歴史的水準の新発発行が続いた
9月のバンクローン市場動向
当月のバンクローン市場は月間で+0.48%、年初来で+4.69%のリターンとなりました1。また、月間の価格リターンは▲0.21%、金利リターンは+0.69%となりました1。
前々月、前月に続き、今月も新規発行の流れが継続しました。発行総額は931億ドルに達し、9月単月としては過去2番目に高い水準となりました(過去最高額は2024年の971億ドル)。月末時点では、額面がパー(100)を上回るローンの割合は市場全体の37%となり、前月末の41%から低下しました1。
当月のバンクローンのリターンは、ハイ・イールド社債(+1.50%)と投資適格社債(+0.82%)を下回りました3。格付別のリターンは、BB格(+0.51%)、B格(+0.64%)、CCC格(▲0.08%)となりました1。ローン市場の平均価格は、月末時点で96.42となり、前月末(96.47)から僅かに低下しました1。現在の平均価格を踏まえると、ローンはフォワードカーブを含めて7.82%のイールドとなります1。
ファンダメンタルズ
- 市場で想定されていた通り、米連邦準備制度(FRB)は、2025年9月17日に今年初の利下げを実施し、フェデラルファンド金利の目標レンジを0.25ポイント引き下げて4.00%-4.25%としました。FRBは利下げの要因として雇用の伸びの鈍化を挙げており、市場では年末までにさらに2回の利下げが織り込まれています。
- 米国では関税問題が懸念材料として残る中、足元では同国上院議会が9月末までに歳出法案を可決できず、2018年以来初となる米政府の閉鎖(機能停止)に突入し、新たな市場の懸念材料として浮上しています。
- 12ヵ月累計の額面デフォルト率は、前月の1.15%から1.39%へ上昇しました4。当月はFirst BrandsやAstraがデフォルトとなり、Digicelが12か月の計算対象から除外されました4。First Brandsについては歴代で10番目に大きなデフォルトとなり、額面デフォルト率を引き上げました。80ドル未満で取引されるローンの割合は、前月の2.92%から減少して2.88%となりました4。法廷外での債務再編や債務不履行を含めると、デフォルト率(発行体ベース)は低下して4.22%となりました4。
市場の需給環境
- CLOの発行は一旦落ち着きを見せ、返済額も記録的な水準から後退したことで、CLO市場の需給バランスは改善しました。
- 9月のCLOの発行総額は、99案件で452億ドル(うち、リファイアンス案件とリセット案件が339億ドル)となり、8月の113案件で546億ドルと比べて17%減少しました2 。
- 個人投資家向けローン・ミューチュアル・ファンドとETFは、総額1.27億ドル(うち、前者から4.99億ドルの資金流出、後者から6.26億ドルの資金流入)の資金流入となりました2。3か月連続で資金流出が続いた後は、5か月連続で流入超となっています。第3四半期の総流入額は42億ドルで、第2四半期の77億ドルの流出と対照的な動きとなりました2 。
- 当月のローンの発行総額は931億ドルに達し、前月の767億ドルから21%以上増加しました。これは2010年以降の9月の平均発行額(413億ドル)と比較しても非常に高い水準でした2。
新規発行の内訳としては、リプライシング案件(463億ドル)、リファイナンス案件(306億ドル)が中心となり、買収案件(76億ドル)、配当リキャップ案件(62億ドル)、一般目的案件(15億ドル)が続きました2 。
投資機会
市場では、9月の0.25ポイントの利下げに続き、2025年はさらに2回の0.25ポイントの利下げが行われると予想されていますが、政策金利の低下が需給環境が良好なローン市場に与える影響は限定的であると考えています。
ローン発行体の利払い能力は、2024年からの利下げの恩恵を受け続けており、図表1に示されているようにその傾向が確認できます。また、インタレスト・カバレッジ・レシオが1倍未満の発行体の割合も、図表2に示されているようにすでに底を打った可能性が高く、今後さらなる利下げが実施されることでこの傾向は継続することを想定しています。
G2025-10-009
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