マーケット・アップデート
米国バンクローン市場、月次アップデート 2025年9月
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8月のバンクロ-ン市場は、新規発行の流れが継続し、需給バランスはやや悪化
8月のバンクローン市場動向
当月のバンクローン市場は月間で+0.37%、年初来で+4.19%のリターンとなりました1。また、月間の価格リターンは▲0.26%、金利リターンは+0.63%となりました1。
当月は前月に続いて、新規発行の流れが継続しました。夏季休暇シーズンに入る中、発行総額は760億ドル超と、2,000億ドルを超えた前月から大きく低下するも、8月単月の過去最高額を上回りました2。中旬には額面がパー(100)を上回るローンの割合は市場全体の41%となり、前月末の47%から低下しました1。
当月のバンクローンのリターンは、ハイ・イールド債(+1.25%)と投資適格社債(+1.01%)を下回りました3。格付別のリターンは、BB格(+0.50%)、B格(+0.42%)、CCC格(▲0.89%)となりました1。ローン市場の平均価格は、月末時点で96.47となり、前月末(96.71)から低下しました1。
現在の平均価格を踏まえると、ローンはフォワードカーブを含めて7.84%のイールドとなります1。
ファンダメンタルズ
- 当月は四半期決算発表が続き、企業業績の堅調さが見られた他、成長期待の改善、活発な資本市場、CLO組成の底堅さ、そして安定した資金流入が特徴的な月となりました。
- 現時点では、9月に米連邦準備制度理事会(FRB)が25ベーシスポイントの利下げを実施するとの見方が市場に広く織り込まれています。これまでの月と同様に、関税に関する議論は依然として継続的な話題となっています。注目すべき関税措置として、EUに対する15%の基礎関税の設定、中国との関税休戦の11月までの延長などが挙げられます。また、8月下旬には連邦控訴裁判所がトランプ前大統領による多くの関税措置について、非常時権限の不適切な行使であるとして違法と判断しましたが、裁判所は判決の施行を10月まで延期しており、関税は当面維持される見込みです。本件については、トランプ政権は最高裁への上訴を予定しています。
- 12ヵ月累計の額面デフォルト率は、前月の1.11%から1.15%へ僅かに上昇しました4。当月はAnastasia Beverly Hillsがデフォルトとなり、12か月の計算対象から除外された銘柄はありませんでした4。80ドル未満で取引されるローンの割合は、前月の2.83%から上昇して2.92%となりました4。法廷外での債務再編や債務不履行を含めると、デフォルト率(発行体ベース)は小幅に上昇して4.37%となりました4。
市場の需給環境
- 7月から8月にかけて供給の高まりが目立っていますが、同時に早期返済や活況なCLO発行も続いており、堅調な需給環境に大きな変化は生じていません。
- CLOの発行総額は、7月から概ね同水準となり、113案件で546億ドル(うち、リファイアンス案件とリセット案件が358億ドル)となりました2。
- 個人投資家向けローン・ミューチュアル・ファンドとETFは、総額15億ドル(うち、前者から2.34億ドル、後者から17億ドル)の資金流入となりました2。3か月連続で資金流出が続いた後は、4か月連続で流入超となっています。ローン・ミューチュアル・ファンドは、3月と4月に発生した資金流出の46%を回復しています2。
- 当月のローンの発行総額は767億ドルに達し、季節要因もあり、前月の2,024億ドルから大幅に減速したものの、2010年以降の8月の月間平均(341億ドル)と比べても非常に高い水準でした2。新規発行の内訳としては、リプライシング案件(357億ドル)、リファイナンス案件(252億ドル)が中心となり、配当リキャップ案件(65億ドル)、買収案件(48億ドル)、一般目的案件(22億ドル)が続きました2。
投資機会
4月は米国の相互関税の発表によって、当市場でもボラティリティが拡大しましたが、5月以降は回復基調が続いています。市場全体では発行体のファンダメンタルズも安定推移し、下のチャートでも確認出来る通り、 EBITDA成長はプラスが維持されているなど、引続き当市場への資金フローを下支える要因の一つになっています。


G2025-09-010
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