日本経済・市場:前向きの動きが強まると予想
要旨
自民党圧勝でも円安・長期金利高は進行せず
2月8日の衆議院選挙での自民党の圧勝は日本株の大幅な上昇につながった一方、当レポートの先週号で想定した通り、日本の長期金利の上昇や円安には歯止めがかかりました。今後、金融市場が財政政策を評価するうえでの注目点は、食品についての2年間の消費減税を実施した後に確実に元の8%の税率に戻すような制度設計がなされるかどうかになるでしょう。
日本経済:前向きな動きが強まる
直近統計で日本のインフレ率が明確に低下してきたことは、日本経済の見通し改善につながる動きとして注目されます。今年の春闘で昨年並みの賃上げ率が合意される見通しであることから、これまでの名目平均賃金上昇率が維持でき、インフレ率が2%程度まで低下するのであれば、2026年の実質平均賃金上昇率は明確にプラス圏となり、民間消費の増加に寄与すると見込まれます。
日本株がさらに上昇する展開を予想
日本の景気の改善は、今後、日本株に対して追い風になっていくとみられます。今後、海外投資家による日本株投資スタンスの積極化に、内需の緩やかな拡大という新たな要因が加わることで、日経平均株価は2026年末に60,000円をうかがう動きになると予想します。
自民党圧勝でも円安・長期金利高は進行せず
2月8日の衆議院選挙での自民党の圧勝は日本株の大幅な上昇につながった一方、当レポートの先週号(「日本:為替と長期金利が落ち着くタイミングは?」2月5日号)で想定した通り、日本の長期金利の上昇や円安には歯止めがかかりました。これは、①食品にかかる消費税を2年間ゼロ%とする高市政権の提案が市場でほぼ織り込まれていたことに加えて、②野党最大勢力である中道改革連合が主張していた食品への消費税の恒久的停止の可能性がなくなったこと、による面が大きかったとみられます。為替市場では、これまで円安をもたらしてきた「高市トレード」が一段落し、足元では円高の動きが強まっています。衆議院選挙戦で注目された消費減税については、自民党の公約通り、今後設置される国民会議で夏前までに中間案がまとめられ、その後実施されるとみられます。今後、金融市場が財政政策を評価するうえでの注目点は、食品についての2年間の消費減税を実施した後に確実に元の8%の税率に戻すような制度設計がなされるかどうかです。税率引き下げが長引く可能性が視野に入るような場合には、財政悪化懸念から長期・超長期金利がさらに上昇するリスクが高まります。
財政を巡っては、昨年12月に閣議決定された2026年度の政府予算案でプライマリーバランス(基礎的財政収支:国債の元利返済分を除く財政収支)が1.3兆円の黒字となる計画であることが大きな話題となり、自民党も選挙戦においてその点を主張してきました。ただ、2026年度においては、2025年度補正予算に含まれる歳出プログラムが支出されることに加えて、食品についての消費税率をゼロ%にするという、年間5兆円程度のコストを要する政策が2026年度中から実施される公算であることをふまえると、2026年度のプライマリーバランスが実際に黒字化する可能性は極めて低いと考えられます。2026年1月に内閣府が公表した日本の中長期財政試算では、GDP比でみた日本の国・地方のプライマリーバランスは2027年度以降継続的に小幅の黒字を計上すると試算されています(図表1)。ただ、これについても、今後実施されるとみられる消費減税策の財政収支への影響は考慮されていません。
日本経済:前向きな動きが強まる
今後、高市政権が推進していく積極的財政政策は、日本経済に対して短期的なプラス効果をもたらすと見込まれます。直近では、この点に加えて、日本経済の見通しを改善させるもう一つの動きが強まってきました。それは、インフレ率の低下です。全国レベルでのヘッドライン消費者物価(CPI)上昇率は、2025年11月時点では前年同月比で2.9%と上振れていましたが、12月には2.1%まで低下してきました。これまでのインフレ率の上振れに寄与してきたコメ価格が落ち着きをみせていることに加え、高市政権によるガソリン補助金がインフレ低下に寄与したとみられます。より重要なのは、全国レベルのCPIに先立って公表される東京都区部のヘッドラインCPI上昇率(前年同月比ベース)が、1月中旬速報値ベースで1.5%まで低下した点です。2025年11月では上昇率は2.7%、12月では2.0%でしたので、月を追って大幅に低下したことになります(図表2)。1月におけるインフレ率の減速は、主として、ベース効果による生鮮食品・コメ価格の下落(1年程度前まで大きく上昇していたことの反動)と12月統計までに反映されなかったガソリン関連措置の影響によります。
今後、2~4月にかけては、高市政権が電力・ガス料金に対する補助金措置が実施され、全国レベルのヘッドラインCPI上昇率は各月において0.4%ポイント押し下げられるとみられます(内閣府による算定に基づく)。これらをふまえると、全国レベルのヘッドラインCPI上昇率は1~4月には1%台後半、5月以降は2%程度で推移する可能性が高いと見込まれます。
インフレ率の低下により、1人あたり平均実質賃金の上昇率が足元までのマイナスからプラスに転化する可能性が高まっています。平均賃金上昇率は過去3年程度の間、名目ベースではおおむね3%程度で推移してきました(図表3)。今年の春闘で昨年並みの賃上げ率が合意される見通しであることから、これまでの名目平均賃金上昇率が維持でき、インフレ率が2%程度まで低下するのであれば、2026年の実質平均賃金上昇率は明確にプラス圏となり、民間消費の増加に寄与すると見込まれます。
日本株がさらに上昇する展開を予想
日本の景気の改善は、今後、日本株に対して追い風になっていくとみられます。昨年11月以降に米国の大型AI関連株からの分散投資を図る動きがグローバルに強まってきたことで、グローバル投資家が米国以外の株式市場での投資機会を探る動きが強まってきました。こうした動きの中で、高市政権の選挙での勝利によって、財政面からの投資促進策や消費喚起策による株価への恩恵が期待できる日本株が世界的に注目される状況となっています。日経平均株価は選挙2日後の2月10日には57,651円をつけましたが、今後、海外投資家による日本株投資スタンスの積極化に、内需の緩やかな拡大という新たな要因が加わることで、日経平均株価は2026年末に60,000円をうかがう動きになると予想します。
MC2026-019