グローバル・ビュー

中国:経済成長の実態は?

Invesco Global View
要旨
足元で景気がさらに減速している模様

1月分の政府版PMI統計からは、中国経済が減速基調から脱していない状況が読み取れます。中国経済では、①供給過剰問題による設備投資の慎重化、②不動産市況の軟化、➂消費財に対する駆け込み需要の反動、という3つの減速要因が今なお景気に下押し圧力をもたらしています。

経済成長の実態は?

GDP成長率についてより深く理解する目的で、GDP統計を作成する上での基礎統計とみられる入手可能な各種公表統計を使って、主要な需要項目別にGDP成長率への寄与度を試算し、それらを合計してみることにしました。2025年については、公表された実質GDP成長率が5.0%であった一方、この方法による試算値は2%台と、かなりの差が出てしまいました。

全人代で公表が見込まれる財政刺激政策に注目

景気の減速感が強い中国経済にとって、財政政策による景気刺激策は不可欠と考えられます。3月5日から開催される全国人民代表大会(全人代)では、財政面から景気を刺激する新たな政策が打ち出されると見込まれます。

 

足元で景気がさらに減速している模様

 中国経済は減速基調から脱していないようです。春節による需要変動を統計で捉えることが難しいことがあり、中国当局は例年1月と2月分の統計を3月にまとめて公表していますので、中国経済の足元で動きを正確に把握することは困難です。それでも、2025年1月分の公式PMI(購買担当者指数)をみると、製造業PMIは49.3ポイントと、50ポイント(改善も悪化もしない中立水準)を下回りました(図表1)。米国の関税政策による影響もあり、製造業PMIは過去10カ月間に9カ月間50ポイントを割る状況となっています。非製造業PMIも1月は49.4ポイントで、2025年12月の50.1ポイントから低下しました。1月分の水準は、ゼロコロナ政策の事実上の廃止に伴って景気が大きく冷え込んだ2022年12月以来の低水準でした。

(図表1)中国:PMIの動き

 中国経済を巡っては、当レポートの2025年8月14日号(「中国:3つの減速要因」)で指摘した、①供給過剰問題による設備投資の慎重化、②不動産市況の軟化、➂消費財に対する駆け込み需要の反動、という3つの減速要因が今なお景気に下押し圧力をもたらしています。特に、①~②の要因によって都市部固定資産投資額は2025年初より減少を続けており、景気に大きな打撃となってきました(図表2)。供給過剰問題が多くの分野で深刻化する中、政府は企業に対して過度な価格競争をしないように求めています。私は、この政策は供給過剰によるデフレ圧力の強まりを防止する策として適切な政策であると考えていますが、この政策には短期的な投資の減少を促すという副作用があり、足元までその悪影響が顕在化していると言えそうです。その一方で、鉱工業生産の増加率は2025年12月までは前年比でなお5%程度という高い伸び率を保っています。これは、過剰ともいえる企業の設備投資が中国の輸出競争力を向上させるとともに過剰競争による価格下落が輸出需要を強めてきたためです。

(図表2)中国:鉱工業生産、小売売上、都市部固定資産投資の動き(いずれも実質ベース)

 中国からの輸出の数量ベースでの伸び率は、2025年12月において前年同月比で9.2%に達しました。この輸出の高い伸びが中国経済の成長に大きく貢献しています。輸出が大きく増加する一方で輸入の数量ベースでみた伸び率は2025年12月時点で同3.0%にとどまっており、輸入依存度の低下による景気へのプラス効果が強まっています。投資や消費が低迷する中でも、中国経済の2025年10-12月期における実質GDP成長率は前年同期比で4.5%、前期比年率では4.9%という、比較的高水準を維持しました。この結果、2025年通年でみた中国の経済成長率は政府目標である5.0%を達成しました。

経済成長の実態は?

 もっとも、2024年においてGDPの40.6%を占めた固定資産投資が2025年において減少を続けるとともに、小売売上も2025年央から減少傾向に転じていることから、中国の内需はかなり弱いと判断されます。中国ではGDPの需要項目別の実質データが公表されていないという意味で、統計データについての透明性が他の主要国並みの水準で確保されているとは必ずしも言えません。そこで、GDP成長率についてより深く理解する目的で、GDP統計を作成する上での基礎統計とみられる入手可能な各種公表統計を使って、主要な需要項目別にGDP成長率への寄与度を試算し、それらを合計してみることにしました

 具体的には、公表されている名目GDPの需要項目別のウエイト(対象年の前年のもの)を算出し、主要な需要項目(民間消費、政府消費、固定資本形成、輸出、輸入)のそれぞれについて別途推計した増加率を、そのウエイトを基に加重平均して実質GDP成長率を試算しました。民間消費については、家計調査の各種統計や人口データを使用してみたところ、2025年の実質ベースでの民間消費の前年比伸び率は4.1%と試算されました。固定資本形成(=投資)については、中国国家統計局が算出する都市部固定資産投資についての月次での前月比増加率のデータを用いて試算しました。2025年の実質ベースでの伸び率は、-3.0%と試算されました。

 輸出や輸入については、中国通関当局が公表している数量ベースでの月次での伸び率のデータを年間で平均して実質ベースの伸び率を算出しました。2025年における実質ベースでの輸出、輸入の増加率は、それぞれ、9.2%、0.7%と算出されました。こうして試算した実質GDP成長率の試算値を、公表されている実績値と比べてみたのが、図表3です。両者の水準は、2017年~2019年、2022~2024年においては比較的近い計数になりました。2020~2021年の計数が乖離しているのは、コロナ禍という非常事態にあって経済統計を正確に推計することがそもそも困難であったことが理由と考えられます。しかし、2025年については、公表された実質GDP成長率の5.0%に対して、試算値は2%台と、かなりの差が出てしまいました。中国の統計担当機関は、民間には公表していないデータを数多く有していて活用していると考えられることをふまえると、この試算値については相当な幅を持ってみる必要があります。私としては一切の主観的な判断は控えたいと思います。それでも、今後、統計担当機関がこの幅を埋めることができるような、より詳しいデータを公表することを希望するばかりです。

(図表3)中国:実質GDP成長率についての公表ベース実績値と需要サイド統計を使用した試算値
全人代で公表が見込まれる財政刺激政策に注目

 景気の減速感が強い中国経済にとって、財政政策による景気刺激策は不可欠と考えられます。3月5日から開催される全国人民代表大会(全人代)では、財政面から景気を刺激する新たな政策が打ち出されると見込まれます。民間部門の供給過剰問題に対処するための政策を実行している状況下、短期的には民間投資の弱さを補うための政府主導の投資が重要となります。この点で、今年から開始される予定の第15次5カ年計画に基づく広義のインフラ投資プロジェクトが景気を支える役割を果たすと考えられます。また、弱めの状態が続いている民間消費をこれまで以上にサポートする政策が実施される可能性が高いと見込まれます。財政刺激策が実施されることで2026年の中国の実質GDP成長率は4%台を確保することができると想定されます。ただし、財政面からの刺激策が本格的に景気へのプラス効果を発揮するにはある程度時間がかかるとみられます。このため、2026年前半は中国景気のダウンサイドリスクに注意しておく必要があるでしょう。

当資料は情報提供を目的として、インベスコ・アセット・マネジメント株式会社(以下、「当社」)が当社グループの運用プロフェッショナルが日本語で作成したものあるいは、英文で作成した資料を抄訳し、要旨の追加などを含む編集を行ったものであり、法令に基づく開示書類でも金融商品取引契約の締結の勧誘資料でもありません。抄訳には正確を期していますが、必ずしも完全性を当社が保証するものではありません。また、抄訳において、原資料の趣旨を必ずしもすべて反映した内容になっていない場合があります。また、当資料は信頼できる情報に基づいて作成されたものですが、その情報の確実性あるいは完結性を表明するものではありません。当資料に記載されている内容は既に変更されている場合があり、また、予告なく変更される場合があります。当資料には将来の市場の見通し等に関する記述が含まれている場合がありますが、それらは資料作成時における作成者の見解であり、将来の動向や成果を保証するものではありません。また、当資料に示す見解は、インベスコの他の運用チームの見解と異なる場合があります。過去のパフォーマンスや動向は将来の収益や成果を保証するものではありません。当社の事前の承認なく、当資料の一部または全部を使用、複製、転用、配布等することを禁じます。

MC2026-022