グローバル・ビュー

2026年のグローバル金融市場見通し

Invesco Global View
要旨
先進国株式市場—前向きの動きを予想 

米国景気が2026年を通して緩やかに力強さを増していくという景気見通しの下、米国株には前向きな動きがみられると予想されます。マグニフィセント7を含むAI関連株は相対的に割高の領域に入ってきたと考えられますが、PERの頭打ちが想定される中でも、企業収益の成長への期待が増すことで、株価にアップサイドがあると思われます。一方、欧州など他の先進国市場では、グローバル株式市場における米国一極集中の是正の動きが、株価の上昇に寄与すると見込まれます。

米長期金利—2026年後半における上昇を見込む

2026年後半に入ると、米国景気がさらに力強さを増すとみられることから、インフレへの懸念が強まる形で米国の長期金利がやや上昇する可能性が高いと見込まれます。

ドル―2026年前半中にドル安に歯止めがかかる公算

米国景気の回復が明確になるのに合わせて、2026年前半のどこかでドル安の動きがストップすると予想されます。 2026年後半に入ると、景気の加速や貿易収支の改善、対内直接投資の増加などによってややドル高に振れる可能性が高いと考えられます。

新興国資産—グローバル投資家による選好が強まる見通し

2026年は、国際分散投資の流れの強まりやFRBの利下げが続くことが、新興国資産、特に新興国株式への投資をサポートすると見込まれます。インド株には特に注目しています。

重要なリスク―米国のインフレ加速リスクに特に注意

2026年のグローバル金融市場が直面するリスクとして、特に重要とみられるのが、米国におけるインフレ加速リスクです。このほか、テック株の高値警戒感が強まるリスクなどにも留意したいと思います。

 

先進国株式市場—前向きの動きを予想

 2026年のグローバル株式市場は、2025年に続いて、世界の株式時価総額の約半分を占める米国市場を軸とした動きになると考えられます。その米国市場においては、当レポートの11月6日号(「2026年の米国景気・米国株を考える」)でふれたように、米国景気が2026年を通して緩やかに力強さを増していくという景気見通しの下、米国株には前向きな動きがみられると予想されます2026年は、AI関連以外の株については、景気が緩やかに力強さを増していくのに合わせて、緩やかな上昇軌道を辿っていくと予想されます(詳しくは上掲レポートをご参照下さい)。マグニフィセント7を含むAI関連株は相対的に割高の領域に入ってきたと考えられますが、PERの頭打ちが想定される中でも、企業収益の成長への期待が増すことで、株価にアップサイドがあると思われます。例えば、2025年11月中旬において、テック株に対する高値警戒感が強い中でマグニフィセント7株価指数が上昇したのは、PERの上昇によるものではなく、期待EPSの上昇がけん引したものでした(図表1)。

(図表1)米国主要株価指数の2024年末からの累積騰落率

 一方、欧州など他の先進国市場では、グローバル株式市場における米国一極集中の是正の動きが、株価の上昇に寄与すると見込まれます。グローバル市場では、トランプ政権による追加関税政策をはじめとする政策の不確実性が、資産を国際的に分散して投資する需要を生んでいます。2026年は新規の投資資金が米国だけではなく、欧州や日本その他の先進国、主要新興国に流入する傾向が強まると考えられ、先進国における大規模市場である欧州や日本市場は資金フローの面からの恩恵を享受するとみられます。欧州株市場では景気の回復に伴って企業業績の伸びが期待できるほか、金融緩和政策の効果によって、これまでは抑制されていた信用の伸びが加速することが株価上昇に寄与すると予想されます(欧州経済の見通しについては、当レポートの先週号「2026年のグロ-バル経済見通し」(11月27日発行)をご参照ください)。日本株市場では、高市政権の成立に伴って、大規模な財政刺激政策の実施や政府による戦略分野への競争力強化策の実施が見込まれます。株式市場ではこれらの動きが株価にかなり織り込まれたと考えられるものの、今後の実質賃金上昇率のプラス化がもたらす企業業績へのインパクトは織り込まれたとは言えません。日本株市場では、内需の安定的な伸びへの期待が高まることによる株価押上げが期待されます。

米長期金利—2026年後半における上昇を見込む

 米国経済が2026年1-3月期ごろまでやや弱めで推移する可能性が高いことを踏まえると、米国10年国債金利は2026年半ばまでは4%前後の水準で推移する可能性が高いとみられます。パウエル現FRB(米連邦準備理事会)議長の任期が2026年5月下旬で満了し、トランプ大統領の指名により新しいFRB議長が就任する見通しであることをふまえると、2026年初から同年半ばまでに2回の追加利下げが実施される公算が大きいと見込まれます。この点も、長期金利を比較的低水準に保つ要素になると見込まれます。もっとも、2026年後半に入ると、米国景気がさらに力強さを増すとみられることから、インフレへの懸念が強まる形で米国の長期金利がやや上昇する可能性が高いと見込まれます。2026年末の米国10年金利としては、4%台半ばを予想します。

ドル―2026年前半中にドル安に歯止めがかかる公算

 2025年前半はFRBの追加利下げに対する期待が強い状況下で、グローバル市場での米国一極集中に対する懸念が強まったことが他の主要通貨に対してドルが減価する動きにつながりました。2025年後半にはこうした動きが和らぎましたが、2026年半ばまでにFRBが複数の追加利下げを実施するとみられることをふまえると、グローバルなドル安の動きが短期的に復活する公算が大きいとみられます。しかし、その後、米国景気の回復が明確になるのに合わせて、2026年前半のどこかでドル安の動きがストップすると予想されます。FRBの新議長の就任によって米国の利下げに対する期待が強まりはするものの、①米国の景況感が他の先進国と比較して相対的に良好になると見込まれること、②トランプ政権がEUや韓国等との間で締結した通商合意によって米国への直接投資が増えるとみられること、➂追加関税措置を受けて製造業者が米国での投資を増加させることが(輸入代替や輸出の増加を通じて)米国の貿易収支の改善につながるとみられること、がドル高圧力をもたらすとみられます。このため、2026年後半にはややドル高に振れる可能性が高いと考えられます

新興国資産—グローバル投資家による選好が強まる見通し

 2025年はFRBによる利下げもあり、投資家による「米国一極集中」の投資スタンスの見直しが進行しました。これが、一部を除く主要新興国・地域における通貨の対ドルでの上昇と株価の上昇につながったとみられます。2026年も、FRBが利下げを継続する中で、新興国資産にとっては良好な環境が継続すると予想されます。先進国において新規の投資資金を分散投資する流れが続くことが、新興国資産、特に新興国株式への投資を後押しするでしょう

 多くの新興国では、インフレが安定する中で、中央銀行による利下げが継続すると見込まれます。アジアの新興国における利下げは限定的とみられますが、ブラジルやトルコ、メキシコなどアジア以外の主要国では比較的大幅な利下げが想定されます。こうした金融緩和の動きも、新興国の内需をサポートすることを通じて、新興国株式市場での前向きの動きをもたらすとみられます。

 新興国資産の中では、インド株が注目されます。インドの株式市場の時価総額は新興国・地域の中では中国に次ぐ規模であり(図表2)、グローバル投資家が新興国市場への投資を検討する際の選択肢として重要な地位を占めているものの、2024年に景気が想定外に減速したことやトランプ政権がインドからの輸入品に対して50%もの追加関税を課したこともあり、株価に出遅れ感がありました。しかし、インフレ率の低下やGST(物品・サービス税)の簡素化・引き下げによって家計の購買力が上昇するとともに企業業績の改善に対する期待が強まっています。米国によるインド向けの追加関税率が米国との交渉を通じて大幅に引き下げられれば、インド株への需要が強まると見込まれます。このほか、米国のAI関連株との相関が強まっている台湾や韓国などのテック銘柄にもAI特需に伴う恩恵が及ぶ可能性が高いとみられます。

(図表2)主要新興国・地域:株式市場時価総額(2025年11月末)
重要なリスク―米国のインフレ加速リスクに特に注意

 2026年のグローバル金融市場が直面するリスクとして、特に重要とみられるのが、米国におけるインフレ加速リスクです。2026年後半における米国経済は緩やかに加速する見通しですが、株高による想定以上に強い資産効果や、トランプ政権の財政政策の積極化、対米直接投資の大規模化などによって米国景気が大幅に加速するようなことがあれば、強い需要によってインフレが加速するリスクが出てきます。この場合には、FRBによる金融政策引き締め政策への転換によって株安や債券安に振れるリスクが高まります。この際、次期FRB議長がインフレ圧力を効果的に抑制できないとの認識が金融市場で生まれる場合には、期待インフレ率の上昇によって債券安が進行する可能性も出てきます。

 グローバル株式市場のリスクとしては、テック株の高値警戒感が強まるリスクも挙げたいと思います。現在、米国の巨大テック企業はAIサービスの質と量の向上を目指してデータセンタ-への投資を増額させていますが、この競争から脱落する企業が出てくる場合には、AI関連企業を選別して投資する動きが強まるとみられます。このほか、①中国発のデフレが深刻化するリスク、②米中対立によってレアアースなどの供給が支障をきたしてサプライチェーンが混乱するリスク、にも留意したいと思います(図表3)。

(図表3)2026年のグローバル金融市場が直面する主なリスク

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MC2025-127