25年の世界市場を回顧:分散投資がより重要に
あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
要旨
2025年における主要資産クラスの騰落率—貴金属価格が特に大きく上昇
2025年中のドルベースでの騰落率を比較すると、金が突出して1位(64.6%上昇)、グローバル株式が2位(19.5%上昇)でしたが、グローバル適格社債やグローバル・ハイイールド債などのフィクスト・インカム系資産クラスの上昇率も10%を超えました。2025年は債券への分散投資が効果的であったと言えます。また、銀やプラチナといった、金以外の貴金属価格は金価格以上に上昇しました(図表2をご参照ください)。
2025年のグローバル株式市場:米国以外の地域への注目度が上昇
2025年のグローバル株式市場の特徴の一つは、ドルベースの主要株式指数でみて2024年は首位であった米国株が、他の多くの主要国の株価よりも劣後した点です。欧州や日本、新興国への分散投資の流れが強まったと考えられます。
2026年は「景気の回復」という変化が分散投資の重要性を高める
2026年は、2025年に続いて、分散投資の重要性が増す1年になると考えられます。米国のAI関連株から景気回復の恩恵を受けるセクターや金・銀・プラチナなどの貴金属市場への資金シフトに加えて、米国株から他の先進国・新興国株への資金シフトが注目されます。
新年あけましておめでとうございます。日本では、新年に入るとともに、前年に起こったことは「過去の出来事」として顧みられないことも多いように思われます。しかし、今年のグローバル金融市場で起こる出来事のうち、少なからぬ部分は2025年の延長線上で捉えることができる出来事になると考えられます。以下では、2025年中のグロ-バル市場の動きについて主要クラスのパフォーマンスを振り返ることで、今年のグローバル金融市場に取り組む上での示唆を考えてみたいと思います。なお、 2026年の経済・市場見通しについては、以前に当レポートでふれており(「2026年のグローバル経済見通し」⦅11月27日発行⦆、「2026年のグローバル金融市場見通し」⦅12月4日⦆をご覧ください)、現時点ではこれらの見方に変更はありません。
2025年における主要資産クラスの騰落率—貴金属価格が特に大きく上昇
2025年中の主要資産クラスごとの騰落率をドル建てベースで比較してみました(図表1)。この騰落率は円建てベースでみてもそれほど大きくは変わりません。ドル円レートは2024年末では1ドル=157.2円でしたが、2025年末には1ドル=156.7円をつけました。円の対ドルレートは2025年中には大きく振れたものの、1年を通してみると0.3%の増価となりました。さて、これらの全ての資産クラス中もっともパフォーマンスが良かったのが金であり、64.6%の騰落率を記録しました。2位はグローバル株式であり、その騰落率は19.5%と、トランプ政権による追加関税措置の発表で世界的に株価が大きく下落した後、それを大きく上回って上昇しました。グローバル株式は2023年の1位、2024年も2位でしたので、3年連続でかなり高いパフォーマンスを達成したことになります。
3位、5位、6位は、それぞれ、グローバル・レバレッジドローン、グローバル・ハイイールド債、グローバル投資適格社債といったフィクスト・インカム系の資産クラスが占めました。追加関税問題が表面化した直後には、米国をはじめとする世界各国での景気悪化が懸念され、これらの債券のスプレッド(国債との利回り差)がいったん拡大しましたが、景気減速への警戒感が薄れるとともに、スプレッドが縮小に転じ、好パフォーマンスにつながりました。米国以外の債券については、ユーロなどのドル以外の通貨が対ドルで増価したことで、ドル建てでの価格が上昇したことも追い風となりました。一方、債券資産全般やグローバルREITについては、FRB(米連邦準備理事会)が2025年後半に積極的な利下げに転じたこともドル建てでのパフォーマンス上昇要因となりました。2024年においては、フィクスト・インカム系の資産クラスのパフォーマンスがグローバル株式のそれよりもかなり劣後していましたが、2025年には両者のパフォーマンス格差が縮小しました。このことは、2025年においては、債券系の各資産クラスへの分散投資がより効果的であったことを意味しています。
ここで挙げた主要資産クラスの中では金が突出して高いパフォーマンスを達成しましたが、2025年は銀やプラチナといった金以外の貴金属の価格が金以上に大きく上昇する年となりました。2025年中の銀、プラチナの上昇率は、それぞれ、148%、127%を記録しました(図表2)。ワールドゴールドカウンシルの調べによれば、2025年1-9月期において世界の金需要をけん引したのは金ETFであり、投資のための需要が金価格の大幅な上昇の原動力となりました。米国の金需要全体に占める金ETFのシェアは2025年1-3月期、4-6月期、7-9月期において、それぞれ、70%、56%、74%に達したとのことです。過去10年間を平均すると、米国の金需要で最も大きかったのは宝飾品としての需要であり、全体の37%を占めました。金ETFのシェアは24%に過ぎませんでしたので、2025年に入ってからの金ETFへの需要の高まりは、金の需要構造を変えてしまったと言えます。2025年は、金価格の高騰が、金ほどには上昇していなかった銀やプラチナに明確に波及する年になりました。銀やプラチナの市場規模は金のそれに比べてかなり小さいことから、投資資金の流入がさらに大幅な価格の上昇につながったと考えられます。
投資のための貴金属需要が増加した背景としては、第1に、第2次トランプ政権下で米国連邦政府の財政赤字が大きく増加することで、ドルの長期的な価値が損なわれるとの懸念が強まったことが挙げられます。この動機に基づいて貴金属を購入する取引は、通貨価値の低下(ディベースメント⦅debasement⦆)から価値を守る取引という意味でディベースメント取引と呼ばれます。第2に、FRBが政策金利を連続的に引き下げたことで、金利がつかない貴金属の魅力が相対的に上昇した点も重要です。第3に、ロシア・ウクライナ戦争の継続や米中対立の激化などによって地政学的なリスクがより強く意識されるようになったことも、貴金属に対する需要を高めたと考えられます。
2025年のグローバル株式市場:米国以外の地域への注目度が上昇
2025年はグローバル株式全体では2024年に続いて比較的高いリターンを達成しましたが、国別にみたリターンの序列は2024年から大きく変化しました。最も重要な変化は、2024年にはドルベースの株価上昇率でみて主要国中首位にあった米国の主要株価指数(S&P500種指数)が、2025年には他の多くの主要国の株価指数よりも劣後した点です(図表3)。この背景としては、①投資先を米国に集中させることを懸念する投資家が増えたこと、②FRBの利下げに対する期待感が強かったことで、ドルが他の通貨に対して減価したこと、が指摘できます。ドルは2025年後半にはおおむね安定を取り戻したものの、2025年前半には他の通貨に対しておおむね下落トレンドとなりました。こうした状況によって、特に恩恵を受けたのは、新興国・地域でした。対ドルでの通貨の安定・増価は新興国・地域の中央銀行による政策金利引き下げへの期待感を招来し、それが、「米国離れ」に伴う資本流入の増加とともに、株価の上昇に寄与したと思われます。
ただ、2025年における米国株の上昇率が低かったわけではなく、S&P500種指数の上昇率は16.4%を記録しました。米国株をけん引したのは、マグニフィセント7はじめとするAI関連株でしたが、これは台湾や韓国、日本などの株式市場における半導体関連などAI関連株の株価を押し上げるのに寄与しました。一方、米国におけるテック以外の株については、追加関税による景気減速への懸念が強かったことで上値が抑えられる展開となりました。
こうした環境の下で、2025年における世界の株式市場の時価総額増加額は過去最高の27.4兆ドルに達し、2024年の12.2兆ドルから2倍以上となりました(図表4)。2025年の時価総額全体の増加額のうち、米国株が引き続き最大で10.2兆ドルを計上しましたが、欧州市場や中国市場、日本市場、そのほかのアジア市場の時価総額は前年を大きく上回りました。
2026年は「景気の回復」という変化が分散投資の重要性を高める
2026年は、グローバル経済が、トランプ政権が課した追加関税による悪影響から脱却して実力に見合ったペースで成長することができる局面に入ります。政策金利の水準は日本では例外的に引き上げられる見通しですが、米国や多くの新興国では引き下げられる公算が大きく、グローバル株式市場や、国債以外のグローバル債券資産市場には追い風が吹くと考えられます。
一方、2026年は、2025年に続いて、分散投資の重要性が増す1年になると考えられます。グローバル株式市場では、AI関連株に対する高値警戒感が強く、2025年11月以降はマグニフィセント7価格指数が、それまでの上昇相場から、レンジ相場へと移行してきました。私自身はAI関連銘柄には、さらなる企業業績の改善による株価の上昇余地があると考えていますが、何らかの理由で投資家がリスク許容度を低下させる場合には株価が下落するリスクがあります。金融市場でもこうしたリスクが意識される中、米国景気の回復基調が明確になる4-6月期以降、景気回復の恩恵を受けるセクターにこれまで以上の注目が集まり、AI関連株からの資金シフトが生じる可能性が高いと思われます。
また、「米国一極集中」への警戒感が残る中で、欧州や日本、新興国に資産を分散する動きがより強まることが予想されます。2025年中にパフォーマンスが相対的に良好であった新興国株式市場のうち、ブラジル市場やメキシコ市場などでは、前年の株式パフォーマンスがかなり悪かったことの反動が生じた面が強かったと思われ、2026年もこれまでと同様のペースで株価が上昇するとは考えにくい状況です。それでも、新興国へのある程度の資金フローが継続することで、これらの市場においても株価上昇が見込まれます。また、2025年の株式パフォーマンスが相対的に低めだったインド市場については、新興国市場の中で中国に次ぐ規模を有する株式市場であることを考慮すると、米国によるインド向けの追加関税率が交渉によって大幅に引き下げられるのであれば、株価上昇の余地は小さくないと考えられます。他方、金、銀、プラチナ市場については、投資家によるAI関連株からの分散投資先として引き続き注目されると予想されます。
MC2026-003