金利見通し
米国:ニュートラル
米国では成長が鈍化し、インフレデータは概ね穏やかなものの、関税の影響を示す兆候が増えており、関税による価格上昇が年末にかけてインフレを堅調に保つとみています。FRBは利下げサイクルを開始し、その反応関数はハト派側にシフトしました。年末までにFRBがさらに2回の利下げを実施すると見込んでおり、長期金利はレンジ内での推移が続くと予想します。米国財政赤字やFRBガバナンスへの懸念がイールドカーブのスティープ化を促すため、成長データが改善し始めるまでは、スティープニングが主要な取引テーマになるでしょう。
欧州:ニュートラル
欧州中央銀行(ECB)は金利を2%という中立水準に達したと判断しており、外部ショックによる追加緩和が必要とならない限り、現行の政策スタンスを維持するが見込まれます。ユーロ圏全体で構造的な逆風が依然として存在しますが、直近の200ベーシスポイントの利下げの影響を見極めるため、現時点では様子見の姿勢をとることが妥当とされます。
今後12か月間のユーロ圏の経済見通しは不透明であり、貿易関税による継続的な圧力、米国から転流した中国製品の流入増加、複数の国の政治的不安定性が懸念材料です。しかしながら、ドイツのより緩和的な財政政策と欧州全域の軍事投資構想が成長を段階的に支え、ECBの大幅な金融緩和を補完する可能性があります。
市場価格はECBの追加利下げ余地の余地が限定的であることを示唆しています。こうした状況下では、英国、ノルウェー、チェコなど他市場のほうがより魅力的な投資機会を見出せます。したがって欧州金利については中立的なポジションを維持しつつ、相対価値ベースではアンダーウェイト姿勢を継続します。
中国:ニュートラル
中期的にイールドカーブはスティープ化すると予想します。最近の償還手数料規制の変更は、一部の債券ファンドの資金動向に影響を与え、売り圧力を加える可能性があります。以前指摘した通り、今後数カ月の経済・インフレの推移と株式市場の強い勢いが国内金利の下支え要因となると考えます。同時に、緩和的な金融政策が短期金利を安定化させるとみています。長期金利が大幅に動けば、国内銀行や保険会社などの長期投資家からの資金流入を呼び込む可能性もあります。
日本:アンダーウェイト
成長見通しの改善と比較的根強いインフレが相まって、イールドカーブの短期部分には金利上昇圧力が加わるとみています。市場は現在、10月の日本銀行(日銀)会合での利上げ確率を50%と織り込んでおり、これは妥当な水準と我々は考えています。しかし、ターミナルレートの折り込みは依然として低く、今後18か月間でわずか60ベーシスポイント(bp)の利上げしか織り込まれていません。5 インフレ率が2%で安定すれば、実質金利は依然として日銀の中立金利見込みを下回る可能性が高くなります。
財政政策は今後緩和される可能性が高く、これは成長を押し上げ、日本国債(JGB)発行量の増加リスクを高めることになります。ただし、名目GDPの堅調な伸びにより歳入が増加しているため、最近の財政実績は良好であり、発行量の大幅な増加なしに景気刺激策を実施できる可能性があります。さらに、財務省は長期債の発行をさらに削減できるため、長期国債への影響は限定的となり、イールドカーブのさらなるフラット化を後押しすると考えられます。
英国:オーバーウェイト
8月のイングランド銀行(BoE)会合が予想外にタカ派的だったことを受け、市場は2025年末の利下げ予想を20ベーシスポイント、2026年末の予想を16ベーシスポイント下方修正しました。6 金融政策委員会の大半は依然として慎重姿勢を保ち、インフレ持続性を主要懸念事項として、ディスインフレの明確な兆候を待っています。
一方、労働市場は軟化を続けており、11月の予算案ではさらなる財政引き締めが見込まれます。インフレや賃金の急上昇がなければ、短期金利の再上昇余地は限定的とみられ、市場は既に実質ベースで極めて引き締め的なターミナルレートを織り込んでいます。
長期金利は予算案の結果により大きく左右されます。英中銀が9月に2026年までの量的引き締め規模を1000億ポンドから700億ポンドに縮小し、長期債売却を20%に設定した決定は予想されていたものの、予算データの弱さも相まって市場の失望を招きました。6 政府は増税、歳出削減、財政ルールの緩和という厳しい選択を迫られています。歳出削減は政治的に困難なため、増税リスクや信用喪失リスクが顕在化しています。
国債発行は短期債を優先する傾向にあり、長期金利への影響は限定的だとみています。それでも、12月に債務管理局の権限範囲が明らかになるまで、予算の不透明感は続くことが想定されます。
オーストラリア:ニュートラル
オーストラリア準備銀行(RBA)は8月に政策金利を25ベーシスポイント引き下げ、3.6%としました。ブラード総裁はさらに2回の25ベーシスポイント引き下げの可能性を示しています。最近の調査、クレジットやGDPのデータはオーストラリア経済の循環的な回復を示唆しており、市場およびRBAの成長予測は上方修正されることも意識され始めています。
一方で雇用減速が続く労働市場は依然として下振れリスクがあります。ただし、労働参加率の低下と人口増加率の減速により、失業率の上昇にはつながっていません。インフレ率も直近では予想を上回る上昇を示しており、今後のディスインフレペース減速の可能性を示しています。
市場は現在、11月の会合で25ベーシスポイントの利下げが90%の確率で織り込まれており、2026年半ばまでに累計50ベーシスポイントの利下げが想定されています。これはRBAのガイダンスと概ね一致しています。7 我々の見解では、国内データを踏まえるとこの織り込みはやや行き過ぎた水準に思えますが、米国金利の再評価を考慮すれば一定の妥当性もあります。したがって、絶対水準でみて、現在の金利は特に魅力的な水準ではないとみています。