グローバル・マクロ・ストラテジー
パウエルFRB議長、ジャクソンホールでトーンを転換
米連邦準備制度理事会(FRB)のジェイ・パウエル議長は、8月のジャクソンホールでの講演において、9月の次回FOMC会合で利下げが行われる可能性に道を開きました。彼のトーンは、7月の記者会見の際の「様子見」姿勢から明確に転換したと考えられます。
そのきっかけは労働市場データでした。最近の改定後、雇用創出の3か月平均はわずか35,000件に急落しました。過去数か月分の下方修正により、労働市場のモメンタムのさらに弱い姿が浮き彫りになりました。
ジャクソンホール会議において、パウエル議長は、失業率やその他の指標を引き合いに出しつつ、労働市場は概ね安定していると主張しました。彼は、移民減少が労働供給を制約する一方で、労働需要も弱まっており、全体的なバランスの把握が難しくなっていると指摘しました。
それでもパウエル議長は、雇用へのリスクが高まっていることを認め、もしこれらの下方リスクが顕在化すれば、労働市場の悪化は急速に進み得ると警告しました。というのも歴史的に見て、そのような変化は線形的ではない場合があるからです。このようにリスクのバランスが変化していることを踏まえ、パウエル議長は次のように述べ、政策の再調整が間もなく正当化され得ることを示唆しました:「リスクのバランスの変化は、我々の政策の調整を正当化し得る」1。
FOMC内部の分裂:インフレタカ派 vs. 雇用ハト派
連邦公開市場委員会(FOMC)内では健全な議論が行われており、一部の参加者はインフレをより懸念し、労働市場の軟化にはあまり焦点を当てていません。例えば、クリーブランド連銀のベス・ハマック総裁は、インフレ上昇と安定した労働市場を理由に9月の利下げに反対し、特に企業が関税コストの上昇を転嫁する場合、今利下げを行えば物価上昇圧力が悪化し得ると警告しました。
労働市場のダイナミクスについても議論が進展しています。パウエル議長とシカゴ連銀のオースタン・グールズビー総裁は、需要と供給の両要因が労働市場を形作っており、移民減少が雇用創出を抑制し得ると指摘しました。グールズビー総裁は、総雇用増加数よりも労働市場の比率指標に注目すべきと訴え、パウエル議長もジャクソンホールでこの点に同意しました。
自主退職率、解雇件数、求人の充足期間、求人対失業比率、名目賃金上昇率といった指標は、月次雇用創出だけでは捉えきれない労働市場の健全性をより明確に示す可能性があります。これらの測定値においては、まだ結論が出ていません。つまり労働市場がどれほど強く、どれほど回復力があるのかは明確ではないということです。
FRB理事のクリストファー・ウォーラーは、労働市場におけるリスクの上昇を見ています。彼は、民間部門の雇用創出が大幅に減速し、5月から7月の平均は月52,000件に過ぎず、これは2025年前半のペースのほぼ半分であり、この数字はさらに下方修正され、マイナスに転じる可能性もあると指摘しました。自主退職率や転職者の賃金上昇も低下しており、若年労働者などの景気に敏感で雇用の調整弁となりやすいグループの失業率が上昇し、企業は関税の不確実性やAIによる混乱の中で採用を控えています。ウォーラー理事は、これらの傾向は労働供給の減少ではなく労働需要の弱まりを示していると主張し、失業率の上昇を待ってから利下げを行うことは、行動が遅すぎる可能性があると警告しました。
この不確実性を踏まえ、パウエル議長はリスク管理的アプローチを示唆し、次回会合で政策再調整の可能性を残しました。彼は明示的に約束したわけではありませんが、そのトーンは以前の立場から顕著に変化していたと言えます。
IFIの見解:労働市場は軟化している
IFIは、労働市場は供給要因だけでは説明しきれない程度に軟化しており、したがってFRBは次回会合で慎重な「保険的利下げ」を検討するのが賢明であると考えます。リスクのバランスが変化しており、政策再調整の適切な時期であるという主張にIFIは同意します。
主要な変数のひとつは月次非農業部門雇用者数(NFP)の伸びであり、5月から7月の平均純増は月わずか35,000人でした。これは、労働市場の軟化を示す明確な兆候だとIFIは考えます2。
一部では、移民の減少や労働供給の制約がこの弱さを説明しており、そのため純雇用創出の減少は過去ほど懸念すべきではないと主張されています。確かに労働供給は鈍化していますが、IFIは労働需要の急激な低下自体が懸念材料であると考えます。さらに、月間平均の雇用増加がわずか35,000人という水準は、多くの人口動態トレンドの推計を大きく下回っており、供給要因だけでは説明できません。
また、最近の移民政策の変更が、短期的に労働供給の成長鈍化に直結するとは考えにくいと見ています(ただし、景気サイクルの後半では影響する可能性があります)。労働供給は移民だけで決まるものではありません。歴史的に、景気が強まり労働市場が逼迫すると、以前は労働参加を諦めていた人々が再び労働力に戻る傾向があります。逆に、成長が鈍化すると、労働参加率は景気循環的に低下し、労働供給が弱まったように見えることがありますが、この効果は主に「隠れた失業」や不完全雇用を反映しており、構造的な制約ではありません。したがって、景気が回復すれば労働供給は改善すると予想しており、現在の低水準は移民動向だけでなく、景気循環による弱さが主因と考えられます。
ヘッドラインの雇用統計を超えて
IFIは、移民の影響を受けにくい一連の労働市場指標に注目しており、それらが基礎的な労働市場のダイナミクスを捉えるのに役立つと考えます。標準的な指標は依然として重要ですが、現在の「低採用・低解雇」の環境では、解雇された労働者が新しい仕事を見つけるまでにかかる時間や採用の広がりをより的確に反映する測定が補完的に必要だと考えます。
景気後退期には、解雇者数や新規失業保険申請件数が労働市場の悪化を捉える主要な指標となります。しかし、現在の低採用環境では、これらの指標は安定を示唆する一方で、採用の弱さを見落とす可能性があります。失業した労働者が新しい仕事を見つけるのに時間がかかっており、採用は限られたセクターに集中し、転職活動も鈍化しており、転職者の賃金上昇は弱まっています。新規失業保険申請件数は低水準にとどまっているものの、継続申請件数は増加しており、それは職探しに時間がかかっていることを示しています。
総合的に見ると、これらの特徴は労働市場の表面下に緩みを生じさせています。以下の数字は、IFIが注目している指標の一部を示しています。