インベスコ グローバル・ソブリン・アセット・マネジメント・スタディ 2026

テーマ2 より厳しさを増す環境下における長期投資

IGSAMS 2026
長期投資は多くのソブリン・ウェルス・ファンドの本質的な特性であり、さらに中核的な流動性ニーズを超える外貨準備を運用する中央銀行にとっても、戦略的な目標としてその重要性が高まっています。

原則として、よりボラティリティが高く予測不可能な環境は、ペイシェント・キャピタルの意義を一層高めます。すなわち、短期的な混乱を乗り越えて投資を継続し、流動性の低い資産への投資を維持し、短期志向の投資家には得難いプレミアムを獲得する能力は、市場の不確実性が高まるほど一段と価値を持ちます。
しかし実際には、そのような機会を生み出す同じ環境が、長期投資を維持することをより困難にもします。
ガバナンス、流動性管理、そしてステークホルダー・マネジメントは、困難な局面においても実際に長期投資を継続できるかを左右する重要な条件です。

本年の調査では、投資環境が変化したとの認識はほぼ共通しています。ソブリン・ウェルス・ファンドおよび中央銀行のいずれにおいても大多数が、今後10年は過去20年よりも厳しいものとなり、投資目標の達成には長期投資家としてより高いボラティリティを受け入れる必要があると認識しています(図表2.1)。
APACのあるソブリン投資家は、「今後のリターンは、容易な市場上昇ではなく、運用の技能、適切な判断力、そして規律あるポートフォリオ構築に、より一層依存するようになる」と指摘しています。

図 2.1 投資環境に関する各種ステートメントへの同意度(%、中央銀行およびソブリン・ウェルス・ファンド)
投資の時間軸に関する乖離

多くのソブリン・ウェルス・ファンドは自らを長期投資家と位置付けていますが、実際には、そのマンデートで示された投資期間よりも大幅に短い時間軸で運用されているケースが少なくありません。図表2.2および2.3は、この乖離をサンプル全体およびファンドタイプ別に定量化したものであり、特に投資型および債務対応型のソブリンにおいて、表明上の投資期間と実際の投資期間の乖離が最も大きくなっています。このギャップは重要です。なぜなら、流動性の低い資産に伴うプレミアムや長期分散型のリターン源を獲得するには、表明されている通りの忍耐強さをもって資本を投じることが前提となるためです。

図 2.2 方針で表明している投資期間と実際の投資期間 (%、中央銀行およびソブリン・ウェルス・ファンド)
図 2.3 方針で表明している投資期間と実際の投資期間の関係 (%、中央銀行およびソブリン・ウェルス・ファンド)

ソブリン・ウェルス・ファンドにとって、主な制約要因は、ボラティリティやドローダウンに対する感応度、ならびに理事会やステークホルダーの期待であり、加えて政治および選挙サイクルも重要な影響を及ぼします。北米のある債務対応型ソブリンは、実務上、投資期間を短期化させる要因として、政治サイクル、ステークホルダーの優先順位の変化、投資成果に対する公的な監視を挙げています。「これらの要因は長期的な目標そのものを変えるものではないが、投資期間には影響を及ぼし得る」と同投資家は指摘しています。

中央銀行において、実際の投資期間が表明している投資期間を下回る最も頻繁な要因として挙げられるのは、流動性ニーズおよび予期せぬ資金需要です(図表2.4)。これは特に新興国の機関に顕著であり、為替防衛、商品価格の変動、対外資金調達圧力などが、長期投資計画策定時には想定されていなかった外貨準備への需要を生じさせることがあります。
APACのある中央銀行は、「多くの場合、長期的視点を維持しようと努めている。しかし時折、市場ショックによって足元への対応を迫られることがあり、それは通常、ポートフォリオの防御や流動性の確保に関するものであり、運用方針そのものを変更するものではない」と述べています。
中央銀行およびソブリン・ウェルス・ファンドの双方において、短期的な事象に対応して頻繁に運用方針を変更するとの回答は、ごく少数にとどまっています(図表2.5)。より一般的なのは、市場ショックが一時的な調整や流動性への注視を促すものの、ポートフォリオの戦略的方向性自体は変更しないという対応です。

図 2.4 投資期間を短縮させる要因(%、中央銀行およびソブリン・ウェルス・ファンド)
図 2.5 短期的な市場または地政学的ショックが長期的な投資方針を上回る頻度 (%、中央銀行およびソブリン・ウェルス・ファンド)
広範な市場エクスポージャーから厳選投資へ

投資環境の支援的でなくなった状況への対応は、機関の種類によって異なります(図表2.6)。ソブリン・ウェルス・ファンドは、プライベート市場や流動性の低い資産への
配分を拡大し、アクティブ運用の重要性を一段と高めています。一方で中央銀行は、長期的なリターン前提の見直し、シナリオ分析やストレステストの活用拡大、そして短期的なボラティリティをより許容する姿勢を強めています。しかし両者とも、より投資対象を厳選し、戦略的にポートフォリオを組み立てる方向へと向かっています。

図 2.6 投資環境の追い風が弱まる中での対応(%、中央銀行およびソブリン・ウェルス・ファンド)

ソブリン・ウェルス・ファンドにとって、プライベート市場および非流動性プレミアム、実物資産やインフラ投資、さらには個別銘柄選択を伴うアクティブ運用は、広範な市場エクスポージャーに依存しない主要なリターン源として最も頻繁に挙げられています(図表2.7)。また、外部運用会社の専門性やテーマ型・構造的成長への投資も重要な位置を占めています。多くの機関にとって、これらの配分はリターン創出と分散効果の双方を目的とするものであり、リターンは市場全体の動きよりも、資本をどのように、どこに投じるかにより大きく依存する傾向が強まっています。

図 2.7 長期リターンの源泉として想定されるもの(%、中央銀行およびソブリン・ウェルス・ファンド)

APACのある中央銀行は、「何が依然として合理的なのかを再考する必要がある」と述べ、従来のポートフォリオ構築に関するいくつかの前提が試されていることを認めています。シナリオ分析やストレステストの活用拡大は、より厳しい環境への一般的な対応であり、テーマ1で示されたレジリエンスのモニタリング強化の流れとも一致しています。
この変化の実務的な表れの一つが、アクティブ運用に支払うフィーに関してのより厳格な見直しです。APACのある債務対応型ソブリンは、各資産クラスについて、支払っているアクティブ運用手数料が差別化されたリターンを生んでいるのか、それとも単にインデックスの高コスト版に過ぎないのかを問い直す規律を紹介しています。場合によっては、後者と判断され、それに応じて配分が調整されています。

資金配分の方向性

2026年調査におけるネットの配分意向を見ると、株式に対して明確な弱気転換が確認されており、ソブリン・ウェルス・ファンド(SWF)は上場株式へのエクスポージャーを増やすよりも減らす傾向が強まっています(図表2.8)。インフラおよびプライベート・クレジットは最も明確にその恩恵を受けている分野であり、それぞれ構造的な需要と利回り環境を背景に、配分に関して純増加の意向を集めています。プライベート・クレジットは今回の2026年調査で初めて独立した資産クラスとして扱われており、サンプル全体においてその存在感が高まっていることを示しています。

図 2.8 年次別の純資産配分意向(増加意向-減少意向)(%、ソブリン・ウェルス・ファンドのみ)

ただし、株式からの資金移動は無差別なものではありません。北米のある債務対応型ソブリンは、その背景にある懸念が特に市場の週ちゅうリスクにあると指摘しています。「我々は、過度な集中への強い懸念から株式の配分を引き下げてきた」と述べています。問題視されているのは株式リスクプレミアムそのものではなく、その内部におけるリターンの分布であり、広範な指数投資が、実際には限られた一部の企業への投資に偏っている可能性です。

インフラは、マンデートや地域を問わず、引き続き資金を集めています。各地域において、インフラ投資は脱炭素化、再生可能エネルギー、デジタルインフラ、データセンターといったテーマに沿って形成されており、これらはいずれも生産性向上と長期的な経済成長への寄与が期待されています。中東のある開発型ソブリンは、AIテーマと投資機会の関係を次のように述べています。「現在のAIの波は、プライベート・クレジットやインフラ投資の機会の中で最もうまく捉えられている」

プライベート・クレジットも引き続き資金を集めており、特に北米での需要が強く見られます。北米のある債務対応型ソブリンは、今後5年間でプライベート・クレジットのポートフォリオをおおむね倍増させる方針であり、中堅規模のヘルスケア、ソフトウェア、気候リスク、ビジネスソリューション分野への集中を検討しています。
一方で今年は、この資産クラスに対する資金の集中(クラウディング)が、その魅力であった構造的優位性を損なう可能性への懸念も顕著に高まっています。欧州のある債務対応型ソブリンは、「プライベート・クレジットに対する関心は非常に高いが、多くの資金がこの分野に流入している点には個人的に慎重に見ている」と述べています。

ガバナンス:長期投資規律を支える基盤

複数の回答者は、ガバナンス体制の明確化、意思決定権限の明確化、そしてより具体的な流動性方針の策定を通じて、表明上の投資期間と実際の投資期間のギャップを縮小しようとする取り組みを進めていると述べています。これにより、市場ストレス時においてもポートフォリオの長期投資部分を維持し、他の資産におけるやむを得ない売却を回避することが可能になります。

長期的な投資目的およびベンチマークの明確化、強固な監督体制、役割と責任の明確化、そして明確に定義された意思決定権限は、長期投資の規律を維持する上で有効なガバナンス要素として最も多く挙げられています(図表2.9)。この結果は、制度的な規律が崩れやすい局面、すなわち投資目的が曖昧な場合、ステークホルダーからの圧力が高まった場合、そして流動性管理が十分に事前計画されていない場合を示唆しています。

図 2.9 長期的な投資規律を維持するために最も有効なガバナンス要素(%、中央銀行およびソブリン・ウェルス・ファンド)

APACのある中央銀行は、明確な役割分担、意思決定権限、流動性に関する指針が意思決定の焦点を維持し、短期的な市場変動への過剰反応を防ぐうえで有効であると述べています。また、強固な監督体制により、判断が短期的な圧力ではなく、本来の投資目的に沿ったものとなるよう確保されます。

欧州のある中央銀行も同様の点を指摘しており、強い監督体制と明確な流動性方針が、資産の強制売却を回避し、市場や地政学リスクが高まる局面においても投資計画の安定性を維持することに寄与すると述べています。

より高度化する長期投資の姿

世界金融危機後の10年間において有効に機能してきた長期投資のアプローチ、すなわちパッシブな市場エクスポージャーを軸とし、低金利環境に支えられた投資手法は、現在ではリスク当たりのリターンを従来ほど生み出せなくなっています。これを受けてソブリン投資家は、資産クラス間における厳選投資の向上、より戦略的なポートフォリオ構築、そして市場環境が厳しく外部からの監視が強まる中でも長期目標を維持できるガバナンス体制の強化に取り組んでいます。

こうした変化の多くは、表明上の投資期間と実際の投資期間のギャップにおいて具体化しています。このギャップを埋めるには、流動性管理、ガバナンス設計、ステークホルダー対応を通じて、投資判断上求められる局面で「長期であり続ける力」を実質的に守ることが不可欠です。真に長期資本に帰属するプレミアムは、行動を迫る圧力が高まる局面においても方針を維持できるようなガバナンス、流動性、ステークホルダー体制を構築した機関にこそ、より多くもたらされると考えられます。

各テーマの詳細については下記からテーマをお選びいただき、ご確認ください。

当資料は、一般もしくは個人投資家向けに作成されたものではありません。当資料は、情報提供を目的として、インベスコ・グループの海外拠点において作成され、英文でリリースされた「Invesco Global Sovereign Asset Management Study 2026」をインベスコ・アセット・マネジメント株式会社(以下、「弊社」)が入手してご提供するものであり、法令に基づく開示書類でも金融商品取引契約の締結の勧誘資料でもありません。当資料は信頼できる情報に基づいて作成されたものですが、その情報の確実性あるいは完結性を表明するものではありません。また過去の運用実績は、将来の運用成果を保証するものではありません。当資料に記載された一般的な経済、市場に関する情報およびそれらの見解や予測は、いかなる金融商品への投資の助言や推奨の提供を意図するものでもなく、また将来の動向を保証あるいは示唆するものではありません。また、当資料に示す見解は、インベスコの他の運用チームの見解と異なる場合があります。本文で詳述した当資料の分析は、一定の仮定に基づくものであり、その結果の確実性を表明するものではありません。分析の際の仮定は変更されることもあり、それに伴い当初の分析の結果と重要な差異が生じる可能性もあります。当資料について事前の許可なく複製、引用、転載、転送を行うことを禁じます。

 

IM2026-116