インベスコ グローバル・ソブリン・アセット・マネジメント・スタディ 2025

テーマ3 あらゆる局面で活用されるツール:拡大するETFの役割

IGSAMS 2025
2025年末時点で、世界のETF運用資産残高は約19.5兆ドルに達し、過去20年間で年平均約15%の成長を遂げてきました1。市場は当初のパッシブな株式指数連動型にとどまらず、債券、アクティブ運用、テーマ投資、ファクター投資、オルタナティブといった幅広い分野へと大きく拡大しています。

過去10年を通じて、機関投資家の間では柔軟性、拡張性、流動性、そして実行精度への需要が持続的に高まってきました。ETFは、こうしたニーズに対する一つの有効な解を提供するものとして、存在感を高めています。一方で、ソブリン・ウェルス・ファンドや中央銀行は、これまでETF市場の成長に関して主要な牽引役ではありませんでした。これらの機関は、その規模やガバナンス要件、流動性ニーズから、直接保有や外部委託運用、個別設計の投資スキームを優先する傾向があったためです。
しかしながら、公的機関におけるETFの採用は着実に進んでおり、本年の調査では一定の転換点に達していることが確認されています。現在では回答者の約40%弱がETFを活用しており、すべての機関タイプで利用が拡大しています。また、今後3年間においてもさらなる採用拡大が見込まれています(図表3.1、3.2)。

図 3.1 ETFの現在の活用状況(%、中央銀行およびソブリン・ウェルス・ファンド)
図 3.2 ETFの利用状況の変化(%、中央銀行および ソブリン・ウェルス・ファンド)

両者は異なる出発点からETFの活用へと向かっています。新たな資産クラスへの投資を進める中央銀行にとって、ETFはアクティブ運用のための運用インフラを自ら構築することなく、実務的にエクスポージャーを取得できる有効な手段となっています。一方、ソブリン・ウェルス・ファンドにとってETFは、機動性、スピード、そして実行精度を高めるためのツールとして位置付けられています。

ETF活用は投資ソブリンおよび債務ソブリンで先行しており、それぞれ58%、53%が現在ETFを利用していると回答しています(図表3.1)。中央銀行は31%となっています。一方、開発ソブリンは24%と最も慎重であり、これは上場商品よりも、直接投資、戦略的持分投資、アクティブな関与を重視するマンデートを反映しています。

欧州のある債務ソブリンは、ETFの活用比率が現在の約20%から将来的には40~50%に達する可能性があると述べており、コスト効率や投資対象の広がりを背景に、ETFをポートフォリオのコア構成要素として活用する方向への明確なシフトを示しています。また、北米のある投資ソブリンは市場のボラティリティ上昇を活用する観点から、戦術的なETF配分をすでに拡大しているとしています。

中央銀行:
新たな資産クラスへのアクセス

中央銀行にとって、ETFという枠組みは、本来であればより多くの内部リソースや外部マネージャーの体制、あるいは運用上の複雑さを伴う投資エクスポージャーを、比較的簡便に取得する手段を提供します。中央銀行におけるETFの主な活用目的として最も多く挙げられているのは、戦略的な長期エクスポージャーの確保であり(図表3.3)、これは内部の運用能力が十分でない資産クラスにおいて、コア配分の構築にETFが活用されていることを示しています。

ラテンアメリカのある中央銀行は、初めて株式エクスポージャーを導入する際に、ETFが最も自然な選択肢であったと述べており、使いやすさとコスト競争力が決定要因であったとしています。また欧州のある中央銀行は、ポートフォリオが債券中心から拡大する中で、株式ETFがグローバル市場へのパッシブ投資を行う最も効率的な手段であったと指摘しています。外貨準備運用においても、ETFは運用モデルを大きく変更することなく、新たな資産クラスへの投資を可能にする有効な入口となっています。

このため、利用理由としては流動性や商品ラインナップの幅広さ以上に、「使いやすさ」や「運用の簡便性」が最も重視されています(図表3.4)。加えて、保有内容の透明性やコスト効率も評価されています。中央銀行の優先事項は、新たな領域へ投資を拡大する過程にある機関の特徴を反映しており、最も重要なのは「確実に機能する実装」であることが分かります。

図3.3 ポートフォリオにおけるETFの役割(%引用、中央銀行およびソブリン・ウェルス・ファンド)
図 3.4 ETFを活用する主な理由(「非常に重要」と回答した比率、中央銀行およびソブリン・ウェルス・ファンド)
ソブソブリン・ウェルス・ファンド:
柔軟性と実行手段

ソブリン・ウェルス・ファンドは、ETFについてやや異なる見方をしています。ETFがポートフォリオの中核的な戦略エンジンとして位置付けられることは稀であり、多くの場合は既存ポートフォリオの運用を円滑にするためのツールとして活用されています。特に、戦術的な資産配分や流動性管理が主な用途として挙げられており(図表3.3)、これは複雑なポートフォリオの周辺部分において、効率的にエクスポージャーを調整する手段としてETFが用いられている実態を反映しています。

北米のある債務ソブリンは、「特定のテーマへの投資エクスポジャーを構築し、運用手数料を抑えるためにETFを活用しているが、主として戦術的な用途である」と述べています。またAPACのある投資ソブリンは、「ETFは実務的なツールとして有用であり、流動性確保や短期的なポジショニング、効率的なリバランス時のポートフォリオ移行に役立つ」と述べています。このため、ETFの属性としては、保有内容の透明性と流動性が最も重視されています(図表3.4)。

もっとも、すべてのソブリン・ウェルス・ファンドがETFを純粋に戦術的なツールとして捉えているわけではありません。39%は、ETFを戦略的な長期エクスポージャーの構築にも活用していると回答しています。欧州のある投資ソブリンは、ETFは当初から戦略的な構成要素として活用されており、その対象範囲は現在オルタナティブ資産クラスへと拡大していると述べています。

総じて、ETFは依然として「実行手段」としての役割が中心ではあるものの、徐々にポートフォリオ設計の中核に組み込まれつつある機関も増えています。従来は外部委託運用や直接保有によって構築されていた戦略的エクスポージャーを、ETFを用いて構築する動きが広がり始めています。

パッシブ運用の基盤となるETF

パッシブ型の株式ETFおよび債券ETFは、両グループにおいて圧倒的に主流となっています(図表3.5)。APACのある投資ソブリンは、これらを「効率性が高く、拡張もしやすい。特に流動性管理や迅速なポジション調整を行う際に有用」と評価しています。

図 3.5 ETFの種類(%、中央銀行およびソブリン・ウェルス・ファンド)

テーマ型ETFも存在感を高めており、特にソブリン・ウェルス・ファンドで活用が広がっています。複数の回答者は、エネルギー転換、デジタルインフラ、テクノロジーといった構造的な投資テーマへのエクスポージャーを、内部体制の整備や専門運用会社の選定に要する時間をかけることなく取得する手段として、テーマ型ETFを活用していると述べています。APACのある投資ソブリンは、「個別銘柄を一つひとつ組み入れることなく、特定の投資テーマへのエクスポージャーを得られる」と指摘しています。また、機関投資家は、まずは比較的小規模でテーマに参画し理解を深めた上で、本格的な内部プログラムの構築を検討することも可能です。

コモディティETFは、中央銀行にとって特有の役割を果たしています。すなわち、現物金の保管・管理といった運用上の負担を伴わずに、効率的に金へのエクスポージャーを取得できる手段として利用されています。この活用方法はすでに確立されており、拡大が続いています。一部のソブリン・ウェルス・ファンドもコモディティETFを保有していますが、その主な目的はインフレヘッジや、実物資産としての分散投資です。特に、先物や現物による直接投資が、当該配分規模では実務的に難しい場合に活用されています。

アクティブETF:関心の高まり

アクティブETFは、現時点では導入初期段階にあり、多くの回答者はまだ実際の投資には至っていません(図表3.6)。ソブリン・ウェルス・ファンドの中では、すでに投資を行っているのは7%にとどまる一方、さらに26%が導入を検討しています。ソブリン・ウェルス・ファンドにとっては、流動性を維持した形で専門性の高い運用戦略にアクセスできる点が、主な魅力として挙げられています(図表3.7)。APACのある投資ソブリンは、「アクティブETFは、単純なパッシブ投資よりも優れたリスク管理を提供しつつ、コストは相対的に低く、実装も簡便である」と述べています。欧州のある投資ソブリンは、市場の集中度の高さへの対応やリスク管理の高度化において、アクティブETFが有用となり得ると指摘しています。

一方で、慎重な見方も存在します。欧州のある債務ソブリンは、魅力は認めつつも、直接運用や外部委託運用と比較した場合の手数料水準が依然として障壁であるとしています。別の投資家は、「アクティブ運用には10~15ベーシスポイントでアクセスできており、現時点でアクティブETFに明確な優位性は見出しにくい」と述べています。またAPACのある投資ソブリンは、より長期の実績(トラックレコード)を確認するまでは慎重な姿勢を維持する意向を示しています。

図3.6 ETFの種類別利用状況 (%、中央銀行およびソブリン・ウェルス・ファンド)
図 3.7 アクティブETFの魅力(%、中央銀行およびソブリン・ウェルス・ファンド)
ESGおよびオルタナティブ

ESGおよびオルタナティブETFについては、いずれも中程度の関心と導入状況という、類似した傾向が見られます(図表3.6)。中央銀行においては、ESG ETFの採用比率が相対的に高く、すでに12%が投資を行っています。ETFを利用している中央銀行全体(31%)の中でも、これは一定の存在感を示しています。株式投資を初めて導入する中央銀行にとって、パリ協定準拠や広範なESG指数は、独自の枠組みを構築することなく、ガバナンスやマンデートの要件を満たすための実務的な手段となっています。

一方、ソブリン・ウェルス・ファンドにとっては、ESG ETFに対する制約は主に「コントロール」の観点にあります。すなわち、パッシブ型のETFでは、サステナビリティ目標に沿った精緻な投資実行が難しいのではないかという懸念です。複数の回答者は、パッシブESG ETFには自らの基準では保有したくない企業が含まれている場合があると指摘しており、インデックスの構成方法や開示基準が自らの要件を満たしていないケースがあると述べています。

オルタナティブETFについては、そもそも上場型のETFという形式で、オルタナティブ投資の本質的な特性―すなわち非流動性プレミアム、公開市場との低い相関、差別化されたリターン―を十分に実現できるのかという点が論点として挙げられています。この点については、より長期的な実績の蓄積を通じて検証されていく必要があります。

拡大する役割

ETFはソブリンのポートフォリオ全体において、その役割を一段と広げていますが、その活用理由は機関タイプによって大きく異なります。中央銀行は、アクティブ運用や内部運用体制に必要なインフラを構築することなく、新たな資産クラスへのエクスポージャーを効率的に取得する手段としてETFを活用しています。一方、ソブリン・ウェルス・ファンドは、主に戦術的な柔軟性の確保、ポートフォリオの移行、そして近年では特定テーマへの的確なエクスポージャー取得のためにETFを活用しています。

アクティブETF、ESG ETF、オルタナティブETFはいずれも関心を集めているものの、導入は依然として選別的に進んでいます。ETF活用が進んでいる機関に共通しているのは、ETFが果たす役割を明確に定義している点です。

ETFはすでにソブリンのポートフォリオ運用における脇役的な存在から、その活用は確実に中心的な役割へと近づきつつあります。今後の導入動向を踏まえると、ソブリン投資家全体において、ETFがポートフォリオのより重要な構成要素として組み込まれていく流れが明確に示されています。

  • 1.

    ETFGI

日本語版の詳細についてはテーマ1〜4を公開しております。
テーマ5は今後公開予定です。

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