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2022年12月:世界経済にとって忘れがたい月に

2022年12月:世界経済にとって忘れがたい月に
〔要旨〕
世界経済:中国の新型コロナウイルス政策対応の変化、中央銀行の政策決定会合、期待インフレ率などの動向次第で、今月は世界経済にとって忘れられない月となると予想
株式市場:従来、12月の金融市場は、リスク資産にとって好ましい月となることが多く、12月後半の株式市場の急騰を示す「サンタクロース・ラリー」という言葉も生まれている
米連邦準備理事会(FRB):ただし、2022年は市場がFRBの動向に大きく左右されており、企業業績への警戒感が株価の下押し圧力となる可能性も存在
 
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2022年の12月は、世界経済および市場にとって、極めて重要な月となりそうです。その理由をいくつか以下に挙げました。

  1. 中国の新型コロナウイルス政策対応の変化。中国は、新型コロナウイルスに関する政策対応を、有意義かつ前向きな方向に変化させつつあります。先週、高齢者のワクチン接種を促進するための新たな取り組みが発表され、また、最近一部の主要都市では、新型コロナウイルスの検査要件が緩和されました。このニュースは投資家に非常に好意的に受け止められ、中国の株価上昇につながりました。また、今週、これまでほどは厳格でない新型コロナウイルス政策が中央政府から新たに発表される可能性が伝えられており、経済活性化につながることも見込まれることから、中国株式市場がさらに大きく上昇することも考えられます。
  2. 中国の成長目標。 12月中旬に、中国では高位の政策立案者が集まって2023年の重要な経済政策を決定する、中央経済工作会議が開催されます。注目はひとえに2023年の中国の成長目標、特にそれが5%以上の水準に置かれるかどうかに集まっています。私自身は、5%以上の水準に置かれることを期待しており、中国政府はそのための財政支援策を講じるだろうとみています。また最近、中国人民銀行(中央銀行)は預金準備率の引き下げを実施しましたが、私は、こうした経済支援策が今後も続くと予想しています。こうしたことから、2023年の中国経済はかなり力強く成長する可能性があります。
  3. 日銀短観。短観は、日本の製造業の業況判断に役立つ指標で、12月14日に発表予定の調査結果からは、前四半期からの状況改善が示唆されると予想されています。しかし小売売上高など、直近の日本の経済指標には良くない内容のものもあります。短観が期待外れの内容となった場合、日本経済の見通しがそれほど前向きではなくなり、日本銀行が支援策を講じているにもかかわらず、短期的に日本株への重しとなる可能性があります。
  4. 米国のインフレ対応策。私は、特に米国の消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)、そしてミシガン大学の公表する期待インフレ率(速報値)に注目しています。私は、米連邦準備理事会(FRB)が12月の政策金利の引き上げ幅を0.5%とするのはほぼ「既成事実化」されていると考えますが、まだ0.75%の引き上げ幅となる可能性もわずかに残っています。先週公表された米雇用統計で、より大きな賃金上昇がみられたことのみによって、利上げ幅がより大きくなるとは思いませんが、もしインフレ率、期待インフレ率が予想以上に高かった場合、FRBが考えを変える可能性はあります。6月にFRBが利上げ幅を0.5%にとどめると言っていたことを思い出してください。それにもかかわらず、政策金利の発表数日前に、CPIとミシガン大学の期待インフレ率がともに予想を上回ったことを受け、FRBは利上げ幅を0.75%に引き上げました。このように、今後発表予定の経済指標が12月のFRBの政策決定に影響を与える可能性は小さいものの、これらの指標の公表により、ボラティリティは高まるでしょう。
  5. カナダ銀行(中央銀行)。カナダは、中央銀行による利上げ幅の縮小に向けて先陣を切っており、注目すべき対象です。カナダも、タイトな労働市場や高い賃金の伸びなど、米国経済と同じ課題を多く抱えています。また「急激な」利上げサイクルにより、過度な景気減速が引き起こされるリスクも抱えています。米国のイールドカーブと同様に、カナダのイールドカーブにも大きな反転(逆イールド、長短金利差の逆転)がみられました。カナダ銀行は当初、12月の会合で0.5%の政策金利の引き上げを決定するとみられていましたが、引き上げ幅を0.25%とする可能性が高まっています。私自身は、0.25%の引き上げとなる可能性がより高いとみており、そうなればカナダ経済への圧力が緩和され、また他の中央銀行が、利上げ幅の正常化に追随する方向に道が拓かれると考えています。
  6. 米連邦公開市場委員会(FOMC)。FOMCの経済見通しの公表とそれに伴う記者会見が、12月14日に予定されています。金融市場は結局のところ、12月に決定される利上げ幅よりも、最終的な政策金利の水準がどうなるか、またFRBがいつ引き上げの「停止」ボタンを押すのかに注目しています。なぜなら、それが株式市場のパフォーマンスと景気回復の時期を左右しうるためです。これらについてはるかに重要な手がかりとなるのは、FOMCの記者会見と「ドットプロット(FOMCメンバーによる金利予測分布図)」です。
  7. 欧州中央銀行(ECB)。ユーロ圏のインフレはピークに達したように見え、ECBが12月15日の理事会で、0.5%の利上げにシフトダウン(減速)する可能性が高まっています。しかしラガルドECB総裁は最近の会見で、インフレがピークに達したとの見方を否定しつつ、インフレ期待がアンカーされなくなる(安定的に維持されなくなる)ことへの危険性について警告しており、今後ラガルド総裁が、ECBの信頼性を高めるためにタカ派的な姿勢を強める可能性が示唆されます。

 

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従来、12月の金融市場は、リスク資産にとって好ましい月となることが多く、12月後半の株式市場の急騰を示す「サンタクロース・ラリー」という言葉も生まれたほどです。1950年以降のS&P500種指数、1971年以降のナスダック総合指数でみた場合、12月は全ての月の中で3番目に好調な月であり、1979年以降のラッセル2000種指数でみた場合は2番目に好調となっています 1 。グローバルでみた株式も、過去の実績では同様に「サンタクロース・ラリー」の傾向がみられます。例えば12月の月間平均リターンでみると、FTSE100種総合株価指数は+2.55%、MSCI新興国株式指数は+3.18%、MSCI EAFE(欧州、オーストラリア、極東)株式指数は+2.34%、ハンセン指数は+1.79%となっています 2

しかし2022年は、FRBをはじめとする中央銀行が実施した、過去において類を見ない大幅な金融引き締め政策によって市場が大きく動いたことから、私は12月もこれらの中央銀行の動向が、株式に多大な影響を与えると予想しています。また企業業績の下方修正も、株価の下押し圧力となる可能性があります。従って、12月はボラティリティが非常に高まると予想されるものの、過去の傾向からは株価は上昇傾向となる可能性が高いと考えられます。この12月は、2023年に向けて、世界経済および市場にとって忘れられない月となるのではないでしょうか。

 

  1. 出所:ストック・トレーダーズ・アルマナック、Jeffrey Hirsch and Christopher Mistal
  2. 出所:ブルームバーグ、1990~2021年

 

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