指標は、市場がまだ底を打っていない可能性を示唆
〔要旨〕
- 景気サイクル:私たちが選好する景気サイクル指標は悪化の方向に向かっているものの、壊滅的な状況を示しているわけではない
- 景気減速方向への転換:戦術的には、情勢は軟化している。一時的に見られた世界的な景気拡大の兆しは、減速方向へと転換した
- 市場の底:市場はすでに底を打ったのだろうか?私たちが選好する市場底入れ指標に基づけば、現時点での答えはおそらく「ノー」だ
景気サイクル指標は、緩やかな悪化を示すにとどまっている
世界的なシグナルは景気減速を示唆
市場は底を打ったのか?おそらく、まだだろう
これは投資家にとって何を意味するのか?
注目の日程
マクロ経済や市場戦略を専門としていると、あらゆることについて意見を述べられるはずだという暗黙の期待が向けられるものです。例えば、2020年の新型コロナウイルスによるパンデミック時、私は微生物学者ではありませんでしたが、テレビでそうした役割を演じようともがいているように感じることがよくありました。同様に、今日の私は軍事ストラテジストでもなければ、米国のトランプ大統領、イスラエルのネタニヤフ首相、イランのモジタバ・ハメネイ最高指導者の内心の動きを熟知する専門家でもありません。おそらく、その方がよいのでしょう。政治的・軍事的指導者の動機や目標を理解していると思い込むと、市場はすぐにでも、その思い上がりを正してくるでしょうから。
先週は、改めてそれを思い知らされる一週間でした。市場は、戦争が激化しているかと思えば終結に近づいている、そうかと思えば再び激化しているというシグナルを度々発しました1。ニュースの見出しひとつひとつに反応して取引しようとすれば、相場に振り回されることになりかねません。このような局面では、私たちは自分たちが最も得意とすることに立ち返ります。すなわち、市場そのものが何を語っているかを読み解くことに注力するのです。
景気サイクル指標は、緩やかな悪化を示すにとどまっている
まずは景気サイクルから見ていきましょう。これまで述べてきたように、私たちが選好する景気サイクル指標は悪化の方向に向かっていますが、壊滅的な状況を示しているわけではありません。クレジット・スプレッドは小幅に拡大し2、インフレ期待は上昇傾向にあり3、米ドルは小幅に上昇しました4。インフレ期待の上昇を受けて、投資家は欧州中央銀行、イングランド銀行、さらには日本銀行においても、今後さらなる利上げが行われるとの見方を強めています5。
これらを総合すると、景気サイクル指標のこうした緩やかではあるが大幅ではない悪化は、市場が依然として出口への道筋と、短期的な不確実性が薄れた後の景気拡大の最終的な再開を信じていることを示唆しています。
世界的なシグナルは景気減速を示唆
戦術的には、情勢は軟化しています。一時的に見られた世界的な景気拡大の兆しは、減速方向へと転換しました。リスクセンチメントは悪化しており6、多くの先行指標は比較的安定を保っていますが7、センチメントや信頼感に追随して悪化する可能性があります。先週、その初期的な兆候が見られました。消費者センチメントが弱含み8、米ISMサービス業景況感も減速しました9。景気後退を示す水準ではありませんでしたが、モメンタムは低下しました。
市場は底を打ったのか?おそらく、まだだろう
ここからは、今後数週間の見通しと、多くの投資家が抱いている疑問に話を移します。主要株価指数はすでに調整局面に入っています。ダウ工業株30種平均は約10%下落しました10。S&P500種指数もそれに近い状態です11。MSCIオール・カントリー・ワールド指数(米国を除く)は、11%超下落しました12。市場はすでに底を打ったのでしょうか?私たちが選好する市場底入れ指標に基づけば、現時点での答えはおそらく「ノー」です。
- 強気センチメントは後退しましたが、底入れが定着した局面で通常見られるような極端な水準にはまだ達していません。米個人投資家協会(AAII)のセンチメント調査では、弱気派が強気派を約20ポイント上回りました。過去の市場底値では、この差は50ポイント近くになることもしばしばありました13。
- ボラティリティは上昇していますが、これまでパニックが発生した際に見られた水準までは急騰していません。例えば、VIXは40に達していません14。
- テクニカル面も引き続き悪化しています。S&P500種指数は200日移動平均を下回りましたが、これは安心のサインというよりも、早期の警告サインである可能性があります。2022年の市場の底では、同指数は最終的にこの水準を16%下回るまで下落してから、ようやく堅調な足場を築いていきました15。
もちろん、今日にも戦争終結を告げるソーシャルメディアの投稿がなされれば、そんなことはどうでもよくなるでしょう。しかし繰り返しになりますが、私がそれを知ることができるはずもありません。
これは投資家にとって何を意味するのか?
私は今後も時おり、テレビで軍事ストラテジスト役を演じるような立場に置かれるかもしれませんが、実際には、私は引き続き市場そのものが発しているシグナルに基づいて判断していきます。短期的には、市場が持続的な底値を形成するまでに、まだ課題が残っているかもしれません。戦術的には、景気減速局面では株式へのエクスポージャーを維持しつつも、クオリティや、市場のよりディフェンシブな領域をより重視すべきだと考えています。長期的には、市場が景気サイクル全体はまだ終わっておらず、今回の局面もやがて過ぎ去ることを示している、という点に慰めを見出すことができるかもしれません。
注目の日程
公表日 |
国・地域 |
指標等 |
内容 |
|---|---|---|---|
4月6日 |
グローバル |
イースター・マンデー(一部市場休場) |
流動性の低下と売買高の減少により、取引が行われる市場でボラティリティが増幅し得る |
4月7日 |
米国 |
耐久財受注(2月) |
設備投資動向と製造業のモメンタムを示す |
4月8日 |
米国 |
米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(3月) |
FRBの政策論議と今後の金利動向に関する示唆を提供 |
4月8日 |
ユーロ圏 |
小売売上高(2月) |
消費需要と経済モメンタムの主要指標 |
4月9日 |
米国 |
個人所得・支出/PCEインフレ(2月) |
消費の強さを示す重要指標であり、FRBが選好するインフレ指標 |
4月9日 |
米国 |
国内総生産(GDP)(第4四半期、第3次改定値) |
成長トレンドを確認。改定値はマクロ見通しに影響し得る |
4月10日 |
米国 |
消費者物価指数(CPI)(3月) |
主要インフレ指標。金利と市場に大きな影響 |
4月10日 |
カナダ |
雇用統計(3月) |
労働市場の強さを測り、カナダ銀行の政策見通しに影響を与える |
MC2026-043