イラン戦争:市場センチメントを動かしているものは何か?
〔要旨〕
- 多くの人は、中東紛争が数週間を超えて長引けば、リスク資産にとって大きなマイナスになるだろうと予想していた
- 市場は、これを際限なく拡大する紛争としては織り込まないとの判断を下したように見える
- 市場は、カレンダー上の正確さよりもナラティブ(市場ストーリー)上での決着を求めているようだ:悪化した見通しに対して、相対的に状況が改善しつつあるか?
ナラティブ(市場ストーリー)と個別要因
マクロ環境は引き続き資産価格にとって追い風に
注目の日程
「紛争がどれだけ続くか、それ次第です。」今起こっているイランの紛争期間中、これ以上頻繁に聞いたフレーズはありません。私自身、一度ならず口にしているのは確かです。これは、紛争が経済と市場にもたらす不確実性を説明する際の一種の決まり文句になっています。紛争の持続期間さえわかれば、成長、インフレ、政策、市場への影響も分かるのにというわけです。
当初多くの人は、事態が数週間を超えて長引けば、リスク資産にとって大きなマイナスになるだろうと予想していましたが、いまや6週間に近づきつつあります。それでもS&P500種指数は紛争開始以降、ほぼ横ばいで推移しています1。クレジット・スプレッドは縮小しました2。ボラティリティは当初急上昇し、その後低下しました3。市場は―しばしばそうであるように—ショックを吸収したかのように見えます4。
こうした現実は、当初の想定の見直しを迫ります。
ナラティブ(市場ストーリー)と個別要因
最も重要なのは、紛争の継続期間そのものではなかったのかもしれません。むしろ、市場が「終わりが見えない」という見方に屈するかどうかが重要だったのかもしれません。投資家は、特に昨年の「解放の日」後の急変動を経験してからは、出口の見えない最悪のシナリオを積極的に織り込もうとする意欲をほとんど示していません5。過度に早く守りに入りすぎることのコストが、投資家の記憶にまだ新しいのかもしれません。
そうした文脈では、市場はある種の判断を下したように見えます。これを、際限なく拡大していく紛争としては織り込んでいないように見えるのです。先週見られたような停戦協議ですら—それが持続可能かどうかは別として—リスクセンチメントを押し上げるには十分でした。安心を得るためのハードルは、驚くほど低くなっています。
停戦条件は依然として不明確です。懐疑派からは、ホルムズ海峡におけるイランによる通行料徴収や、損傷したエネルギーインフラの再建に要する時間といった問題について、早々に懸念の声が上がっています。当初の報道によれば、イランはホルムズ海峡を通過する原油1バレル当たり、1ドルの通行料を要求する見通しだと伝えられました6。ホルムズ海峡の通行が政治的な要素を帯びれば、エネルギー産業全体の保険料や資金調達コストを押し上げる可能性もあります。
これらのリスクは現実のものですが、インセンティブもまた重要な要素です。イランには、エネルギーの流通を正常化すべき理由が山ほどあります。この地域のアラブ産油国にとっても、インフラを迅速に再建し、市場シェアを維持する強いインセンティブがあります。エネルギーシステムが恒久的に損なわれれば、関係する全ての当事者に打撃を与えることになります。
それは、原油価格が1バレル55ドルに戻るということでしょうか7?必ずしもそうとは限りません。しかし、紛争前と比べれば依然として高い水準を維持しつつも、直近のピークからは価格が下落し得ることを示唆しているのでしょうか?私には、その可能性が高いように思われます。結局のところ、終息の見通しが立つかがわからない状態から、いつか終息するだろうと信じられる状態への心理的な変化の方が、終息の正確な日付を知ることよりも重要なのかもしれません。市場は、カレンダー上の正確さよりもナラティブ(市場ストーリー)の決着を求めているように見え、悪化した見通しに対して状況が単に改善しつつあるだけでも、相場が好調に推移する傾向にあります。
マクロ環境は引き続き資産価格にとって追い風に
紛争自体を除けば、より広範なマクロ環境は依然として資産価格に対して追い風となっています。世界の先行指標は底堅さを維持しています8。インフレ期待は高止まりしつつも、抑制されています9。またコアインフレに関する報告が低調だったことを受け10、米連邦準備制度理事会(FRB)は、今後どこかの段階で利下げを検討し始める可能性さえあります。これは年初に感じられたような理想的なゴルディロックス(適温相場)的環境ではありませんが、それでも私は、リスク資産を支え得る環境が依然として続いていると見ています。
結論:市場への影響は、そもそも紛争期間そのものに完全に左右されるわけではなかったのかもしれません。むしろ投資家が紛争期間を「有限だ」と信じられるかどうかにかかっている可能性があります。
注目の日程
公表日 |
国・地域 |
指標等 |
内容 |
|---|---|---|---|
4月14日 |
米国 |
生産者物価指数(PPI) |
卸売段階でのインフレ圧力を測定し、FRBの政策決定に影響を与え得る |
4月15日 |
米国 |
ニューヨーク連銀製造業景気指数(エンパイア・ステイト景況指数) |
製造業活動と企業の景況感の早期指標を提供 |
4月15日 |
米国 |
輸出入価格 |
国際貿易と為替変動による価格圧力を追跡 |
4月16日 |
米国 |
小売売上高 |
米国の経済成長の大部分を牽引する個人消費の主要指標 |
4月16日 |
米国 |
鉱工業生産・設備稼働率 |
工場の生産高と産業セクターの余剰能力の度合を測定 |
4月16日 |
米国 |
フィラデルフィア連銀製造業調査 |
製造業の健全性と需要動向の地域的スナップショット |
4月16日 |
中国 |
国内総生産(GDP)(第1四半期) |
世界第2位の経済大国による世界的な成長モメンタムに関する重要シグナル |
4月16日 |
中国 |
鉱工業生産 |
中国の製造業と輸出セクターの強さを反映 |
4月16日 |
中国 |
小売売上高 |
中国の国内経済における消費需要を測定 |
4月16日 |
英国 |
労働市場データ |
賃金の伸び、雇用情勢、インフレ圧力に関する示唆を提供 |
4月16日 |
カナダ |
消費者物価指数(CPI) |
カナダ銀行の金融政策決定の指針となる主要インフレ指標 |
4月13~19日 |
グローバル |
国際通貨基金(IMF)春季会合 |
政策当局のコメントが世界経済見通しと金融市場に影響し得る |
MC2026-049