弱気派よ、気を付けろ:強気相場の勢いを支える根拠
〔要旨〕
- AI需要の強化、企業収益の改善、物色の広がり、そしてインフレ懸念の緩和に伴い、市場の弱気派が掲げてきた主張の多くは色あせてきた
- AIエージェントの利用が拡大し、今後何年にもわたるデータや演算の処理能力への需要を生み出すのであれば、AIインフラ投資は収益バブルの兆候とはならない可能性がある
- S&P500種指数の力強い上昇とより幅広い銘柄による貢献が市場の勢いを支える中で、強気相場は弱気派の見方に挑戦し続けている
懸念:AIへの需要がない
懸念:バリュエーションが高すぎる
懸念:集中リスク
懸念:循環的な資金調達
懸念:地政学、原油、インフレ
今後生じ得る懸念:収益バブル
S&P500種指数の上昇
注目の日程
私はベアを気の毒に思っています。といっても、スタジアムの交渉が州境を越えて進み続けた場合、いつの日かインディアナ州に本拠を移すかもしれない、シカゴ・ベアーズのことではありません。
私が言っているのは、市場のベア(弱気派)のことです。
この相場は、彼らの懸念を一つひとつ打ち崩してきたと私は考えています。
懸念:AIへの需要がない
かつて、人工知能(AI)はビジネスモデルを模索する科学プロジェクトの域を出ない、との主張がありました。現在では、議論の様相は劇的に変化しています。需要は急増し、多くの場合、もはや顧客を見つけること自体が大きな課題ではありません。顧客を満足させるのに十分なチップ、電力、メモリ、データセンター容量、そして電力インフラを確保することこそが課題となっています。
懸念:バリュエーションが高すぎる
多くの投資家は、株価が単純に高すぎると主張していました。しかし、企業収益および収益見通しが急速に伸びたため、相場が上昇を続けた中でも、バリュエーションそれほど割高には見えなくなっています1。市場は現在、4年連続で力強い上昇を続けており、これは多くが不可能だと考えていたことです2。
懸念:集中リスク
ひと握りのメガキャップ・テクノロジー企業が市場の上昇の大部分を担っており、それは持続可能ではないと考えられてきました3。しかし今年は、均等加重指数が時価総額加重指数を上回るパフォーマンスとなっています4。市場への貢献の裾野は大幅に広がっており、銘柄の3分の2近くが200日移動平均線を上回って取引されています5。私の見るところ、これは市場が狭い基盤の上に立っていることを示すものではなく、むしろ健全に広がりつつあることの証左といえます。
懸念:循環的な資金調達
批判派は、AI関連投資は、企業が自社の製品や資金調達の仕組みを用いて需要の自己増強的な循環を作り出しているようなものだと主張しました。エヌビディアが最近、大手金融機関を巻き込んで発表した内容は、このストーリーに大いなる疑問を投げかけるものです6。AIインフラへの投資資金は、エヌビディア自身に依存するのではなく、外部の投資家が資金提供する動きが強まっています。これにより、エコシステムは独立した資金調達に支えられた伝統的な設備投資サイクルに近づき、支出が同じ企業グループ内に単に還流しているだけとの懸念からは遠ざかっています。
懸念:地政学、原油、インフレ
確かに、ニュースの見出しには不安を掻き立てるものが多くみられました。しかし、ボラティリティが生じた局面はあったものの、原油価格は足元で4月中旬の水準にとどまっています7。債券市場に織り込まれているインフレ期待は大きく低下しました8。今週は、好ましい消費者物価および生産者物価データというさらなる心強い材料がもたらされました9。ここでも、懸念されていた結果は現実のものとはなっていません。
では、ベア(弱気派)は次にどこへ向かうのでしょうか。もちろん、インディアナ州のことではありません。
今後生じ得る懸念:収益バブル
次に来るのは、収益バブルへの懸念だと思われます。その主張は、ハイパースケーラーがAIインフラにあまりに積極的に投資しており、将来の需要を前借りしているというものです。この見方によれば、足元の投資は、半導体、メモリ、ネットワーク、電力、産業関連企業にとって、数年分の収益を先取りしているにすぎないということになります。しかしこの見方は、より大局的な観点を見落としている可能性があります。現在世界で約25万人が、自身のために働くAIエージェントを24時間体制でトレーニングしていると推計されています10。印象的な数字に聞こえますが、地球上に約80億人がいることを思い起こせばそれほどでもなくなります。数十万人ではなく数億人が、自身に代わって継続的に業務を行うエージェントを導入している世界を想像してみてください。
そのような未来が訪れるのならば、足元の投資ブームは、後から振り返れば過剰とは映らないかもしれません。むしろまだ初期段階にあったと映る可能性さえあります。実際、あえて踏み込んで言えば、エコシステム全体で巨額の投資が行われているにもかかわらず、需要が供給余力を絶えず圧迫し、演算能力の制約がほぼ恒常的となっている状態が、今後何年も続く可能性があります。
そこで再び、ベア(弱気派)の話に戻ります。
S&P500種指数の上昇
S&P500種指数は、2023年に26.26%、2024年に25.00%、2025年に17.86%上昇し、2026年は年初来で13.95%上昇しています11。私には、あらゆる上昇局面に抗い続ける姿勢は、ある時点から、規律というより頑なさに映り始めます。市場のベア(弱気派)は、とうに冬眠に入っているべきだったというのが私の見方です。
シカゴについて言えば、ベアーズを失う可能性があることは気の毒に感じますが、少なくとも同市には、まだブルズが残っています。私自身も、少なくとも市場の意味合いにおいては、ブル(強気派)の一員であり続けられることを嬉しく思います。もっとも、1990年代の大半にわたって、私の愛するニューヨーク・ニックスの優勝の夢を打ち砕いたマイケル・ジョーダンとその仲間たちを、私が許すとは期待しないでください。ニックスがついに優勝を果たしたとしても、決して癒えない傷はあるのです。
注目の日程
公表日 |
国・地域 |
指標等 |
内容 |
|---|---|---|---|
8月17日 |
中国 |
鉱工業生産、小売売上高(7月) | 工場生産と家計需要を把握する主要指標 |
8月17日 |
カナダ |
消費者物価指数(CPI)(7月) |
カナダ銀行(BOC)の政策見通しにとって重要なインフレ指標 |
8月18日 |
英国 |
雇用統計 |
賃金の伸びと雇用が冷え込みつつあるかを示す |
8月19日 |
米国 |
米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨 |
FRBの政策金利の道筋を探る手がかりとなり得る |
8月19日 |
英国 |
消費者物価指数(CPI)(7月) |
イングランド銀行(BOE)の政策見通しにとって重要なインフレ指標 |
8月20日 |
中国 |
最優遇貸出金利(LPR)決定 |
銀行貸出と不動産部門の資金調達にとっての政策スタンスのシグナル |
8月21日 |
米国 |
S&Pグローバル購買担当者景気指数(PMI)速報値(8月) |
製造業とサービス業の活動を早期に把握する指標 |
8月21日 |
ユーロ圏 |
S&Pグローバル購買担当者景気指数(PMI)速報値(8月) |
ユーロ圏の製造業とサービス業の活動を早期に把握する指標 |
8月21日 |
英国 |
小売売上高、S&Pグローバル購買担当者景気指数(PMI)速報値(8月) |
個人消費と企業活動の勢いを測る指標 |
| 8月21日 | 日本 | S&Pグローバル購買担当者景気指数(PMI)速報値(8月) | 製造業とサービス業の活動を早期に把握する指標 |
MC2026-095