健全な市場ローテーション説 対 テクノロジー・バブル説
〔要旨〕
- 今は1999年ではない。今日の市場は、ドットコム・バブル崩壊前の市場よりもはるかに健全で、バランスが取れているように見える
- テクノロジーセクター内の牽引役は、AI関連投資の恩恵を受ける企業へと移行した。これはローテーションであり、崩壊ではないと考えられる
- 原油価格は下落し、インフレ期待は低下しており、ブレークイーブン・インフレ率はインフレの加速ではなく鈍化を示唆している
テクノロジーセクター内のローテーション
物色の広がり
インフレ期待の低下
注目の日程
今日の市場を1990年代後半になぞらえたくなる気持ちは理解できます。とりわけ、アラン・グリーンスパン氏の逝去や、最近のテクノロジー株の下落という状況下ではそうでしょう。しかし、そうした比較はうまく当てはまりません。投資家は、あらゆる調整局面にテクノロジー・バブルの影を見出そうとするかもしれませんが、現在の環境は、ドットコム・バブル崩壊前の状況に比べてはるかに健全で、はるかにバランスの取れたものであるように見えます。グリーンスパン時代の特徴は、テクノロジー株の暴騰と1、そうした上昇局面で金融引き締めを行う米連邦準備理事会(FRB)という構図にありました2。今日の状況は違います。水面下で進行しているローテーションはより広範囲に及ぶと見られ、経済の基盤もより安定的と考えられます。いまは、1999年ではありません。
テクノロジーセクター内のローテーション
テクノロジー株の勢いは、確かにここ数週間で落ちていますが3、重要なのは背景です。S&P500種情報技術セクターは、今年に入って依然、約15%上昇しました4。これは以前のピークから減速したとはいえ、いかなる過去の基準に照らしても力強いリターンと言えます。さらに興味深いのは、この力強さが、マグニフィセント・セブンが総じて売られる中で生じたという点です5。テクノロジーセクター内の牽引役は、AI関連への大規模な投資を行ってきたアルファベット、アマゾン、メタ、マイクロソフトといったハイパースケーラー企業から、それらの投資の恩恵を受ける企業へと移行してきました6。私にとって、これはローテーションであり、崩壊とは言えません。
物色の広がり
このローテーションは、テクノロジーセクターのみに留まるものではありません。S&P500種指数の構成銘柄のうち、残りの493社も6月は上昇し、年初来で14%超の上昇となっています7。これはまさに、市場が過度に集中していると批判されていた2024年に、多くの投資家が望んでいた物色の広がりそのものです。資本財・サービス、不動産、金融の各セクターは、過去3カ月にわたり力強いパフォーマンスを示してきました8。小型株指数は史上最高値を更新しています9。これらは私にとって、市場の脆弱性を示す兆候ではなく、むしろ市場をサポートする基盤が拡大しつつあることを示す兆候です。
テクノロジー株はここ最近「6月の低迷」に見舞われていますが、決算シーズンが近づくにつれて、この状況は容易に反転する可能性があります。仮に当該セクターが力強い上昇後の調整局面に入っているとしても、それ自体は本質的にマイナスではありません。とりわけ市場の他のセクターが勢いを増している場合は、調整は健全な動きかもしれません。一握りのメガキャップ株に依存している市場は脆弱になりがちですが、牽引役が入れ替わる市場は、回復力があるものとなり得ます。
インフレ期待の低下
2つ目の懸念はインフレ、そしてケビン・ウォーシュFRB議長が利上げを行い、1999年のグリーンスパン氏を彷彿とさせる形でサイクルを終わらせるのではないかとの不安です。私の見るところ、その懸念は過大評価されています。イールドカーブの形状は、政策がすでに引き締め的であることを示しており10、私はこれを、追加的な引き締めのハードルが高い可能性があることを意味すると捉えています。原油価格は大幅に下落し11、インフレ期待は低下しています12。メモリ価格は上昇しており13、これによりノートパソコンやタブレットの価格が上昇していますが、このカテゴリーは消費バスケットのごく一部にすぎません。ブレークイーブン・インフレ率は信頼できる指針となり得ますが、その動向はインフレの加速ではなく鈍化を示唆しています14。
グリーンスパン氏による「根拠なき熱狂」への警告は、時期尚早でした。今日の状況は、私にとって過熱の局面とは感じられません。むしろ、健全なローテーションの過程にある市場であり、引き締めにより軟化に導くよりも、政策を据え置く可能性の方が高いように思われます。投資家は、過去のバブルの亡霊を見出そうとするかもしれませんが、私の見るところ、根拠となるデータは全く異なるストーリーを示しているように思われます。
注目の日程
公表日 |
国・地域 |
指標等 |
内容 |
|---|---|---|---|
6月29日 |
日本 |
失業率(5月) |
労働市場の状況を測る主要指標 |
6月29日 |
日本 |
鉱工業生産(速報値、5月) |
工場の生産量の変動を追跡 |
6月30日 |
中国 |
購買担当者景気指数(PMI)(6月) |
全体的な業況を測る指標 |
6月30日 |
欧州 |
ドイツ消費者物価指数(CPI)(6月) |
消費者物価の変動を追跡 |
6月30日 |
日本 |
日銀短観(第2四半期) |
企業の景況感に関する調査 |
6月30日 |
米国 |
消費者信頼感指数(6月) |
家計のセンチメントを測る指標 |
7月1日 |
中国 |
製造業購買担当者景気指数(PMI)(6月) |
製造業の状況を追跡 |
7月1日 |
欧州 |
ユーロ圏消費者物価指数(CPI)(速報値、6月) |
域内インフレを測る主要指標 |
7月1日 |
米国 |
ADP雇用統計(6月) |
民間部門の雇用動向に関する早期指標 |
7月1日 |
米国 |
ISM製造業景気指数(6月) |
製造業活動を測る月次指標 |
7月2日 |
欧州 |
ユーロ圏失業率(5月) |
労働市況を測る指標 |
7月2日 |
米国 |
雇用統計(6月) |
雇用動向の全体像を示す |
7月2日 |
米国 |
製造業受注(5月) |
製造業製品の需要を示す |
7月3日 |
中国 |
サービス業購買担当者景気指数(PMI)(6月) |
サービス業の活動を追跡 |
MC2026-079