強気相場の点検:注目すべき主要シグナル
〔要旨〕
- 強気相場は、誰かが終わると指摘したからと言って終わるものではない。通常は、相場を支えてきた条件が悪化し始めたときに終わりを迎えてきた
- インフレは沈静化しつつあるように見え、FRBは引き締めにあまり前向きでない姿勢を示し、利益成長は健全に推移し、相場を主導する銘柄の裾野は広がりつつある
- 大幅な業績未達、業績予想の下方修正、流動性の引き締め、抑制的な金融政策といった、通常、強気相場を終わらせてきた要因が生じているようには見られない
注目すべきポイント:インフレ、FRB、ファンダメンタルズ
警告サインはまだ見られず
注目の日程
半導体関連の銘柄で最近売りが見られたにもかかわらず、今回の強気相場は目覚ましいものでした1。地政学的緊張やエネルギー価格の上昇3、そして上昇相場が終わりに近づいているとの予測が絶え間なく出されたにもかかわらず、今年に入って株価は上昇を続けてきました2。こうした背景を踏まえれば、JPモルガン・チェース・アンド・カンパニーのジェイミー・ダイモンCEOが今四半期の決算報告に際し、現在の環境を「これ以上ないほど良好な状態に近い」と表現したのも、驚くにはあたりません4。大手金融機関にとっては、極めて良好な事業環境が続いてきました。資本市場は開かれた状態にあり、新規株式公開(IPO)の活動が活発化しています5。取引高も堅調に推移してきました6。資産運用業は、資産価値上昇の恩恵を受けています。私の見るところ、ダイモン氏の指摘は正しく、銀行業界にとっては、まさに絶好の事業環境が続いてきたといえます。
一方ダイモン氏はすかさず、この状況が永遠に続くわけではないとの忠告も付け加えました。発言のこの部分は大きな注目を集め、不吉な警告と受け取られかねないものでした。しかし、私はそうは受け取りませんでした。良い時もいずれ終わりを迎えるというのは、決して物議を醸すような発言ではありません。強気相場は、誰かが終わるだろうと指摘したからといって終わるものではなく、相場を支える条件が悪化し始めたときに終わるのです。それでは、どのような状況になれば、投資家の懸念は強まるのでしょうか。
注目すべきポイント:インフレ、FRB、ファンダメンタルズ
歴史的に見ると、その答えの一つは、インフレの上昇に伴い、米連邦準備理事会(FRB)が積極的な政策的引き締めによって信用拡大を抑制していった場合でした。今週、そうした兆候はほとんど見られませんでした。6月のエネルギー価格下落を受け8、先月の消費者物価は下落し7、生産者物価の上昇率も予想を下回りました9。こうした中で、FRB当局の発言は比較的ハト派的なトーンでした。ニューヨーク連銀のジョン・ウィリアムズ総裁は、インフレはピークを過ぎた可能性が高く、今後数四半期にかけて低下していくだろうと述べました10。おそらくそれ以上に重要なのは、ケビン・ウォーシュFRB議長が、人工知能(AI)に振り向けられている巨額の投資が将来的に、生産性向上によって供給力を高め、インフレを抑える方向に働く可能性があると強調したことです11。中央銀行が積極的な政策的引き締めに動こうとしているのであれば、こういう言い方にはならなさそうに思われます。
投資家が弱気に転じるもう一つの典型的な理由は、ファンダメンタルズが悪化し始めることです。AI関連の相場がより厳しい局面に入りつつあることは間違いありません。期待は大幅に高まっており、予想を上回る業績を上げた企業であっても、1年前のように必ずしも高い評価を得られるとは限らなくなっています。市場は、主に業績のサプライズに牽引されていた局面から、将来の利益成長の持続性により大きく依存する局面へと移行しつつあるようです。言い換えれば、投資家は企業の業績が予想を上回ること自体には以前ほど感銘を受けなくなりつつあり、現在の成長が持続可能かどうかに、より注目するようになっています。
ただし、こうした変化を状況の悪化と混同すべきではありません。利益成長は、幅広いセクターで引き続き堅調に推移しています12。実際、より明るい兆しの一つは市場の裾野の広がりの改善であり、均等ウエイト型の指数がアウトパフォームし13、相場を主導する銘柄が最大手のテクノロジー企業以外にも広がりつつあります。金融、資本財・サービスをはじめとするシクリカルセクターが、引き続き相場の上昇に寄与しています14。同じく重要な点として、弱気相場入りに通常伴うような、大幅な業績の下振れや広範な下方修正の兆候はほとんど見られていません。
警告サインはまだ見られず
市場が最終的に脆弱になり得るのは、業績予想が大幅に下方修正され始めると同時に、金融政策が抑制的になるときです。私たちはこの組み合わせを、単にバリュエーションが高止まりしていることよりも信頼性の高い警告サインと捉えています。現時点では、兆候はむしろその逆の方向を示しています。インフレは沈静化しつつあるように見え、FRBは引き締めにあまり前向きでない姿勢を示し、利益成長は健全に推移し、相場を主導する銘柄の裾野も広がりつつあります。永遠に続く強気相場はないということを、投資家は常に心に留めておくべきです。しかし、大幅な業績未達、業績予想の下方修正、流動性の引き締め、抑制的な金融政策など、通常強気相場を終わらせるような要素は、現在のところ揃っているようには見えません。
注目の日程
公表日 |
国・地域 |
指標等 |
内容 |
|---|---|---|---|
7月20日 |
米国 |
SCEクレジットアクセス調査 |
家計の与信状況と借入需要を知る手がかり |
7月20日 |
中国 |
最優遇貸出金利(LPR)決定 |
銀行融資と不動産セクター向け金融の政策スタンスを示す |
7月21日 |
米国 |
フィラデルフィア連銀非製造業景況調査(7月) |
サービス部門の活動に関する地域指標 |
7月21日 |
欧州 |
ユーロ圏銀行貸出調査 |
ユーロ圏全体の与信基準と貸出需要を追跡 |
7月21日 |
日本 |
貿易収支(6月) |
輸出需要と輸入コスト圧力を知る手がかり |
7月22日 |
米国 |
S&Pグローバル製造業購買担当者景気指数(PMI)(7月) |
製造業部門のモメンタムを適時に測る指標 |
7月22日 |
米国 |
S&Pグローバルサービス業PMI(7月) |
サービス部門のモメンタムを適時に測る指標 |
7月23日 |
米国 |
新規失業保険申請件数 |
労働市場の状況を示す指標 |
7月23日 |
欧州 |
欧州中央銀行(ECB)政策金利決定 |
ユーロ圏金融政策の道筋を示す主要シグナル |
7月23日 |
日本 |
全国消費者物価指数(CPI)(6月) |
日銀の政策決定を前にした重要なインフレ指標 |
7月23日 |
日本 |
S&PグローバルPMI(速報値)(7月) |
製造業・サービス業の活動を早期に把握する指標 |
7月24日 |
米国 |
新築住宅販売件数(6月) |
住宅需要と消費者信頼感を測定 |
7月24日 |
欧州 |
S&PグローバルPMI(速報値)(7月) |
ユーロ圏の製造業・サービス業の活動を早期に把握する指標 |
MC2026-084