市場のボラティリティが、強気相場を支える可能性
〔要旨〕
- 長期的な強気相場は、通常一直線には進まない。疑念、失望、下落の局面が相場をリセットし、サイクルを延長させる可能性がある
- AIに対する懐疑的な見方は理解できるが、不安の高まりは、必ずしも投資テーマの前提が弱まったことを意味するものではない
- 構造的な強気相場は、まだ初期段階にあると思われる投資テーマと堅調な経済に支えられ、維持されている
過去のテクノロジーサイクルからの示唆
いくつかの課題
構造的な強気相場
注目の日程
長期的な強気相場は、一直線に進むものではありません。実際、市場の歴史上最も力強い上昇局面のいくつかには、疑念、失望、下落によって特徴づけられる期間が含まれ、それらが最終的に相場をリセットし、サイクルを延長させる役割を果たしてきました。いわゆるマグニフィセント7の最近の動向は、その好例と言えます1。2024年初め以降、マグニフィセント7はいくつかの大きな下落局面を経つつも、並外れたリターンを上げてきました2。「解放の日」を巡る売り、中東紛争に対する市場の反応、そして最近では、巨額の人工知能(AI)投資へのリターンを巡る懸念を背景とした、モメンタム主導の調整などです。しかし、こうしたボラティリティが高まる局面においても、そのパターンは驚くほど一貫していました。高値はさらに上昇し続け、安値も上がり続けたのです。これはマグニフィセント7銘柄だけでなく、S&P500種指数にも当てはまります3。これこそまさに、強気相場がしばしば見せてきた姿といえます。
過去のテクノロジーサイクルからの示唆
最も変革的な技術革新のサイクルでさえ、最終的には「本当にうまくいくのか」という新たな疑念や懸念を生み出してきました。当初の熱狂は、バリュエーションや収益性、そして期待が現実を過度に先取りしすぎていないかといった疑問に取って代わられました。AIも例外ではないことが判明しつつあります。先週アルファベットは、クラウド事業の健全な成長、底堅い検索需要、そしてYouTubeにおける堅調な広告収入を目玉とする好調な四半期決算を発表しました4。通常であれば、こうした決算は株価を大きく押し上げるのに十分だったかもしれません。しかし実際には多くの投資家が、設備投資と、その投資からのリターンを実現するまでの時間軸に注目する姿勢を崩しませんでした。こうした懐疑的な見方は理解できます。しかし、不安が高まっていることは、必ずしも投資テーマの前提が弱まったことを意味するわけではありません。多くの場合それは、市場が長期的な機会と短期的な期待の折り合いをつけようとしていることの表れです。
弱気派は、投機的な過熱、市場の過大評価、持続的なインフレ、地政学的な不確実性などについて警告を発し続けてきました。こうした懸念は十分に考慮すべきものです。しかし、より広範な市場データからは、よりバランスの取れた姿が浮かび上がってきます。予想利益成長率に対するバリュエーションを測定するS&P500種指数の株価収益成長倍率(PEGレシオ)は、過去20年平均の1.78倍に対し、足元では約1.27倍となっています5。一方で同指数は、200日移動平均を約6.1%上回る水準で推移していますが6、過去20年間、この上方プレミアムの平均は約5.1%でした7。言い換えれば、バリュエーションと市場のポジショニングは、多くの見出しが示唆するほど過熱しているようには見えないということです。
いくつかの課題
もちろん、マクロ経済環境には課題も存在します。中東紛争の拡大、エネルギー価格の上昇8、債券利回りの上昇は9、投資家にとって望ましくない動きに違いありません。したがって短期的には、市場はこうした現実への適応を迫られるかもしれません。それでも、いくつかの重要な考慮すべき事項が残っています。第1に、米国の消費者が可処分所得のうちガソリン代に費やす割合は、歴史的にみて低い水準にとどまっています10。以前にも見られた通り、燃料価格の上昇は経済活動を減速させる可能性がありますが11、それは経済の崩壊を引き起こすこととは全く異なります。第2に、金融市場はすでに、金融政策への期待に関する大幅な再評価を織り込んでいます12。投資家は、複数回の利下げを見込む状態から、利上げの可能性を考慮する段階へと移行しました。それでも、この調整過程を通じて、クレジット市場は秩序を保ち続けました13。私自身は、米連邦準備理事会(FRB)は据え置きを決定する可能性が高いとの見方を維持しています。第3に、今後5年間のインフレ期待は2.3%近辺にとどまっており14、これは物価の安定と整合性がとれている水準です。最後に、地政学的な情勢は急速に変化し得ます。停戦の成立も、それが崩れるのと同じくらい急に起こり得るということです。
構造的な強気相場
結局のところ、これは市場の構造的な変化というよりも、AIがもたらす投資機会への期待が高まる一方で、マクロ経済に対する不安も同時に強まる中、市場が折り合いをつけようとしている状態のように見えます。市場の調整局面や投資家の懐疑的な見方は、長期的なストーリーが崩れたことを示すものではありません。それらは多くの場合、プロセスの一部です。私の見るところ、構造的な強気相場は、まだ初期段階にあると思われる投資テーマと、懸念材料が増え続ける中でもレジリエンス(回復力)を示し続けてきた経済に支えられ、維持されています。
注目の日程
公表日 |
国・地域 |
指標等 |
内容 |
|---|---|---|---|
7月27日 |
米国 |
耐久財受注(6月) |
企業の設備投資と製造業需要を示す指標 |
7月27日 |
ユーロ圏 |
M3マネーサプライ・民間向け貸出(6月) |
ユーロ圏全体の信用の伸びと流動性の状況を追跡 |
7月28日 |
米国 |
コンファレンス・ボード消費者信頼感指数(7月) |
家計のセンチメントと潜在的な消費支出のモメンタムを測る指標 |
7月29日 |
米国 |
FRB政策金利決定 |
米国金融政策の道筋を示す主要シグナル |
7月30日 |
米国 |
国内総生産(GDP)(第2四半期、速報値) |
米国経済の成長を測る広範な指標 |
7月30日 |
米国 |
個人消費支出(PCE)価格指数(6月) |
FRBが選好するインフレ指標 |
7月30日 |
英国 |
イングランド銀行政策金利決定 |
英国の金融政策とポンド建て資産にとって重要なシグナル |
7月30日 |
ユーロ圏 |
GDP(第2四半期、速報値) |
ユーロ圏の成長モメンタムを適時に把握する指標 |
7月30日 |
日本 |
東京都区部消費者物価指数(CPI)(7月) |
日本のインフレ動向を早期に把握する指標 |
7月31日 |
中国 |
製造業・非製造業購買担当者景気指数(PMI)(7月) |
世界第2位の経済大国の活動を早期に把握する指標 |
7月31日 |
日本 |
日銀政策金利決定 |
日本の政策の道筋と円市場にとっての主要シグナル |
7月31日 |
ユーロ圏 |
消費者物価指数(CPI)(7月、速報値) |
欧州中央銀行(ECB)にとって重要なインフレ指標 |
7月31日 |
米国 |
雇用コスト指数(第2四半期) |
インフレに影響し得る賃金・給付面の圧力を測る指標 |
MC2026-087