株式市場の悲観論者が見落としているかもしれないこと
〔要旨〕
- 足元の悲観論が腑に落ちないのは、主要なマクロ面のプレッシャーが緩和しつつあると見られるタイミングで、こうした見方が広がっている点だ
- 堅調な企業収益の成長と、政策を据え置くFRBという取り合わせは、市場にとって前向きな材料となり得る
- 今回の市場サイクルもいずれ終わりを迎える。そうなるものだからだ。しかし通常は、クレジット・スプレッドの縮小とインフレ期待の低下を伴って終わることはない
事実によって主張の正しさが否定される時もある
マクロ面のプレッシャーは緩和しつつある
企業収益が示す力強いストーリー
注目の日程
一部の投資家が、相場の上昇を「できすぎている」と感じているというエビデンスが、私のもとに集まってきつつあります。それは主に、友人や家族との会話に基づくものです。しかし複数の人がわざわざ、著名な金融番組のテレビ司会者が「いつか暴落が来る」と警告していたことを私に見せようとしてきた際は、強い衝撃を受けました1。これは特段、目新しい話というわけではありません。あらゆるサイクルには終わりが来ます。その悲観的な司会者自身も、暴落がいつになるかは分からないと認めていました。
仕事関連のソーシャルメディアのフィードをざっと眺めるだけでも、こうした点が改めて浮き彫りになります。いつもの悲観論者たちが勢ぞろいし、インフレ・スパイラルが到来した、金利は上昇し続ける、そして米国の債務問題がついに破綻しつつある、との主張を繰り広げています。パーマベア(万年弱気派)が待ちに待った瞬間がついに訪れたというわけです。果たして、本当にそうでしょうか。
事実によって主張の正しさが否定される時もある
懐疑的な見方に拍車をかけているのが、著名なメモリチップ企業の株価が2カ月で200%近く上昇したことです2。これは、同期間のS&P500種指数の18.5%上昇を牽引する要因となりました3。一部の人々には、この状況は持続不可能だと捉えられています。当該企業が予想利益ベースでわずか10倍で取引されていることはさておき4、S&P500種指数が2カ月で18.5%以上上昇した、過去18回の局面と比較してみましょう。うち16回で、その後6カ月間のリターンがプラスとなり、平均上昇率は10.6%でした5。ときに事実が、悲観論者の説得力ある筋書きを阻むのです。
マクロ面のプレッシャーは緩和しつつある
懐疑論者たちの主張は、いずれ正しかったことになるでしょう。たいていの場合、いつかはそうなります。問題はそのタイミングであり、私はそれが、今ではない可能性が高いと考えています。足元の悲観論がとりわけ腑に落ちないのは、主要なマクロ面のプレッシャーが緩和しつつあると見られるまさにそのタイミングで、こうした見方が広がっているという点です。原油価格、金利、インフレ期待は、いずれもピークアウトの兆しを見せています6。確かに、直近のコア個人消費支出(PCE)価格指数は3.3%と望ましくない方向に動きましたが7、市場はすでにそれを認識していました。また、米連邦準備理事会(FRB)の利下げが、大きな混乱を伴うことなく織り込み解消されていく様子も、すでに目の当たりにしています8。
より重要なのは、インフレブレークイーブン金利が低下傾向にあることです9。市場は、インフレが実質的に再加速しているわけではない、という見方を次第に受け入れつつあるようです。地政学的な不確実性は依然として残っています。イラン戦争の決着も、ホルムズ海峡情勢も、どうなるか分かりません。しかし市場は、結果が現実化するかなり前からそれを織り込む傾向があり、こうしたリスクも最終的には沈静化するだろうとの見方が広がっています。
では、悲観論者たちが見落としている点とは何でしょうか。
企業収益が示す力強いストーリー
第1に、企業収益です。米国企業の収益は第1四半期に28%増加し、1桁台半ば(5%前後)となるとの予想を大きく上回りました10。株価は同じペースでは上昇しておらず、バリュエーションが低下したことを意味しています11。
第2に、割引率です。市場はすでに、FRBの金融政策が以前ほど緩和的ではなくなるとの見通しを織り込み済みです。インフレ期待は足元で概ね低下傾向にあり12、こうした環境でFRBが利上げを行うとは考えにくい状況です。
堅調な企業収益の成長と、政策を据え置くFRBという取り合わせは、私の見るところ前向きな材料です。原油価格と金利がともに低下を続ければ、市場を牽引する銘柄の広がりを後押しする可能性もあります。
悲観論者は、往々にして賢明に聞こえます。その主張には説得力があります。確かに今のサイクルも、いずれ終わりを迎えます。そうなるものだからです。しかし通常は、クレジット・スプレッドの縮小13とインフレ期待の低下を伴って終わることはありません14。パーマベア(恒常的な弱気論者)にもいずれ、自分たちが正しかったと皆に知らしめる瞬間が訪れるでしょう。しかしその瞬間が訪れたとき、市場は現在よりも高い水準にあるかもしれません。
注目の日程
公表日 |
国・地域 |
指標等 |
内容 |
|---|---|---|---|
6月1日 |
米国 |
ISM製造業景気指数(5月) |
米国経済全体の工場活動と事業環境を測る主要指標 |
6月1日 |
中国 |
財新製造業購買担当者景気指数(PMI)(5月) |
工場活動と輸出需要の早期指標 |
6月1日 |
日本 |
製造業PMI(確報値) |
日本の製造業部門の勢いと世界貿易への感応度 |
6月1日 |
ユーロ圏 |
製造業PMI(確報値) |
域内の製造業の健全性とより広範な成長トレンド |
6月1日 |
英国 |
製造業PMI(確報値) |
事業活動と内需環境に関する示唆を提供 |
6月1日 |
ユーロ圏 |
失業率(4月) |
消費支出の主要な牽引役である労働市場の強さ |
6月2日 |
ユーロ圏 |
消費者物価指数(CPI)速報値(5月) |
欧州中央銀行(ECB)の政策見通しを形作る主要なインフレ指標 |
6月3日 |
中国 |
サービス業PMI(5月) |
消費関連セクターと内需の強さを示す |
6月3日 |
米国 |
ADP雇用報告(5月) |
公式雇用統計に先立つ民間雇用の早期指標 |
6月3日 |
米国 |
製造業受注(4月) |
製造業の需要動向と勢い |
6月3日 |
米国 |
ISMサービス業景気指数(5月) |
米国の経済成長の大半を牽引するサービス部門の活動 |
6月4日 |
米国 |
生産性(第1四半期) |
企業がどれだけ効率的に財・サービスを生産しているかを示し、インフレへの示唆を提供 |
6月5日 |
米国 |
雇用統計(5月) |
成長と金利の見通しを形作る、注目度の高い労働市場指標 |
6月5日 |
米国 |
消費者信用残高(4月) |
借入動向と消費支出の強さ |
MC2026-066