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市場のストーリー:ロケットではなく金融政策

市場のストーリー:ロケットではなく金融政策
〔要旨〕
  • スペースXのIPOはマクロのシグナルではない。浮動株の規模は、流動性や市場心理を実質的に歪めるには小さすぎる
  • 市場をより大きく動かす要因は、ロケットではなく依然として政策。市場がより恐れる可能性が高いのは、中央銀行が誤った動きをすること
  • 基礎的な経済および企業収益環境といった、最も重要な諸条件を鑑みると、相場の反転ではなく、相場パフォーマンスの継続が示唆されています
本当のストーリー:ロケットではなく政策

2026年は2025年と類似

結論

注目の日程
 

私たちは月へ、そして火星へ向かいます!

先週、市場はスペースXの新規株式公開(IPO)に注目して幕を開けましたが、懸念されていた「市場の混乱」は結局起こりませんでした。私は、その懸念はそもそも過大評価だったと考えています。スペースXが公開したのは株式のわずか4〜7%にすぎず、約1.8兆ドルの評価額に対して調達額はおよそ750億ドルでした1。1日当たり通常5,000億〜7,000億ドルが取引される米国株式市場において2、これは誤差の範囲を超えるとはいえ、市場を混乱させるほどの出来事ではありません。スペースXの株式の大半は、初期投資家のもとで依然として売却が制限されている状態にあり、浮動株の規模は、流動性や市場心理を大きく歪めるにはあまりにも小さ過ぎます。

この評価額が妥当かどうかは、銘柄選定を行う投資家や未来の予測を行う人々の間で交わされる議論です。足元の売上高に照らせば、強気過ぎるように思われます。もし同社が、再利用可能なロケットによる低軌道データセンターの建設に成功すれば、それほど割高には見えなくなるかもしれません。しかしそれは個別銘柄に関連する話であって、マクロのシグナルではありません。スペースXのIPOは、広範な市場の過熱を示す証拠ではなく、個別の事象として理解するのが最も適切でしょう。

 

本当のストーリー:ロケットではなく政策

市場を動かすより重要な要因は、依然として政策です。市場が恐れるのは、野心的な宇宙企業よりも、中央銀行が誤った判断を下すことでしょう。

私が今なお堅持している3つの原則があります。

  • 米連邦準備理事会(FRB)に抗わないこと
  • ボラティリティは往々にして政策の不確実性によって生じること
  • 中央銀行の第1ルールは「害を及ぼさない」こと

こうした背景から、私はFRBが利上げに動くとは見ていません。足元のインフレ上昇は3、ガソリン価格が急騰した時点で予見できたものでした4。より重要なのはインフレ期待であり、3年および5年インフレブレークイーブンが2.40%まで低下していることは5、市場がインフレの暴走を予想していないことを示しています。

ホルムズ海峡再開への期待から、原油価格は下落傾向にあります6。これまでイランとの交渉に失望させられてきたとはいえ、それは本題ではないのかもしれません。すでに高い燃料費に圧迫されている消費者に対して、その圧力をさらに強めるような金融引き締めは逆効果となりかねません。

一方、欧州中央銀行(ECB)は異なる課題に直面しています。単一の使命(マンデート)を負う中央銀行は、たとえインフレが供給ショックによって引き起こされ、それが同時に成長を鈍化させている場合でも、インフレへの対応を迫られる可能性があります。こうした動的なリスクは、一時的な価格急騰を政策上の誤りへと転じさせかねません。私は、ECBが最終的には方針を転換せざるを得なくなると見ています。

2026年は2025年と類似

今年と昨年との類似性は、ますます無視しがたいものになっています。

  • 2025年:ファンダメンタルズは健全だったが、「解放の日」によって混乱に陥った
  • 2026年:ファンダメンタルズは健全だが、イランでの戦争によって混乱に陥った

いずれのケースでも、3つの点が共通しています。基礎的な経済および企業収益環境は堅調に保たれたこと7。地政学的または政策的なショックが、拡大しつつある市場を一時的に阻害したこと8。不確実性が和らぐと上昇が再開し9、米国株価指数における改善の広がりと10、それに伴って世界株式のパフォーマンスが堅調となったことです11

私たちはまるで、同じ筋書き(プレイブック)をたどっているように感じられます。

結論

私は、市場が「月まで一直線に上昇する」と言うつもりはありません―行きすぎた約束となってしまうからです。しかし、基礎的な経済および企業収益環境といった、最も重要な諸条件を鑑みると、相場の反転ではなく、相場パフォーマンスの継続が依然として示唆されていると私は考えています。私の見るところ、スペースXのIPOは、取り沙汰されたようなハードルではありませんでした。私は、これを投機的な熱狂で浮きあがっている市場だとは見ていません。より大きなストーリーは、中央銀行の動向、インフレ期待、そして地政学的な不確実性の漸進的な緩和にあります。

そうした観点からは、最も抵抗の少ない方向感として、依然として上昇基調が続く可能性があります。

注目の日程

公表日

国・地域

指標等

内容

6月15日

中国

鉱工業生産(5月)

世界の需要と工場活動の勢いを示す

6月15日

中国

小売売上高(5月)

消費需要が持ちこたえているかを確認

6月16日

米国

小売売上高(5月)

米国消費の強さを読み解く手がかり

6月16日

英国

労働市場統計

賃金と雇用がインフレ見通しに与える圧力

6月16日

ユーロ圏

ZEW景況感指数

成長に対する投資家の信頼感を早期に示す指標

6月17日

米国

FRB政策金利決定

政策と市場の方向性のトーンを決める

6月17日

英国

消費者物価指数(CPI)(5月)

金利の道筋と実質所得にとっての重要材料

6月17日

ユーロ圏

消費者物価指数(CPI)確報値(5月)

政策見通しに向けたインフレ動向の確認

6月17日

日本

貿易収支(5月)

輸出需要と為替影響を追跡

6月18日

米国

新規失業保険申請件数

労働市場の綻びを捉える高頻度指標

6月18日

英国

イングランド銀行(BOE)政策金利決定

金融引き締めがどこまで続くかを示唆

6月18日

ユーロ圏

欧州中央銀行(ECB)経済報告

政策の考え方とリスクに関する示唆

6月18日

日本

消費者物価指数(CPI)(5月)

インフレの変化が定着しつつあるかを測定

6月19日

米国

住宅着工件数(5月)

住宅市場と需要を捉える

6月19日

ユーロ圏

経常収支

外需と資本フローを示す

6月19日

日本

製造業購買担当者景気指数(PMI)(速報値、6月)

世界の製造業活動の早期シグナル

  • 1.

    出所:ブルームバーグL.P.、2026年6月12日

  • 2.

    出所:ナスダック・デイリー・マーケット・サマリー、2026年6月11日

  • 3.

    出所:米国労働統計局、2026年5月31日、消費者物価指数(CPI)に基づく

  • 4.

    出所:全米自動車協会(AAA)、2026年6月11日、レギュラー無鉛ガソリンの全米平均価格(日次)に基づく

  • 5.

    出所:ブルームバーグL.P.、2026年6月12日、米国3年物および5年物国債のインフレブレークイーブン金利に基づく。ブレークイーブンインフレ率は、一般的な国債利回り(名目)と同じ満期の物価連動国債(TIPS)の利回りの比較により算出される、市場が導き出す将来の予想インフレ率

  • 6.

    出所:ブルームバーグL.P.、2026年6月12日、米国ウエスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)原油のスポット価格に基づく

  • 7.

    出所:米国コンファレンス・ボードおよびブルームバーグL.P.、コンファレンス・ボード景気先行指数およびS&P500種指数構成企業の1株当たり利益(EPS)成長率に基づく

  • 8.

    出所:ブルームバーグL.P.、2025年および2026年の最初の2カ月間における、S&P500種均等加重指数のS&P500種指数に対するアウトパフォーマンスに基づく

  • 9.

    出所:ブルームバーグL.P.、2025年12月24日および2026年6月2日に最高値を更新したS&P500種指数の価格に基づく

  • 10.

    出所:ブルームバーグL.P.、S&P500種指数のブルームバーグ累積騰落ラインに基づく

  • 11.

    出所:ブルームバーグL.P.、2025年12月31日までのMSCIオール・カントリー・ワールド指数(米国を除く)(+16.42%)およびS&P500種指数(+16.63%)の6か月リターンに基づく

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