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FRBが忍耐を保つ必要があるかもしれない理由

FRBが忍耐を保つ必要があるかもしれない理由
〔要旨〕
  • 金融引き締めは市場サイクルの後半に行われることが多いため、インフレ期待はFRBの次の一手にとって重要となる
  • 原油価格は劇的に下落し、それに伴いブレークイーブン・インフレ率も低下し、インフレ圧力が弱まった
  • FRBにとって最も賢明な道は忍耐だと考えられる。現在の状況に基づけば、次の一手は利上げではなく、利下げとなる可能性がある
3月からの変化

FRBは現状維持

注目の日程
 

「いつになったら金融市場に対して悲観的な見方をするようになるのか」とよく尋ねられます。私の答えはほとんど変わりません。それは、米連邦準備理事会(FRB)が利上げを行い、景気サイクルを終わらせる時です。2020年の新型コロナウイルスによる短期かつ特異な景気後退を除けば、金融引き締めは往々にして市場サイクルの後半に行われてきました。だからこそ私は、インフレ期待をこれほど注視しているのです。インフレ期待は、FRBが雇用の最大化を追求せねばならない立場にありつつも、物価安定の責務をどう果たしているかを教えてくれます。

だからこそ、先週の報道は非常に不可解でした。FRB内で利上げの是非をめぐって意見が割れているとの報道が、私の目に留まりました。その議論自体が驚きだったわけではなく、私たちが今いる世界とは、まるでかけ離れた議論のように感じられたからです。政策当局者は、今がまだ2026年3月だと思い込んでいるのか、あるいは3カ月が経過したことに気づいていないのかと思わせられました。

 

3月からの変化

3月時点では、イランとの戦争勃発を受け、インフレの動向は明らかでした。原油価格は急騰しました1。米国3年物国債のイブレークイーブン・インフレ率は、3月18日に3%のピークに迫りました2。同5年物のブレークイーブン・インフレ率も、同日に2.74%まで上昇しました3。2022年のサプライチェーンの逼迫やロシアのウクライナ侵攻の際のように、5年物が3.0%を突破することがなかったという事実に、私はいくらか安心感を覚えました。とはいえ方向性は明らかでした。インフレ期待が上昇しており、FRBが警戒感を示すのも無理はありませんでした。

しかしそれは3月の話です。今日の環境は根本的に異なっています。原油価格は劇的に下落しました4。これに伴い、ブレークイーブン・インフレ率も低下しました5。1年物のブレークイーブン・インフレ率はいまや2%を下回っており、「過熱」とは到底言えない水準となっています6。むしろその逆かもしれません。インフレ圧力は加速しているのではなく、弱まりつつあります。

ではFRBは、なぜ利上げを行うのでしょうか。経済が過熱しているわけではありません。雇用の伸びは、直近3カ月間こそ予想を上回る増加が続いたものの、比較的軟調に推移しています7。賃金の伸びも鈍化してきています8。だからこそ、先週木曜日にFRBの動きを受けて起きた市場の急落や、イールドカーブのフラット化には、首をかしげざるを得ませんでした。市場は、6月半ばの現実ではなく、いまだに春先に見られた戦争に起因するインフレ懸念と闘っているかのようなFRBの姿勢に反応したようです。その姿勢は後ろ向きに感じられ、まるで政策当局者が、原油価格が急落した時点ではなく、急騰した時点に固定されているかのようでした。

FRBは現状維持

私の見るところ、FRBは引き続き現状維持を続けると考えられ、次の一手は(それがいつ来るにせよ)利上げよりも利下げになる可能性の方が高いと思われます。足元のイールドカーブの形状は、金融政策が引き締め的である可能性を示唆しています。もしFRBがこうした環境下で引き締めを行えば、回避しようとしている景気後退をかえって招きかねません。

要するに、サイクルは今も続いています。原油、金利、そしてインフレ期待9のピークは、広範な市場を下支えする転換点としばしば重なってきました。データに大幅な変化が見られない限り―足元では、データは依然として利上げが必要となるのとは逆の方向に推移していますが― FRBにとって最も賢明な道は、忍耐強くあることだと私は考えています。

注目の日程

公表日

国・地域

指標等

内容

6月22日

中国

貸出プライムレート決定

政策支援に変化があるかを示す

6月22日

中国

外国直接投資(5月)

資本流入が安定しつつあるかを示す

6月22日

欧州

欧州中央銀行(ECB)ラガルド総裁講演

今後の政策見通しの方向性を示唆する可能性

6月23日

欧州

ドイツおよびユーロ圏購買担当者景気指数(PMI)(速報値、6月)

成長の勢いと価格圧力の早期の手がかり

6月23日

米国

S&Pグローバル購買担当者景気指数(PMI)(速報値、6月)

経済の「速度制限」をタイムリーに確認

6月24日

米国

新築住宅販売件数(5月)

金利が住宅市場にどう波及しているかを示す

6月25日

米国

国内総生産(GDP)(第3次推計値、第1四半期)

年初の成長がどれだけ減速したかを確認

6月25日

米国

耐久財受注(5月)

企業の設備投資意欲を読み取る手がかり

6月25日

米国

新規失業保険申請件数

労働市場の綻びを測る高頻度の指標

6月25日

日本

消費者物価指数(CPI)(6月)

インフレが定着しつつあるかの重要な試金石

6月26日

米国

個人所得・支出(個人消費支出(PCE)インフレを含む)(5月)

FRBが選好するインフレ指標

6月26日

米国

ミシガン大学消費者信頼感指数(確報値、6月)

消費者心理が改善しているか悪化しているかを示す

6月26日

中国

工業企業利益(5月)

製造業の利益率が改善しているかどうかの試金石

  • 1.

    出所:ブルームバーグL.P.、2026年6月18日、米国ウエスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)スイート原油に基づく

  • 2.

    出所:ブルームバーグL.P.、2026年6月18日、米国3年物国債のブレークイーブン・インフレ率に基づく。ブレークイーブン・インフレ率は、一般的な国債利回り(名目)と同じ満期の物価連動国債(TIPS)の利回りの比較により算出される、市場が導き出す将来の予想インフレ率

  • 3.

    出所:ブルームバーグL.P.、2026年6月16日、米国5年物国債のブレークイーブン・インフレ率に基づく

  • 4.

    出所:ブルームバーグL.P.、2026年6月18日、米国ウエスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)スイート原油に基づく

  • 5.

    出所:ブルームバーグL.P.、2026年6月16日、米国3年物および5年物国債のブレークイーブン・インフレ率に基づく

  • 6.

    出所:ブルームバーグL.P.、2026年6月16日、米国1年物国債のブレークイーブン・インフレ率に基づく

  • 7.

    出所:米国労働統計局、2026年5月31日、非農業部門雇用者数に基づく

  • 8.

    出所:米国労働統計局、2026年5月31日、平均時給に基づく

  • 9.

    出所:ブルームバーグL.P.、2026年6月18日、米国ウエスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)スイート原油、米国10年物国債利回り、および米国5年物国債のブレークイーブン・インフレ率に基づく

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