懸念がある中でも市場が上昇してきた3つの理由
〔要旨〕
- 市場は足元の懸念材料を概ね冷静に受け止めており、ファンダメンタルズの地合いが十分強固な基盤を提供してきたことを示唆している
- 主要経済国の政府は財政支出を継続しており、それが企業の売上に波及し、より広範な経済活動を支える可能性がある
- 企業業績は好調で、S&P500種指数構成企業は6四半期連続で2桁の利益成長を達成。また米国経済は、引き続き底堅さを示している
市場を支える3つの要因
注目の日程
最近、ある著名なテレビ司会者から、「これはアルフレッド・E・ニューマン相場」なのかと尋ねられました。言うまでもなく、それは「マッド・マガジン」(米国の風刺雑誌)のキャラクターと、彼の有名なセリフ「What, me worry?(えっ、僕が心配するって?)」を指しています。懸念材料が絶え間なく噴出するように見えるにもかかわらず、市場が上昇を続けていることを考えれば、もっともな問いと言えます。私の答えは「イエス」でしたが、それは重要な条件付きでした。
心配することは何もない、というわけではありません。心配の種は常にあります。現在、地政学的な地合いは依然として不安定であり、イラン情勢をめぐる緊張が注目を集めたかと思えば焦点から外れたりしています。英国では、投資家が、政治的な変化が短期のリズ・トラス政権時代に見られたような市場の急激な混乱を再び招く可能性があるか見極める中で、債券利回りが上昇しつつあります1。日本では、政策当局が円相場下支えのために介入を行う一方で、追加利上げの可能性についても市場の地ならしを進めています2。これらの動きはいずれも、世界の流動性、通貨、リスクセンチメントに影響を及ぼし得るものです。
しかし市場は、これらの問題を概ね冷静に受け止めています3。それは、投資家がリスクに無頓着であるとか、無関心な態度を取っているという意味ではありません。むしろ、ファンダメンタルズの地合いが、こうした懸念を相殺し得るだけの十分強固な基盤を提供し続けていることを示唆しています。日々の見出しの流れから一歩引いて見れば、大局的には、依然として株式市場がサポートされる構図になっていると私は考えています。
市場を支える3つの要因
第1に、依然として世界経済システムに相当規模の財政支援が存在していることです4。主要経済国の政府は、産業政策、インフラ投資、防衛費などを通じて支出を継続してきました。そうした支出はしばしば企業の売上に波及し、より広範な経済活動を支える可能性があります。
第2に、企業業績が一貫して好調なことです。S&P500種指数構成企業はこれまで、6四半期連続で2桁の利益成長を実現してきました5。重要なのは、その好調さが幅広い裾野に及んでいることです。直近の決算期では、11セクターのうち9セクターで市場予想を上回りました6。これはほんの一握りの業種に牽引された限定的な話ではありません。多くのアナリストも、今後さらに1四半期は2桁の成長が続くと予想しており、通年の予想も引き上げています7。
第3に、米国経済が引き続き底堅さを示していることです。先週の雇用統計では、堅調と評価し得る内容が2回連続で続きました8。私の見立てでは、雇用の増加は所得と消費を下支えするのに十分な健全さを維持しつつも、インフレ懸念を再燃させるほど強いわけではありません。現時点では、労働市場が安定しており、経済が妥当なペースで拡大を続けていることを示唆しているように思われます。
これらの要因を総合すると、継続的にリスクが存在する中でも、市場が上昇を続けられた理由が見えてきます。投資家が気楽に、あるいは軽率に「What, me worry?」と言っているからではありません。むしろ多くの投資家は、エビデンスを秤にかけた上で、依然としてプラスの要因が優勢だと結論付けているように見えます。
したがって、慎重であるべき理由には事欠かないものの、市場が上昇を続けている合理的な理由もまた存在します。これは、慢心によって特徴づけられた相場のように見えますが、不確実性を乗り越えつつも、堅調な企業業績と持続力のある経済の地合いから恩恵を受け続けている相場なのです。
注目の日程
公表日 |
国・地域 |
指標等 |
内容 |
|---|---|---|---|
5月11日 |
米国 |
中古住宅販売件数、ニューヨーク連銀SCE(消費者期待調査)住宅部門 |
より広範な経済の健全性のシグナルとなる、住宅需給のトレンドを示す |
5月11日 |
米国 |
消費者物価指数(CPI) |
金利見通しと市場の方向性を形作るインフレの主要指標 |
5月12日 |
英国 |
労働市場データおよび賃金 |
雇用の強さと、インフレに影響する賃金圧力に関する示唆を提供 |
5月13日 |
米国 |
生産者物価指数 |
消費者インフレに波及し得る、企業の投入コスト圧力を追跡 |
5月13日 |
ユーロ圏 |
鉱工業生産指数 |
域内の製造業活動の強弱を示す |
5月13日 |
中国 |
鉱工業生産指数および小売売上高 |
世界主要経済国の内需と工場活動の勢いを示す |
5月14日 |
米国 |
小売売上高 |
経済全体の成長を牽引する消費支出の強さを示す |
5月14日 |
米国 |
輸出入物価指数 |
世界的な価格圧力と為替が貿易に与える影響を示す |
5月14日 |
米国 |
企業在庫 |
需要動向と将来の生産調整に関する示唆を提供 |
5月14日 |
日本 |
生産者物価指数 |
企業にとっての川上インフレとコスト圧力を示す |
5月14日 |
ドイツ |
貿易収支 |
主要な輸出主導国にとっての輸出需要と世界貿易環境を反映 |
5月15日 |
米国 |
鉱工業生産指数および設備稼働率 |
工場活動と経済における余剰能力を測定 |
5月15日 |
米国 |
ニューヨーク連銀製造業景気指数 |
製造業の景況感とセンチメントに関する早期シグナルを提供 |
5月15日 |
米国 |
ミシガン大学消費者信頼感調査 |
消費行動に影響を与える消費者信頼感を追跡 |
MC2026-057