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FRBから利上げの地図は示されず

FRBから利上げの地図は示されず
〔要旨〕
  • ジャクソンホール経済シンポジウムにおけるFRBのケビン・ウォーシュ議長の講演は、FRBが年内は政策金利を据え置くとの私の見方を弱めはしたものの、変えるには至らなかった
  • FRBによるフォワードガイダンスの縮小は、起こり得る結果の幅を広げる可能性があり、ターム・プレミアムの上昇と長期債利回りの上昇をもたらし得ると考えられる
  • 決算シーズンは、大半の市場で予想を上回る好決算で締めくくられ、S&P500種指数ではここ数十年で有数のビート・ミス比率(予想を上回った企業と予想を下回った企業の比率)となり、欧州と日本ではいずれも2桁成長となった
FRB:物価に焦点、フォワードガイダンスなし

多くの主要地域で好調だった決算シーズン

債券利回りの上昇

注目の日程
 

長い週末、学校が始まり年末の慌ただしさが訪れる前の最後の静かな時間を過ごそうと、私は家族とともに森の中にいました。新鮮な空気を吸い、スクリーンを見る時間を減らし、読書をして、何度かハイキングに出かけるという計画でした。ところが、この夏初めて天候が崩れ、ハイキングには行けませんでした。

米連邦準備理事会(FRB)のケビン・ウォーシュ議長も、金曜日にジャクソンホール経済シンポジウムの冒頭講演で「ハイク」について語りました。(私たちが行けなかった、山歩きの方のハイクです。)彼はこの言葉を3回使いましたが、いずれも「歩く」ことについてでした。講演の残りはタカ派寄りの内容であり、FRBが年内は政策金利を据え置くとの私の見方を弱めたものの、変えるには至りませんでした。先週、議長からハイク(利上げ)についての地図はそれほど示されなかったというのが私の印象です。

 

FRB:物価に焦点、フォワードガイダンスなし

ウォーシュ議長は、FRBが2%のインフレ目標にコミットする姿勢を改めて示すとともに、足元でその目標を65カ月にわたり達成できていないことを指摘しました。議長は、「広範な金融環境が引き締め的であると表現するのは難しい」とし、FRBの焦点は「現時点では物価にあるべきだ」と述べました。私にはこれは、議長が利下げを迫る政治的圧力を感じていないことを示唆しているように思われます。講演中に米国イールドカーブの長期ゾーンが一時的に買われた(利回りが低下した)のは、そのためかもしれません。しかし金曜日の終値では、10年物および30年物国債利回りは、2年物・5年物ほどではないものの上昇しました1

金曜日に利回りが上昇したと私が考える理由、そして今後もさらに上昇し得ると考える理由は、ウォーシュ議長が「道標(トレイル・マーカー)」を取り外しつつあることにあります。従来のようなフォワードガイダンスは、姿を消しつつあります。FRBが道筋を示すことをやめれば、投資家は起こり得る結果の幅を自ら見極めねばならなくなるかもしれません。投資家はその幅をより広く取るようになり、そうした手間への対価を求める可能性が高く、それはターム・プレミアムの拡大を意味するだろうと私は考えています。経済が成長を続けていることを踏まえれば、利回りはさらに上昇し得ると思われます。

ウォーシュ議長は労働市場を「かなり安定している」と表現しましたが、私は、その見方はおそらく誤っていないだろうと思います。議長が登壇したまさにその時、米労働統計局から雇用者数の四半期改定値(雇用・賃金四半期センサス)がひっそりと公表されました。2025年4月から2026年3月までの雇用創出数は79,000人下方修正されましたが2、これは過去の修正幅に比べればごくわずかにすぎません。私にはこれは、労働市場が悪化しているというより、むしろ回復力があることを示しているように思われます。

多くの主要地域で好調だった決算シーズン

決算シーズンは先週、エヌビディアの決算発表をもって幕を閉じ、多くの地域で総じて堅調な結果となりました。多くの市場で予想を上回る好決算が見られ、S&P500種指数におけるビート・ミス比率(予想を上回った企業と予想を下回った企業の比率)はここ数十年で有数の高い水準となり、欧州と日本では2桁の利益成長となりました3

米ドルは金曜日に上昇しましたが、この動きが続くかは疑問だと私は考えています。通常であれば、タカ派的なFRBと利回りの上昇は米ドルを支え得ますが、利回りがなぜ上昇しているのかが重要です。もし長期ゾーンの利回りが、自らの進む先をもはや示さない中央銀行に対して投資家が対価を求めるがゆえに上昇しているのであれば、それは信認の表れとは言えません。ウォーシュ議長は講演の中で、米ドルは注視の対象だと述べた上で、自らの裁量を軸にFRBを再構築する意向を明らかにしました。このこの2つが噛み合って米ドルを支えることになるとは、私には思えません。

債券利回りの上昇

金曜日の動きから一歩離れて、2026年全体を眺めてみる価値はあります。市場は数多くの混乱を吸収し、多くの人々の予想以上に持ちこたえてきました。パニックに陥るのも無理からぬことに思えた局面もあり、私自身も、山小屋に移り住んで自給自足の生活を送ることを、一度ならず考えたほどです。年内の残りの期間にも新たな混乱が生じると確信していますが、その中で私がそれほど懸念していないものの一つが、利回りの上昇です。民間部門のレバレッジが過去の景気サイクルと比べて低いため4、金利に対する感応度がはるかに低いことが示されてきたと考えられます。

2026年に降りかかった出来事を乗り越えてきたように見える世界経済と株式市場であれば、米国10年物国債利回りが5%となっても、おそらく持ちこたえられるだろうと私はみています。また、FRBによるガイダンスが減っても、市場は自力で道を見出せると確信しています。むしろ懸念すべきは、金利の急落かもしれません。それは実質的な成長への懸念を意味する可能性が高いからです。足元のデータを見る限り、その可能性は依然として低いと私は考えています。

というわけで今のところ私は、屋根に雨が打ち付ける森の中の山小屋に地図も持たずにいますが、地図を見つけられるかどうか心配はしていません。年内の残りの期間について、私は良い感触を持っています。皆様もそうであることを願っています。

注目の日程

公表日

国・地域

指標等

内容

9月1日

米国

ISM製造業購買担当者景気指数(PMI)(8月)、建設支出(7月)

製造業の活動、需要、価格、建設投資に関する早期の指標を提供

9月2日

米国

ADP雇用者数(8月)、製造業受注(7月)

民間部門の雇用と製造品需要に関するタイムリーなシグナルを提供

9月3日

米国

米供給管理協会(ISM)サービス業購買担当者景気指数(PMI)(8月)、貿易収支(7月)、新規失業保険申請件数

サービス業の勢い、貿易、労働市場の状況を追跡

9月4日

米国

雇用統計(8月)

雇用者数の伸び、失業率、賃金は、FRBの政策見通しにとって中心的な要素

8月31日

英国

ネーションワイド住宅価格指数(8月)

住宅市場の状況についてタイムリーな指標を提供

9月1日

英国

製造業購買担当者景気指数(PMI)(8月)

製造業の活動が拡大しているか縮小しているかを示す

9月3日

英国

サービス業・総合購買担当者景気指数(PMI)(8月)、イングランド銀行金融政策報告公聴会

民間部門の勢いと、インフレおよび成長に対する政策当局の評価を示す

8月31日

欧州

ドイツ消費者物価指数(CPI)(8月)

地域のインフレ圧力を早期に示す

9月1日

ユーロ圏

消費者物価指数(CPI)(8月)、失業率(7月)、製造業購買担当者景気指数(PMI)(8月)

インフレ、労働環境、製造業の活動に関する重要な手掛かり

9月3日

ユーロ圏

サービス業・総合購買担当者景気指数(PMI)(8月)、生産者物価(7月)

サービス部門の勢いと、川上のインフレ圧力を示す

9月4日

ユーロ圏

小売売上高(7月)

家計需要の動向を示す

8月31日

中国

製造業・非製造業購買担当者景気指数(PMI)(8月)(政府の公式統計)

製造業とサービス業の活動が強まっているかを示す

9月1日

中国

製造業購買担当者景気指数(PMI)(8月)(民間統計)

民間製造業の状況について追加的な視点を提供

9月3日

中国

サービス業購買担当者景気指数(PMI)(8月)(民間統計)

消費者向け・企業向けサービスの勢いを追跡

8月31日

日本

消費者態度指数(8月)、住宅着工戸数(7月)

家計のセンチメントと建設需要の動向を把握

9月1日

日本

設備投資(第2四半期)、製造業購買担当者景気指数(PMI)(8月)

企業の投資と製造業部門の勢いを測定

9月3日

日本

サービス業購買担当者景気指数(PMI)(8月)

サービス部門の活動の方向性を示す

9月4日

日本

家計調査・消費支出(7月)

国内の消費需要を測る重要指標

  • 1.

    出所:ブルームバーグL.P.、2026年8月28日、米国債利回りは、償還期限の異なる米国債の市場金利

  • 2.

    出所:米労働統計局、2026年8月28日、現行雇用統計・事業所調査(CES)における非農業部門雇用者総数の全国ベンチマーク改定の暫定推計値に基づく

  • 3.

    出所:ブルームバーグL.P.、2026年8月28日、S&P500種指数、STOXX600指数、TOPIX(東証株価指数)の企業収益データに基づく。ビート・ミス比率(予想を上回った企業と予想を下回った企業の比率)は過去の中央値71%に対し、足元で86%。S&P500種指数は、米国株式市場を代表するとみなされる、アクティブ運用を行わない指数。STOXX欧州600指数は、欧州地域17カ国の大型・中型・小型株を対象とする。TOPIXは、東京証券取引所に上場する大型株のパフォーマンスを測定する、浮動株調整後時価総額加重型の指数

  • 4.

    出所:ブルームバーグL.P.およびFRB、2026年8月28日、家計純資産の対所得比率や、家計の債務返済負担の対所得比率といった指標に基づく

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MC2026-103