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投資家が、市場の見出しの一部を見過ごした方がよいかもしれない理由

投資家が、市場の見出しの一部を見過ごした方がよいかもしれない理由
〔要旨〕
  • 原油価格は4月の高値を下回る水準にとどまり、エネルギー供給は回復し、サプライチェーンも適応してきた―これらは、今日のエネルギーを巡る懸念が、ニュースの見出しが示唆するよりも対処可能なものである可能性を示唆している
  • 4.75%近辺の10年物国債利回りは、6.6%の米国名目経済成長率と併せてみれば、さほど憂慮すべきものには見えず、雇用の伸びが小幅であることと抑制されたインフレ期待が、FRBを巡るリスクを抑える可能性
  • 底堅い企業収益と継続的なAI投資は、引き続き市場の主要な支えとなっている。企業利益、ハイパースケーラーの支出、あるいはAI関連の資金調達の後退が何らか見られた場合は、懸念材料となり得る
懸念点:原油価格

懸念点:金利

懸念点:FRB

企業収益とAI関連支出に注目

注目の日程
 

もし事情をよく知らなければ、S&P500種指数がここ1~2カ月で下落したかと思ってしまったことでしょう1。テレビをつけても、ポッドキャストを聴いても、ソーシャルメディアをスクロールしても、原油価格の高騰2、金利の上昇3、持続不可能な債務水準4、根強いインフレ5、情報発信が減った米連邦準備理事会(FRB)、追加利上げの可能性6、といった話題を耳にしないわけにはいきません。こうした悲観的見方は、投資家心理調査にも表れています。米個人投資家協会(AAII)が発表した最新(8月)の調査結果によれば、投資家の44.4%がベア(弱気)、32.9%がブル(強気)、残りが中立とのことでした7

正直なところ、私はそれをあまり意に介していません。懐疑的な見方が広がっているさなかに強気相場が終わりを迎えたことはほとんどありません。強気相場が終わるのは、それを支える条件が悪化し始めたときです。私は、現在その段階からは程遠いと見ています。とはいえ、議論を賑わせている懸念点のいくつかについては、取り上げる価値があるでしょう。

 

懸念点:原油価格

まず、原油から見ていきましょう。
原油価格の上昇は決して望ましいことではありません。消費者や企業にとって税金のように作用し得るものであり、エネルギー市場は依然として地政学的な動向の影響を受けやすい状況にあります。しかし、ニュースの見出しと現実を区別することが重要です。原油価格は4月7日の高値を下回る水準にとどまっており、6月半ば以降はおおむね横ばいで推移しています8。中東の紛争を巡る不確実性は不安材料となっていますが、市場やサプライチェーンは驚くべき適応力を示してきました。代替パイプライン、タンカーの航路変更、そして艦船による護衛が、エネルギーの供給維持に寄与しています。複数の推計によれば、アラビア半島周辺のエネルギー輸送量は、紛争前の水準の約80%まで回復している模様です9。状況は引き続き注視が必要ですが、エネルギー市場が制御不能に陥りつつあるとは言い難いでしょう。

懸念点:金利

金利は次に見るべき大きな懸念点です。
金利の上昇は勝者と敗者を生み出します。公益事業や資本財・サービス、また程度は低いものの不動産といった金利感応度の高いセクターは、プレッシャーを受けてきました10。ただし、とりまく状況が重要です。米国経済は名目ベースで約6.6%の成長を続けています11。こうした背景に照らせば、10年物国債利回りがおよそ4.75%であることは、私にとって特に憂慮すべきものには見えません12

実際、1980年代、1990年代の大半において、長期の国債利回りは名目経済成長率を一貫して上回っていました13。2008年の世界金融危機以降の状況は、常態というよりむしろ例外といえます。多くの投資家は、経済成長率が借入コストを大きく上回る世界に、すっかり慣れてしまいました。より長期の歴史的視点で見ると、今日の金利環境は、危機というよりも正常化に近いように私には映ります。だからこそ私は、金利の上昇は米国にとって、債務からくる報いだという(より広まりつつある)見方に、懐疑的であり続けています。債務水準が時間とともに問題を生じさせる可能性はあるかと問えば、あるかもしれません。しかし、私が見るところ、米国の債務への報いが差し迫っているとの想定でポートフォリオを調整することは、ここ何年も徒労に終わってきました。政策当局は、財政、金融、規制、立法といった多岐にわたる政策手段を豊富に有しており、歴史は、当局が無秩序な結果をみすみす傍観したりはしないことを示唆しています。

懸念点:FRB

そして、FRBです。
市場が、景気サイクルは資金調達金利の上昇とともに終わりを迎えるものだと懸念するのはもっともです。これまではその通りでした。ただし、一度の利上げが必然的に何度も利上げにつながるとの想定は、必ずしも当てはまりません。インフレ期待が相対的に抑制され14、雇用の伸びも小幅であることを踏まえると15、利上げが長期にわたって続くとの見方の根拠は弱いように思われます。9月に一度利上げが行われたとしても、それが新たな本格的な利上げ局面の出発点だと市場から見なされる可能性は低いと私は考えています。

企業収益とAI関連支出に注目

個人的には、多くの投資家は誤った事柄に焦点を当てているのかもしれないと考えています。
今日ニュースの見出しを賑わせている問題は、私を本当に不安にさせるような動きではありません。私が注目しているのは、企業収益です。企業利益は、持続的な強気相場の土台を支えてきました。

私はまた、人工知能(AI)の投資サイクルにも注目しています。ハイパースケーラーによる並外れた支出が、経済活動と市場を牽引する最も重要な要因の1つとなっていると考えられます。これらの企業が設備投資を大幅に縮小するようなことがあれば、重大な影響があるでしょう。また、資金調達市場がAI関連のインフラ、データセンター、および関連する債券発行への資金供給に消極的になった場合も、影響は大きいと考えられます。

これらは注視すべきリスクであり、そうなるタイミングはわかりません。しかし少なくとも今のところ、いずれの事態も発生しているという証拠はほとんど見当たりません。企業収益は底堅さを保っており16、ハイパースケーラーの支出計画も維持されています17。資本市場も、AIインフラプロジェクトへの資金供給を継続しています18

このように、ニュースの見出しは引き続き原油、金利、債務、そしてFRBに焦点を当てていますが、私は、成長の原動力となってきた分野により強い関心を持ち続けています。そうしたファンダメンタルズが揺らぎ始めるまでは、多くの投資家は、誤った事柄について心配するのに時間を取られ過ぎているのではないかと私は考えています。

注目の日程

公表日

国・地域

指標等

内容

9月7日

ユーロ圏

国内総生産(GDP)、雇用(第2四半期、確報値)

域内の成長のペースと広がり

9月7日

日本

GDP(第2四半期、確報値)

経常収支

貿易収支(7月)

国内の成長と外需

9月8日

米国

消費者信用残高(7月)

家計の借り入れと消費需要

9月9日

中国

消費者物価指数(CPI)

生産者物価指数(PPI)(8月)

インフレと工場出荷価格の上昇圧力

9月10日

米国

PPI(8月)

新規失業保険申請件数

卸売在庫(7月、確報値)

川上のインフレ、労働市場の状況、企業在庫

9月10日

ユーロ圏

欧州中央銀行(ECB)の政策決定と記者会見

インフレ、成長、金利見通しに関する政策当局の評価

9月10日

ドイツ

CPI(8月、確報値)

ユーロ圏最大の経済大国のインフレ動向

9月11日

米国

CPI(8月)

ミシガン大学消費者信頼感指数(9月、速報値)

消費者インフレとインフレ期待

9月11日

英国

GDP

鉱工業生産

製造業生産

貿易収支(7月)

景気動向、製造業の活動、外需

  • 1.

    出所:ブルームバーグL.P.、2026年9月2日、S&P500種指数の直近1カ月間および2カ月間のリターンがそれぞれ1.39%、2.45%であったことに基づく

  • 2.

    出所:ブルームバーグL.P.、2026年9月3日、ウエスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)原油に基づく

  • 3.

    出所:ブルームバーグL.P.、2026年9月2日、米国10年物国債利回りに基づく

  • 4.

    出所:米財務省、2026年6月、米国政府債務の国内総生産(GDP)比に基づく

  • 5.

    出所:米労働統計局、2026年7月、米国の消費者物価指数(CPI)に基づく

  • 6.

    出所:ブルームバーグL.P.、2026年9月3日、フェドファンド・インプライドレート(理論先物金利)に基づく

  • 7.

    出所:米個人投資家協会(AAII)、2026年8月26日

  • 8.

    出所:ブルームバーグL.P.、2026年9月3日、ウエスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)原油に基づく。WTI原油価格は4月7日に1バレル当たり110ドルのピークを付け、2026年9月3日時点で91ドル

  • 9.

    出所:ウィンドワード、国際エネルギー機関、ロイター、CNBC、2026年8月25日

  • 10.

    出所:ブルームバーグL.P.、2026年9月2日、S&P500種指数の以下のセクターの直近2カ月間のトータルリターンに基づく:公益事業(-6.79%)、資本財・サービス(-6.08%)、不動産(-1.76%)

  • 11.

    出所:米経済分析局、2026年6月、米国名目GDPの前年比変化率に基づく

  • 12.

    出所:ブルームバーグL.P.、2026年9月2日、米国10年物国債利回りに基づく

  • 13.

    出所:米経済分析局およびブルームバーグL.P.、2026年9月2日、1980年から1999年までの米国名目GDPおよび米国10年物国債利回りに基づく

  • 14.

    出所:ブルームバーグL.P.、2026年9月2日、米国5年物国債のブレークイーブン・インフレ率に基づく。ブレークイーブン・インフレ率は、一般的な国債利回り(名目)と同じ満期の物価連動国債(TIPS)の利回りの比較により算出される、市場が導き出す将来の予想インフレ率

  • 15.

    出所:米労働統計局、2026年7月、米国非農業部門雇用者数の前月比変化に基づく

  • 16.

    出所:ブルームバーグL.P.、2026年6月、2026年第2四半期におけるS&P500種指数構成企業の営業利益が45%増加したことに基づく

  • 17.

    出所:PWC、“Global investment in AI infrastructure to hit US$31.6 trillion through 2050”、2026年9月2日

  • 18.

    出所:ブルームバーグL.P.、2026年9月2日、米国投資適格社債の平均初回発行カバー率に基づく

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MC2026-106