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市場のドローダウン(一時的な調整局面)と下落局面の違い:ファンダメンタルズに注目

市場のドローダウン(一時的な調整局面)と下落局面の違い:ファンダメンタルズに注目
〔要旨〕
  • 市場のドローダウン(一時的な調整局面)は多くの場合、政策の不確実性を反映したものであり、必ずしも市場サイクルの終わりを示すものではない。本格的な下落局面は通常、ファンダメンタルズの悪化を伴う必要がある
  • 金利見通しの変化にもかかわらず、クレジット・スプレッドがタイトかつ小型株指数および均等加重株価指数が堅調であることは、構造的な強気相場が損なわれていないとの私たちの見方を支えている
  • 注視すべきリスクとして、企業収益の下振れ、政策ガイダンスの後退、AI関連支出の減速などが挙げられる。現時点では、こうした警告サインが顕在化した様子はみられない
政策の不確実性がドローダウンを引き起こしてきた

ドローダウンと下落局面を混同してはいけない

構造的な強気相場を終わら得るものは何か?

注目の日程
 

次の市場のドローダウン(一時的な調整局面)はいつか、とよく尋ねられます。簡単に答えれば、「遠くないうちに」となります。結局のところ、5%から10%の調整はほとんどの年で起きています1。しかし、それではあまりに安易な答えとなってしまいます。市場のドローダウンが何の前触れもなく起こったことはほとんどありません。それらは一般的に、政策の不確実性の結果として生じたものです。

 

政策の不確実性がドローダウンを引き起こしてきた

ここ2年間を振り返ってみましょう。現在までの長期にわたる相場上昇は、2025年の関税問題、2026年のイランとの戦争によって一時的に妨げられました2。ニュースの見出しこそ異なっていたものの、不確実性の源は突き詰めれば同じでした。投資家は、インフレおよび金利への影響を見極めねばなりませんでした。「関税はインフレを招くか?」「原油価格の上昇はインフレを高止まりさせるか?」「米連邦準備理事会(FRB)は、従来予想されていたよりも引き締め的な政策スタンスを維持する必要に迫られるか?」

上記2つの局面では、いずれも市場は政策期待を織り込み直す形で反応しました3。市場は下落したものの4、経済が底堅さを保ち、企業収益も堅調さを維持したため、これらのドローダウンは一時的なものに留まりました。懸念されたファンダメンタルズの悪化は、実現しませんでした。

今日、投資家は再び同じ問いを突き付けられています。イランでの紛争の長期化と貿易摩擦の再燃により、市場は改めて政策見通しを見直す必要に迫られています。投資家が、名目成長率の上昇や、インフレが予想以上に粘着的となる可能性に向き合う中で、長期金利は上昇してきました5。米財務省が、10年物国債利回りの上昇を抑制すべく努めたにもかかわらずです6。市場は、FRBが最終的に利上げを余儀なくされ、結果として経済が減速しかねない可能性をますます突きつけられつつあります。

こうした背景からすると、市場が幾分軟調となるのは驚きではありません。ドローダウンは概して、政策の道筋について不確実性が高まる時期に起こってきました。

ドローダウンと下落局面を混同してはいけない

重要なのは、ドローダウンを市場サイクルの終わりと混同しないことです。

市場は、年初におよそ3回の利下げを織り込んでいましたが、現在では2~3回の利上げ想定となっています。それでもクレジット・スプレッドは、歴史的にみてタイトな水準を維持しています7。小型株指数およびS&P500均等加重指数は、史上最高値付近で推移し続けています8。金利やエネルギー価格の上昇が経済成長の重石となり、いわゆる「ブロードニング・トレード(投資資金の物色対象が広がること)」が一服したとはいえ、こうした状況は通常、市場サイクルの終わりにみられる特徴とはいえません。

構造的な強気相場を終わらせ得るものは何か?

私は、この構造的な強気相場の終わりは、FRBによる引き締め局面よりも、人工知能(AI)投資サイクルの途絶によってもたらされる可能性の方が高いとみています。インフレ期待は適正に抑制されており9、民間部門も特段過剰なレバレッジを抱えた状態にはありません10。むしろ私が注視したいと考えているのは、企業収益の下振れ、アナリストによる業績予想の下方修正、フォワードガイダンスの悪化、ハイパースケーラーによる投資支出の縮小、AIインフラの構築に必要な資金を賄うための起債を投資適格債市場が吸収しきれなくなっている兆候などです。

現時点で、そのいずれも実質的に起きているようには見受けられません。

市場がドローダウンに見舞われる可能性はあるのでしょうか?もちろんあります。政策の不確実性は、しばしばドローダウンを生み出してきました。しかし、ドローダウンと弱気相場は同じではありません。ドローダウンは通常、政策当局が次にどう動くかに関する不確実性を反映しています。他方で弱気相場が生じるには、ファンダメンタルズが大幅に悪化しなければなりません。

今のところ私には、現在の状況は、後者(弱気相場)よりも前者(ドローダウン)にはるかに近いものと映っています。

注目の日程

公表日

国・地域

指標等

内容

9月15日

米国

ニューヨーク連銀製造業景気指数(9月)

製造業活動と価格圧力を早期に把握する指標

9月15日

中国

鉱工業生産

小売売上高

固定資産投資(8月)

製造業、消費需要、投資の勢い

9月15日

英国

雇用統計(7月/8月)

労働需要、失業率、賃金圧力

9月16日

米国

小売売上高(8月)

FRB政策決定、経済見通し、記者会見

消費需要と、インフレ、成長、金利に関する政策当局の見通し

9月16日

英国

消費者物価指数(CPI)(8月)

イングランド銀行政策決定前に公表されるインフレ動向

9月17日

米国

住宅着工件数、建設許可件数(8月)

新規失業保険申請件数

住宅市場の活動と労働市場の状況

9月17日

英国

イングランド銀行政策決定および議事要旨

インフレ、成長、金利見通しに関する政策当局の評価

9月18日

米国

鉱工業生産、設備稼働率(8月)

工場の生産活動と生産能力の稼働状況

9月18日

日本

日銀政策決定

インフレ、賃金上昇、為替圧力に直面する中での政策スタンス

9月18日

英国

小売売上高(8月)

家計支出と消費需要

  • 1.

    出所:ブルームバーグL.P.、2026年9月、S&P500種指数の年間の高値から安値までの下落幅に基づく

  • 2.

    出所:ブルームバーグL.P.、2026年9月10日、2020年4月以降のS&P500種指数のリターンに基づく。S&P500種指数は、2025年2月19日の高値から2025年4月8日の安値まで18.75%下落。2026年には、2026年2月の高値から約9.00%下落

  • 3.

    出所:ブルームバーグL.P.、2026年9月10日、フェドファンド・インプライドレート(理論先物金利)に基づく

  • 4.

    出所:ブルームバーグL.P.、2026年9月10日、2020年4月以降のS&P500種指数のリターンに基づく。S&P500種指数は、2025年2月19日の高値から2025年4月8日の安値まで18.75%下落。2026年には、2026年2月の高値から約9.00%下落

  • 5.

    出所:ブルームバーグL.P.、2026年9月10日、米国10年物国債利回りに基づく

  • 6.

    出所:CNBC、“10-year Treasury yield touches highest since 2023 despite Bessent’s $6 billion bond buyback plan”、2026年9月9日

  • 7.

    出所:ブルームバーグL.P.、2026年9月10日、フェドファンド・インプライドレート(理論先物金利)およびブルームバーグ米国社債指数のオプション調整後スプレッドに基づく

  • 8.

    出所:ブルームバーグL.P.、2026年9月10日、ラッセル2000指数およびS&P500均等加重指数に基づく

  • 9.

    出所:ブルームバーグL.P.、2026年9月10日、米国5年物国債のブレークイーブン・インフレ率に基づく。ブレークイーブン・インフレ率は、一般的な国債利回り(名目)と同じ満期の物価連動国債(TIPS)の利回りの比較により算出される、市場が導き出す将来の予想インフレ率

  • 10.

    出所:セントルイス連銀、2026年6月、米国非金融法人企業の負債に基づく

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